初心者向けにブラック・メタルについて簡単にまとめてみた。尚、ブラック・メタルの世界にドップリ浸かって、既に瘴気にヤラれてる方(笑)には当たり前のことしか書いて無いのであしからず。この音楽ジャンルに初めて触れた方や何かの縁で興味を持った方にとって道標になればと思う。

ブラック・メタルの音楽性

ブラック・メタルはヘヴィ・メタルのサブジャンルの一種であり、スラッシュ・メタルから派生したジャンルである。音の特徴として、ギターによるノイジーなトレモロ(単音を高速で刻むことにより連続した音を奏でる奏法)によるリフを多様。ヴォーカルは悪魔に憑かれた様な金切り声や絶叫。(映画:エクソシストを連想してもらえれば良いかも)シンプルかつ速いテンポで疾走する。これらをベースに禍々しいダークな世界観を構築、或いは負の感情を解き放つアンダー・グラウンドな音楽である。ブラック・メタルといっても多種多様なスタイルがあるが、ごく一般的なブラック・メタルの音像を言葉で説明すると上記のようなスタイルが基本といえるだろう。様々なスタイルについては後に記載するとしよう。

ブラック・メタルの世界観/思想/テーマ

ブラック・メタルが扱うテーマは反キリスト、悪魔崇拝、黒魔術やナチズム、白人至上主義などが挙げられる。イメージ的に悪魔崇拝(サタニスト)といったイメージが強いが中にはもっとシリアスなモノや自然崇拝とかもあり様々。総じて言えることは殆どの場合が反社会的と言えるだろう。ごく一部は信念の元、或いは若気の至りで実際に行動に移し事件を起こしている団体や人物も居たりする。有名な事例としては90年台初頭にノルウェーで実際に起こったブラック・メタル関係者による集団【インナーサークル】による数々の冒涜活動が挙げられる。教会放火、墓荒しや最終的には殺人まで冒涜の限りを尽くした。まもなく逮捕者が続出しメディアに報道されインナーサークルは解散。大きく報道された事によりアンダー・グラウンド・シーンであったブラック・メタルが全世界に広く認知されるようになった。そういった経緯から本気印のサタニストによる音楽といったイメージが根付いてしまったが、そういった犯罪行為を実践するような連中は減少しやがて風習は形骸化。現在は音楽形態だけが残った。インナーサークルについての詳しいことは”インナーサークル”で検索してみて欲しい。経緯や人物の因果関係が詳しく書かれたページが多数ヒットするはずである。

ブラック・メタルのファッション

kingdiamond

大抵のブラックメタラーは不気味な白塗りメイクを施している。その白塗りを【コープスペイント】と呼ばれておりブラック・メタルのイメージを決定付ける役割を果たしている。読んで字のごとく【死化粧】である。元々はデンマークのヘヴィ・メタルバンドMercyful FateのヴォーカリストKing Diamondの悪魔を連想させる白塗りメイクが発端とされており、続くブラジルのSarcophagoが直接ブラック・メタル界に影響を与え定着させたとされている。そんなコープスペイントにも様々なアプローチがあり、白地に黒でペイントするのが定番だが、最近では、まるでゾンビの様なメイクもあり非常に興味深い。ただ、全てのバンドメンバーがコープスペイントを施しているわけでは無いが、ブラック・メタルを特徴付けるには見逃せない大きな要素といえよう。また、ファッションは全身黒尽くめ、棘のついたリストバンドにガンベルト、中には中世の武器を持ってたり、鎧や甲冑を装着する者もいる。

 

時代を切り拓いた元祖ブラック・メタル

主だった元祖と云われる幾つかの重要バンドとアルバムをご紹介。ブラック・メタルが形成される以前からソレっぽい事をやっていたバンドである。極端な話、これらのバンドが誕生していなければ今のブラック・メタルは生まれてこなかったのかも知れない。現在活躍している多くのブラック・メタルバンドは大体、以下に紹介する元祖サウンドがルーツとなっている。


