Cobalt


Hammerfight

EP(2003)/From:アメリカ/Style:ウォー│Raw

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【Track】
1.Angelfangs
2.Lunar Warfare
3.World on Its Knees
4.Hammerfight

【Review】
二人組ブラック・メタル。リリースはPestifer Records。

当時、たまたま入手して悶絶した個人的な名盤。おそらくこんな事言ってるのは筆者だけだろう。

あまりに強烈だったので、今は亡き某ショップの店主さんにCDRを焼いて「オモロイ、バンド見つけた!是非、聴いてくれ!」って勝手に持って行った記憶がある(笑)

よっぽど、共有したかったのだろう…若かった…。

いまでこそポスト系へと舵を切って別次元にいってしまった感があるが、【Cobalt】の滑り出しは信じられない位に衝動に満ち溢れた激Rawな楽曲を展開していたのである。

何と言っても絶品プロダクションでは絶対に醸し出せないであろう荒々しい音の成分がカッコ良い。エフェクトで憎悪が増幅され、超音波の如く鼓膜に突き刺さる凶悪なヴォーカル、乾いた音でやたらと前のめりな扇動を促すドラミング、ジリジリとしながらも、時折フックの効いたリフを醸し出すノイジーなギター、そして全く音に広がりのないオンボロなプロダクション(笑)4曲収録、21分弱と尺は短いが、とことん過激な音が詰まっていた。

個人的キラーチューンである#1”Angelfangs”では激Rawなリフに【Gorgoroth】的ヴォーカルが入り込み、激しいドラミングで熱き衝動を足した、筆者のツボを知り尽くしたかの様な楽曲(笑)以後、キレッキレな超音波ヴォイスが曲が進むごとに冴え渡り、感極まってハイトーンになったり、何処と無く戦争のキナ臭さを感じさせる楽曲が目白押しなのである。

…というか、好きすぎて客観的に書けやしませんぜ(笑)

当時で限定300枚だったので、今となっては入手困難だろうけど、誰もは一枚くらい妙に気に入ってしまう作品ってありますよね!?って話ですわ(笑)

所謂、”俺のマスターピース”ってヤツです。


War Metal

1STフル(2005)/From:アメリカ/Style:ウォー

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【Track】
1.Hammerfight
2.Angelfangs
3.Raise the Hammer of War
4.World on Its Knees
5.Summoning of Napalm Mists
6.Lunar Warfare
7.Empire of the Moth

【Review】
リリースはFrom Beyond Productions。個人的に傑作EPでノックアウトされたので多大な期待を寄せていた待望のフルレングスだった。予算を掛けたのかプロダクションが著しく向上、びっくりする程ハイ・クオリティに仕上がっている。

ノイズが嘘の様に晴れクリアになったので楽曲の輪郭がハッキリと浮かび上がり奥行きも出ているので音の分離がすこぶる良い。曲名をみてもわかるように傑作EPの曲が全曲入っているのだが、新たに録音された音はアレンジも違えば印象も全く異なっており全くの別物レベルになっている。

過激極まる前回と比べると幾分ソフトになってしまったと言わざるを得ないが、”War Metal”と銘打ってるだけにあくまで激しさが売りのバンド、十分に過激でタイトかつ鋭い演奏であり、何よりもカッコ良く仕上がっている。

新曲に関してはデス~スラッシュ的感覚が、かなり増大しておりまた別ベクトルのアグレッションを模索しているように思える。どの曲もアグレッシヴで非常にカッコいいが、特に#5”Summoning of Napalm Mists”は突撃感満載、スラッシュ的フックが効いた良曲。

あまりブラック・メタルらしさは感じない音になりつつあるが、硝煙漂う戦争のキナ臭さがある過激な音を聴きたければ是非。Great!


Eater of Birds

2NDフル(2007)/From:アメリカ/Style:ポスト

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【Track】
1.When Serpents Return
2.Ulcerism
3.Ritual Use of Fire I
4.Blood Eagle Sacrifice
5.Witherer
6.Ritual Use of Fire II
7.Invincible Sun
8.Androids, Automatons and Nihilists
9.Cephalopod
10.Ritual Use of Fire III
11.Eater of Birds

【Review】
Profound Lore Recordsからリリースされた。エクストリームな音を保ちつつ、プログレッシヴな方向へと複雑化が進み、楽曲にも個性が出てきた2NDフル。Profound Lore Recordsからのリリースも頷ける作品となっている。

スラッシュ的な要素もあればサイケデリックなドゥームの感触があったり、勿論ブラック・メタル的な要素もしっかりとあったりと、ごった煮系ではあるが統一感もあるし末恐ろしい完成度を誇る。

何よりも、構成される様々な要素が絶妙に絡み合い、全く破綻していないのが凄いし見事の一言。聴いていて全く飽きのこないサウンドは全エクストリーム・ミュージック・ファン対応と言っても過言ではないだろう。緻密で練りに練った計算高い盛り上がり方をするので、感情を掌握さえている様でなんだか怖い(笑)特にドゥーミーな展開からの盛り上がりは筆舌に尽くしがたい程にド迫力だ。最早、突撃だけではない今後の路線を決定づけ、転機となった強力な一作。

どの曲も素晴らしいが、あえてフェイバリット・チューンを一つ挙げるなら#5”Witherer”だろうか。ドゥーム・パートからの畳み掛ける後半の盛り上がりに、何時聴いても心臓がバクバクして止まらない。まるで彼らの掌で感情をコロコロと転がされている様でホントにヤバイんだわ(笑)。

どうか、みみっちい音なんかで聴かず、可能な限りの大音量で聴いてほしい逸品。

昨今の軟弱ポスト・ブラック勢に、もし疑問を抱いているなら是非とも試して欲しい。Great!