Venom:【Black Metal】

Venom【BlackMetal】

Venomが82年に発表した2NDアルバム。楽曲テーマに反キリストや悪魔崇拝などが含まれておりタイトルも【ブラック・メタル】である。実際の音は悪ノリなスピード・メタルであるが、後にHellhammerやBathory等多くのスラッシュ・メタルに影響大。勿論、ブラック・メタルの元祖サウンドとしての一面もあるが、どちらかと言えば語源としての意味合いのほうが強い。


Hellhammer:【Demon Entrails】

hellhammer【demon entrails】

スイスより生まれ出た極悪スラッシュメタル。後にCelticFrostと改名し活動するが正式な音源としては【Apocalyptic Raids 1990 A.D.】と言うEP一枚のみのリリースで終わっている。そこでHellhammer名義で残されたデモ音源のCD化がこの【Demon Entrails】だ。ブラック・メタルに限らずスラッシュ・メタルやデス・メタル、ハードコアなどエクストリームミュージック全般に強い影響を与えた。デモ音源ならではの粗削りさとRAWな勢いが熱い。またロックンロールな側面があり、まるでVenom + Motörhead。


Celtic Frost:【To Mega Therion】

celticfrost_2nd

85年、2ND。1STはHellhammerの延長線上の極悪スラッシュメタルだったが、この2NDではいよいよ暗黒スラッシュメタルへ。時に大仰なオーケストラで不穏な空気を醸し出しノリよりも雰囲気に注力されている事が伺える。ミドルテンポのパートは暗黒ムード全開である。特にインストゥールメンタルである【Tears in a Prophet’s Dream】から【Necromantical Screams】の流れは不穏な雰囲気満載。このアルバム全体の雰囲気を象徴していると思う。


Bathory:【Under the Sign ofthe Black Mark】

Bathory【Under the sign of the Black Mark】

87年、3RDアルバム。北欧ブラック・メタルという音像が完成された最重要アルバム。ブラック・メタル・サウンドの決定的な元祖と言えるだろう。一聴してアンダー・グラウンドで活躍している多くのブラック・メタルがこのアルバムをフォーマットにしていることは明らか。また、4THアルバム【Blood Fire Death】なんかはヴァイキング・メタルの元祖としても有名。正にブラック・メタル/ヴァイキング・メタルの創造主である。このアルバムなくして今のブラック・メタルは無い・・・と断言しても決して過言ではない。


Sarcofago:【I.N.R.I.】

sacofago【i.n.r.i.】

87年、ブラジルのスラッシュ・メタル1ST。いち早くコープス・ペイントを取り入れ、その後のブラック・メタルシーンに大きな影響を与えた。このバンドの登場によりブラック・メタル・ファッションがシーンに定着させたとされている。実際の音の方はつんのめる勢いのアンダー・グラウンドなスラッシュ・メタルだ。邪悪極まりないヴォーカルスタイルは完全にブラック・メタルのそれである。


主なブラック・メタル

一般的に代表的なブラック・メタルとアルバムをご紹介。ノルウェーのバンドのみになってしまうが、一般的にブラック・メタルと言えば100%外せないのが以下に紹介するこの4バンドである。もはや語り尽くされた感があるが結局は基本こそ究極なんだと実感するはず。筆者もこの記事を書きながら改めて聴いて痛感した次第である。

Darkthrone

特にDarkthrone三部作と名高い2ND、3RD、4THアルバムが有名。最近はクラストコア路線にシフトしたが初期は絵に描いたようなブラック・メタルである。Bathoryが築き上げたブラック・メタルの基礎を整理し真にブラック・メタルとして整えた。後に世界各国でDarkthrone型と呼ばれるフォロワーバンドが星の数ほど登場し、シーンに与えた影響力は計り知れない。ここではDarkthrone3部作をご紹介。

2NDアルバム【A Blaze in the Northern Sky】

darkthrone_2nd

初期Bathory、CelticFrost影響下のサウンドだとハッキリ判るアルバム。後に聴かれる単調さやミニマルさは全く無く、しっかり緩急の付いたある程度複雑な楽曲を演っている。勿論アンダー・グラウンドな雰囲気を漂わせているが3部作の中でも最も耳障りも良く非常にカッコイイ。後にプリミティヴ・ブラック・メタルの代名詞みたいな言われ方をするが、このアルバムで聴けるのはどちらかと言うとオールドスクールブラック・メタルだ。アンダー・グラウンドなスラッシュ・メタルが好きな方にも対応できるだろう。

3RDアルバム【Under a Funeral Moon】

darkthrone_3rd

3部作の中でも一番の暗黒度を放っておりアルバム全体を支配するジメジメとした空気感はこれまで以上にアンダーグラウンド色を強めている。曲もシンプルでありながら得体のしれないムードに満ちあふれ、何も纏っていない裸のブラック・メタルといった表現がピッタリくる。中でもアルバムタイトルにもなっている【Under a Funeral Moon】はストレートでありながらフックがしっかり効いている名曲。

4THアルバム【Transilvanian Hunger】

darkthrone_4th

ブラック・メタルの名盤。Darkthroneの中でも最も聴きやすく、ブラック・メタル入門にもぴったりだと思う。ブラック・メタルでしか味わえないトレモロリフにより繰り出される冷たく荒涼としたメロディの反復が全面に押し出されている。中でも一曲目の【Transilvanian Hunger】に顕著に現れている。意図して造られたであろうチープな音質もプラスに転じているから面白い。仮にプロダクションを徹底して改善したらこの世界観は表現できないだろう。プリミティヴ・ブラック・メタルの代表的なアルバムだ。


Mayhem

色々と苦難を乗り越え話題が絶えなかったブラックメタルバンド。初代ヴォーカリストのDeadの自殺、インナーサークルの中心人物でもあったギタリストEuronymousが同じインナーサークルのメンバーであるCountに殺害されるなど何かと死に直結した話題が多い。そんな話題だけのバンドではなく、彼らの1STアルバム【De Mysteriis Dom Sathanas】はブラック・メタルの名盤として名高く、未だ色褪せることはない。そんな名盤である1STをご紹介。

1STアルバム【De Mysteriis Dom Sathanas】

mayhem1st

記事を書くために久しぶり聴いているのだが・・・やっぱ半端ない(笑)特筆するはアルバム全体に張り詰める空気感。底なしに邪悪で最早、他の追随を許さない。ブラック・メタルの基本にして究極、正にマスターピースである。Euronymousの遺作でありながら彼を殺害したCountもベースで参加、自殺したDeadが歌詞を書いていたりここまで死に憑かれたアルバムはかつてあっただろうか?Attilaの呪文を唱えているような粘着質なヴォーカルスタイルをはじめEuronymousのメタルとしてのフックが効いたセンス抜群のギターリフ、ブラック・メタルでは珍しく自己主張するCountのベース、Hellhammerのつんのめった猛烈な勢いのドラミング。全てが上手く機能しており音の分離も良い好プロダクション。初心者から玄人まで幅広くオススメできる。ともかくこれがトゥルー・ブラック・メタル。必須デス。


Burzum

ブラック・メタル界の生ける伝説Count Grishnackhの一人ブラック・メタル・ユニット。Euronymousを殺害した張本人でもあり様々な犯罪を犯しブラック・メタルが持つ負のイメージだけでなく全てを体現した本気印の一人。音楽性よりかは彼の行いが話題になりがちだが初期のアルバムはどの作品にも狂気が満ちている。シンセによるアンビエント要素も取り入れており獄中からはアンビエント作品が2枚リリースされている(刑務所にギターは持ち込めなかったらしい)一般的に名盤と名高い3RDをご紹介。