Gin

3RDフル(2008)/From:アメリカ/Style:ポスト

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【Track】
1.Gin
2.Dry Body
3.Arsonry
4.Throat
5.Stomach
6.A Clean, Well-Lighted Place
7.Pregnant Insect
8.Two-Thumbed Fist
9.The Old Man Who Lied for His Entire Life
10.A Starved Horror
11-60.無音
61.Stew Craven / …

【Review】
セピア色に包まれ古ぼけた写真に写っているこの人物はアメリカの小説家アーネスト・ミラー・ヘミングウェイの若かれし日の写真だそうな。トラックは#61まで続くのだが、これはヘミングウェイが61歳で亡くなった事に因んでいるらしい。死因はショットガンでの自殺だったらしい。勉強不足ながら、アルバムのテーマに深く関わっていると思われるのだが、よく知らないので言及は避けておく。

ともあれ、今回もProfound Lore Recordsからリリース、一筋縄でいく筈も無い。

ごった煮系を地で行くスタイルに変わりが無いが、各要素の境目が自然になっており、自分達の持ち味にキレイに染まっているといった印象を受けた。ヘヴィにうねったり、時にエッジの効いたダイナミックなリフが切り込んだり、ダークで悪酔いしそうなサイケデリックな雰囲気が漂っていたりと、前作以上に様々な要素でリスナーを揺さぶってくる。また、全体的にやや乾いた質感が増しており、楽曲に関してはもうブラック・メタルとは言えない境地まで到達している。

ちょっとアメリカナイズされモダンになったとでも言えようか。どの曲も個性があってリフとドラムが絶妙な絡み合いにてグルーヴ感を生み出しているのがやはりGood。

猛々しくうねるドゥーミーなリフとブラック・メタル的ブラストを随所に配した今作の特徴を端的にまとめた様な#1”Gin”、悪酔い必須のサイケデリックさからやがてドゥーミーに盛り上げダークな味わいがある#2”Dry Body”、割とパンキッシュなノリがあるブラック/スラッシュが炸裂したかと思うと、突然サイケデリックな女性コーラスが入り、いつの間にかドゥーミーな印象で終わっていく#7”Pregnant Insect”辺りが個人的にオススメ。

尚、#11-#60は無音、#61はアメリカにある超閉鎖的な田舎で夜な夜な酔っぱらい共が焚き火を囲みながら歌い、ひたすら何かをどついてる様な音が聴こえてくる気味が悪いインスト。一体何やってんだろ…(恐)

ともかく知的で緻密な匠の仕事を存分に楽しめる上質な逸品。Great!


Slow Forever

4THフル(2016)/From:アメリカ/Style:ポスト

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【Track】
– Disc 1 – Slow
1.Hunt the Buffalo
2.Animal Law
3.Ruiner
4.Beast Whip
5.King Rust
6.Breath
7.Cold Breaker

– Disc 2 – Forever
1.Elephant Graveyard
2.Final Will
3.Iconoclast
4.Slow Forever
5.Siege(ブックレットに記載なし)

【Review】
長年コンビを組んでいたPhil McSorleyが脱退、代わりに元【Lord Mantis】のCharlie Fellが加入。Profound Lore Recordsからリリースされた二枚組の大作。

ポスト・ハードコア化が進んだ本作はもうブラック・メタルの面影は殆ど残っていない。前作以上にアメリカンナイズが進み、Disk-1においては全編スロー~ミドル・パートが主体としたダイナミックな楽曲で覆い尽くされている。ヴォーカルはハードコア系のスクリームに寄り、音はアメリカンナイズされカラッカラに乾いている。

私的に前作はサイケデリック・ドゥームっぽい要素やブラック・メタルらしく無いにせよ、ギリギリの線では確かにあった絶妙なバランスが非常に面白く感じたのだが、今作ではいよいよ生粋のブラックメタラーには合わないだろう作風になっている。

サソリが歩いているルート66とかカラカラに乾いた大地だとかそんなアメリカンなイメージといった感じだろうか。

う~ん、どうも私的にテンションがアガりませんのや…。しかしながら、筆者の好みに合わないだけで、音のクオリティは極めて高くリフとドラムでダイナミックなグルーヴ感を生み出している要素は健在。土埃が似合うようなロックが好きならハマる要素はあるかと思われる。

一方でDisk-2は激しさを若干取り戻しスラッシュ調の展開を挟みこんだりするので、メタラー的にまだコチラの方が楽しめるかと思われる。敢えて一曲取り出すとすれば、Disk-2の#1”Elephant Graveyard”だろうか。乾いたブルージーなイントロからスラッシュっぽい疾走へと繋ぐ、アルバム屈指の疾走曲である。

筆者のように”ブラック・メタル馬鹿”にとっては少々厳しい音楽性であるが、様々なエクストリーム系ロックを分け隔てなく聴く人にとっては色々と唸る所があるのだろうと思う。