3RDアルバム【Hvis Lyset Tar Oss】

burzum3rd

単調だがジックリ時間を掛けて蝕んでゆく曲展開が特徴。ジリジリとしたノイジーで単調なギターリフ、鬱々とした雰囲気に支配されたアルバムで最早、悟りの境地といえようか。4曲で実に44分弱ある大作志向であるが緩急に富んだ展開豊富な楽曲は皆無。まず色気が全く感じられないし、ひたすらに暗く寂しい。まるで誰もに存在を忘れられ静かに死んでいく寂しさ。特にラストのアンビエント曲【Tomhet 】にそれが顕著に現れている。まるでジャケットの絵をそのまま再現した様な曲である。(できればジャケットを見ながら聴いて頂きたい)そういった観点からこのアルバムはディプレッシヴ系の元祖といえよう。実は個人的に純粋なブラック・メタルとしてのギターリフが実に素晴らしい(?)4THアルバム【Filosofem】の方が好みだが鬱々とした生々しい世界観はこちらの方が上であろうか。


Emperor

IhsahnとSamoth率いるブラック・メタルを代表するバンドである。特に1STと2NDアルバムはブラック・メタルの名盤。以後、音楽性の高みを追い続け、最終的にプログレッシヴな域まで到達。保守的なバンドが多い中、貪欲に進化し続けた。2001年に一度、解散したが再結成。ライヴ中心に活動。そんな彼らの記念すべき名盤である1STをご紹介。(2NDと散々迷ったが・・・)

1STアルバム【In The Nightside Eclipse】

emperor1st

アルバム全体を包み込む冷気を帯びたシンセによるアレンジが秀逸。シンセが全面に出る部分は意外と控えめだがブラック・メタルとしてバランスが絶妙。2ND以降の色気は皆無でありながら内面から滲み出る荘厳さをしっかり感じ取れるブラック・メタルの名盤。まるでオーロラが覆う寒々しい夜空の下、霧深い森の中で密かに行われる黒魔術の如くである。何よりも驚くのはフロントマンであるIsahnはこの時17歳の少年であったという事実。10代の少年がこれを作ったとは・・・いやはや才能とは怖いものである。尚、今作の作風を極限まで推し進めた闇の音芸術2ND【Anthems to the Welkin at Dusk】も必聴。個人的にこの1STと2NDは冷静に聴いてられない。内から湧き出る荘厳さ、邪悪さを通り越して神々しさすら感じ、震えが止まらない・・・。


 

ブラック・メタルの様々なスタイル

ブラック・メタルの中でも様々な方法論が確立されている。現在では他ジャンルと融合が図られたり一言でブラック・メタルといえど随分と細分化が進んでいる。実際にジャンルの垣根が曖昧になってきたモノも少なくない。ここでは代表的なスタイル又はスタイルに用いられる単語をご紹介。これらのスタイルを指す単語はブラック・メタルを聴いていく上で頻繁に目にする事であろう。※個人的な見解が含まれるのでその辺はご了承願いたい。(大きくは違わないハズ・・・)

【オールドスクール(Old School)】

ブラック・メタルの基本的な様式の一つ。VenomやBathoryなどスピード・メタル~スラッシュ・メタルの要素が色濃く出るスタイル。所謂、元祖サウンドをリスペクトしたそのまんまの音楽性の事を指す。極悪なアンダーグラウンド・スラッシュ・メタルにも用いられるケースがある。

【プリミティヴ(Primitive)】

ブラック・メタルの基本的な様式の一つ。あくまでアンダー・グラウンド・ミュージックという主張の表れか、音のクオリティは意図して低く、基本的に必要にして最低限の曲展開、実にストレートかつシンプルなのが特徴。すなわち、飾らない剥き出しのブラック・メタルである。アンダー・グラウンド・シーンでモノクロジャケットで売られているCDは高確率でプリミティヴ・ブラック・メタルだ(笑)

【シンフォニック(Symphonic)】

ブラック・メタルの基本的な様式の一つ。シンセまたは本物のオーケストラが楽曲に乗るスタイルで大仰かつ荘厳さを全面に打ち出したスタイル。シンセ、オーケストラが楽曲を主導するケースも珍しくない。それらの要素が味付け程度のアレンジに留まらず、がっつり楽曲の一部になっているスタイルを指す。バンドにも寄るがクリーンヴォイスやオペラを導入したりするケースも。総じてドラマティックなのも特徴か。

【ファスト(Fast)】

読んで字の如く、スピーディーで疾走感がある様を例えている。ブラスト・ビート多用するバンドもコレに当たる。ただ、デス・メタルの様な攻撃性では無く、あくまでブラック・メタルの範囲内での寒々しさや荒涼感を保ちながらスピードを醸し出すバンドに使われる事が多い。初期DarkFuneral辺りが代表的か。ただ、最近はあまり使われなくなった言葉でもある。

【トゥルー(True)】

ここで取り上げるのはどうかと考えたがよく見かけるので一応ご紹介。音を表すスタイルと言うよりかは、「本格的にブラック・メタルを演っている」と言ったメンバーの主張、または聴き手の感じ方による呼び名だと個人的に解釈している。音自体の明確な定義は特に無いと思う。仮にメンバーが「我々はトゥルーである!」と主張したらきっとそうなんだろう。Mayhemの1STなんかは間違いなくトゥルーだ。あと聞き手による感じ方に頼ると”Taake”辺りや”Funeral Mist”辺りなんかも個人的にトゥルーなんだと思う。

【ブルータル(Brutal)】

デス・メタル的アプローチをブラック・メタルに取り込んだスタイル。音も分厚くブラスト・ビートが中心。トレモロリフばかりでは無く、時にデス・メタル的で攻撃的なリフを盛り込み禍々しく暴虐的な印象で非常にアグレッシブなスタイル。ブラック・メタルのジャンルにおいてアグレッシブな要素を突き詰めており、エクストリーム度はブラック・メタル中一番高い。最近の”Behemoth”辺りはブルデスだという人もいると思うが個人的にはまだまだブルータル・ブラック・メタルだと思ってる。

【ウォー(War)】

読んで字の如く、戦争に纏わる事をテーマに選んだブラック・メタル。突撃するイメージが強く、豪快でブルータルな曲調が多い。壮絶な勢いからグラインド・コアの影響も・・・といった見方もあるらしい。その筋ではカナダの”Blasphemy”辺りが元祖と言われているのでCDほじくり返して聴いてみると確かにグラインド・コアっぽかった。

【メロディック(Melodic)】

もともとブラック・メタルにはリフ自体がメロディアスだが邪悪さや退廃的な部分+明確な叙情性を狙った作風を指す。ブラック・メタルの中でも特にメタルらしい曲構成をしていたりするので初心者にも馴染みやすく聴きやすいのも特徴。特にスウェーデン辺りにはメロディック・デス・メタルとの境界線が曖昧なバンドが90年台には数多く存在していた。代表的なのはやはりDissectionだろうか。

【フォーク(Folk)/ペイガン(Pagan)】

民族音楽を取り入れメロディに牧歌的な側面がある。民族楽器やアコースティックを取り入れるバンドも少なくない。土着色が強く情緒あふれる曲展開が特徴的。”Ulver”の1ST辺りは代表的。ペイガン~は思想的なものだが自然崇拝や多神教をテーマに扱ったバンドを指す。NS系とも親密な関係にあり音だけで頼るならその見極めは困難。

【ヴァイキング(Viking)】

読んで字の如くヴァイキングをテーマとしたブラック・メタル。メロディック・デス・メタル辺りもヴァイキングがコンセプトのバンドが多く、引っ括めてヴァイキング・メタルと称される。北欧神話やヴァイキングの民族性を感じさせるメロディや戦いの勇壮さや哀愁漂うメロディを漂わせるケースが多い。フォーク/ペイガンの様に民族音楽を取り入れるバンドも多く音楽性の境界線は実に曖昧。故にヴァイキングをテーマにしているかどうか?という事である。

【デプレッシヴ(depressive)/ スーサイダル(Suicidal)】

ドゥーム寄りのブラック・メタルで総じて暗鬱。例外もあるが感覚として1曲のランニングタイムが長くジワジワ精神を追い詰める様なスタイル。大体は曲展開、スピードともにスローであり、曲調に一切の救いがない。テーマがよりシリアスで精神的に深く落ち込んでいく。絶望感や悲壮感といった人間的にネガティヴな感情を全面的に打ち出し、ヴォーカルスタイルも気の触れた絶叫であったり嘆きや泣き叫びに近い。ナーヴァスな状態で聴くとトドメを刺されること請け合いだ(笑)

【インダストリアル(Industrial)/ノイズ(Noise)】

ブラック・メタルに電子音楽を取り入れたスタイル。打ち込みやSE(サウンドエフェクト)を盛り込む先鋭的ブラック・メタル。無機質なSEを多用することから電脳的なイメージがあり【サイバー・ブラック・メタル】とも言われる事も。一方でノイズ・ブラックはメタルとは程遠いコテコテのノイズであるケースが殆どなのでメタルを期待して手を出すと火傷するケースも(笑)

【アンビエント(Ambient)】

環境音楽との融合。シンセや効果音(ブラック・メタルでよくある風の音や焚き火の音など)を多様したり音だけでその場の情景が何となく思い浮かべられるのが特徴的。揚げ場がないBGMまたインストゥールメンタルの類。非メタルな方向性を打ち出すプロジェクトが大半である。”Burzum”を始め、”Ildjarn”辺りはブラック・メタルとアンビエントの2軸で活動しており、アルバムによってはメタル成分は皆無なので気をつけよう(?)大自然を感じるある種癒やし的なモノから奈落に突き落とされるモノまで様々。

【アトモスフェリック(Atmospheric)】

元々は大気の意味。空気感。主にシンセサイザーなどで雰囲気を醸し出し味付け程度には留まらず、全面的に押してくるスタイルを指す。またはそう言った要素を含む曲に「~な曲」と表現されることも多い。ふわふわと浮遊感があり幻想的な感覚を取り入れている。シンフォニックの様なダイナミックさは無く、どちらかというと楽曲の雰囲気作りといった側面が強い。

【NS~(National Socialism)】

国家社会主義、ナチズム、白人至上主義等を思想及びテーマとして扱われるブラック・メタル。これといった音の様式は決まっていない自由スタイル。テーマや思想を表した呼び名である。因みに音だけ聴くとプリミティヴ系のバンドやパンクの要素を含んだバンドが多いがコレといって音を定義する材料は無い。

【ポスト(Post)】

ブラック・メタルの枠に囚われない要素を含んだスタイルの総称。簡単に言えば実験色が強く新感覚を目指す変則的なスタイル。変態系と比喩されることも(笑)様々な要素を詰め込みアヴァンギャルドになった曲展開、例えばジャズなんかを盛り込んだりするものはコレに該当する。”シューゲイザーブラック・メタル”なんかもポストブラック・メタルの一種。

【シューゲイザー(Shoegazer)】

オルタナロックの一種であるシューゲイザーとの融合。歪んだノイジーなブラック・メタル・サウンドでありながら相反する儚げでポップなヴォーカルが乗るスタイルである。因みにシューゲイザーとは”足下の靴(shoe)を見つめるよう(gazer)にうつむきながら演奏する様子”を表しているそうだ。ブラック・メタルかと問われると意見が分かれそうだが、スタイルは確立されている。

【クリスチャン(Christian)/アン・ブラック・メタル(UnBlack Metal)】

中には「なんでやねん!」とツッコミを入れたくなるバンドも存在する。そうクリスチャン・ブラック・メタルである。ホント、狙ってるとしか言い様がないし、何よりも意味ワカンネ~(笑)音源は普通にブラック・メタルなのだが実はこっそり(?)サタニズムを否定した歌詞を書いていたりする。我々、日本人にとって歌詞までキッチリ読み解く筋金入りのブラックメタラーでないと音楽形態だけでは判断は出来ない。家にあるCDを片付けていたら元祖クリスチャン・ブラック・メタル”Horde”のCDが出てきて思い出した。んで、この記事をアップする直前に急遽追加(笑)敵を潰すなら敵の懐に潜れって信念でもあるんだろうか。少しググってみたら、なんとインドネシアの”Armageddon Holocaust”までコッチだったとは!なんてこった!名前も名前やし今の今までコテコテかと思ってた。筆者は歌詞とか思想とか気にならない人間なので良しとする(笑)

 以上

様々なスタイルについて個人的な見解を含め挙げていったが、もはやボーダーレスといえようか。新スタイルはこれからもドンドン出てくる可能性がある。(都度、追加する可能性あり)それだけブラック・メタルは他ジャンルを吸収しやすいジャンルなのだろう。思いつくまま書き綴って見たが少しでも参考になればありがたい。ただ、こういった細分化に惑わされず自分に合った好きな音楽を楽しむのが正解。

 

最後に

 

突然だが、筆者がブラック・メタルに辿り着くまでの歴史でも書いておこう。

学生の頃、メタルにはまるで興味がなかった時代、猛烈にメタルを薦めてくるバイト先の先輩がいた。色々なアーティストを聴かせてもらった中で、オジー・オズボーンが決定的だった。1STアルバム【Blizzard of Ozz】である。あろうことか【Revelation (MotherEarth)】の終盤のピアノ・ソロ~ギター・ソロで涙腺崩壊(笑)そのドラマティックな展開に心(耳)を奪われた。未だかつて聴いたことがない!俄然興味が湧いてきた!と当時、人知れず悶絶したのを覚えている。直ぐ様買いに走ったのは言うまでもない(チャリンコで/笑)

当時はインターネットというブルジョアな環境が無かったのと学生故、金が無かったのもあって、オジーオズボーンを聴きつつたまにジャケットのみでカッコ良さそうなメタルっぽいアルバムをたまにつまみ食いする程度だった。今考えると趣味とは程遠いレベルだったかと思う。

メタルといえば激しい楽曲が特徴だが、激しさを求める欲求が徐々にエスカレートしていった。「より激しく、感情的な音楽が聴きたい!」そう思い始め、必然的にデス・メタルを経てブラック・メタルに辿り着いた。(因みにはじめて聴いたブラック・メタルはDissectionの国内盤1STアルバム)当時は情報も今ほど豊富で無かったので手当たり次第音源を買い漁り、手探りではあったがデス/ブラックメタルにどっぷりと浸かっていくことになる。これが求めていた音なんだとそう思った。

今、この記事に目を通してくれている方々は一体どういう経緯でブラック・メタルに辿り着いたのだろう?筆者の様に普通にヘヴィ・メタルからの流れで知ったのか、それともハードコア方面、ひょっとしたらヴィジュアル系方面から興味を持ったって人もいるだろう。今やブラック・メタルといえど様々なスタイルがあり、メタルとは全く異なるジャンルから知る機会も多いはずだ。筆者もブラック・メタルを通じてカオティック・ハードコアやノイズ方面も興味深々である。

何が言いたいかというと、辿り着く過程や知る切っ掛けはともあれ、星の数ほどある音楽ジャンルの中の一つ【ブラック・メタル】に興味を持ち、無事に(?)ブラック・メタルに辿り着いた同志たちに言いたい。

 

ようこそブラック・メタルの深き世界へ!

 

と、クサイ言葉で締めくくるのであった。

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