Dark Funeral


In the Sign…

EP(1994/2000)/From:スウェーデン/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Open the Gates
2.Shadows over Transylvania
3.My Dark Desires
4.In the Sign of the Horns
5.Equimantorn (Bathory cover)
6.Call from the Grave (Bathory cover)

【Review】
Lord Ahriman率いるスウェーデンを代表するブラック・メタル・バンドの代表格の一つ。元々はセルフタイトルとしてHellspawn RecordsからリリースされていたデビューEP(1994)に【Bathory】のカヴァーを二曲プラスして同レーベルより再発(2000)したモノ。

メンバーの入れ替わりが激しいバンドだが最初のラインナップはLord Ahriman、Blackmoon(R.I.P.)、Themgoroth、Draugenの4人編成だった。またスウェーデンのシーンを引っ張った名手の一人Dan Swanöがプロデュース兼エンジニアを務め、メタル界切っての絵師Necrolordがアートワークを手掛けている(オリジナル盤とはアートワークは異なる)。

寒々しくも荒涼としたギターリフに封じられしメロディアスなサウンドに絶叫を乗せ、2ビートを主体としながらも、ブラストビートを織り交ぜて疾走する一連の音楽スタイルはほぼ固まっていると言える。しかしながら、リフやリズム・パターン等に初期型メロデス/メロブラ特有の”いい意味での垢抜けなさ”が僅かに残っているのが今作の特徴ではないだろうか。古参にしかピンとこない感覚かも知れないが、良くも悪くも90年代におけるUnisound製のサウンドなのである。※Unisound:Dan Swanöが運営するスタジオ。よって【Unanimated】や初期【Mörk Gryning】辺りの音作りが好きな方はドツボではなかろうか。

新たに追加された【Bathory】の忠実なカヴァー二曲も見事にハマっており非常にカッコ良い仕上がりとなっている。因みにカヴァー2曲はPeter TägtgrenのAbyss Studioにて録音されているとの事。


The Secrets Of The Black Arts

1ST(1995)/From:スウェーデン/Style:ファスト

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【Track】
1.The Dark Age Has Arrived
2.The Secrets of the Black Arts
3.My Dark Desires
4.The Dawn No More Rises
5.When Angels Forever Die
6.The Fire Eternal
7.Satan’s Mayhem
8.Shadows over Transylvania
9.Bloodfrozen
10.Satanic Blood (Von cover)
11.Dark Are the Paths to Eternity (A Summoning Nocturnal)

【Review】
ドラマーがDraugenからEquimanthornへとメンバーチェンジ、プロデューサーはDan Swanöから、これまた名手のPeter Tägtgrenに鞍替えしたAbyss Studio録音の1STフルレングス。アートワークは絵柄から作家性が溢れ出るNecrolordによる傑作アート!スウェーデンの最重要レーベルNo Fashion Recordsからリリースされていた歴史的一枚。

【Bathory】から派生したセカンド・ウェーブ・ブラック・メタルといったムーヴメントを語る上で必ずと言っても良い程に名前が挙がり、避けて通る事は不可能な一枚、まぁ必修科目みたいなモノである(笑)

今、改めて聴き直しても全く色褪せていないのは紛うことなき名盤の証。

楽曲の始まりを告げる魂の絶叫から止まらない冷気と荒涼としたブリザード・リフが吹き荒れ”ストーム・ブラスト”と形容できそうな直線的なドラミングで駆け抜けていく。この様なファストでありながら荒涼感ダダ漏れサウンドは時として”【Dark Funeral】タイプ”と形容され多くのフォロワーを生んだ言わばスウェディッシュ・ブラックにおける経典だ。

幸運な事にリアルタイムで味わったモノとしては、当時一番ファストで衝撃的だったのを今でも鮮烈に思い出せるし、毛色の違うUS産カルト・ブラック【Von】のカヴァーが収録されている事で【Von】というカルトな存在を教えてくれたのもいい思い出だ。彼らがカヴァーを演らなかったら、誰にも知られずに埋もれたであろう(笑)

名盤とは言え、今からブラック・メタルの世界へ踏み入れようとする新参者には音圧や音質に物足らなさを感じるかも知れないが、元来ブラック・メタルとはこういうモノだった筈だ。まずは#2”The Secrets of the Black Arts”、#4”The Dawn No More Rises”、#7”Satan’s Mayhem”辺りを聴いてみては如何だろうか?

ブラック・メタルの多様性が進む昨今、古参と新参者とでは感じ方は違うのは当然だが、少なくともこれがスウェディッシュ・ブラックの基本中の基本だという事が身に沁みて分かるはず。

”巷に溢れるスウェディッシュ・ブラックの典型”の始まりはコレなのである。


Vobiscum Satanas

2NDフル(1998)/From:スウェーデン/Style:ファスト

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【Track】
1.Ravenna Strigoi Mortii
2.Enriched by Evil
3.Thy Legions Come
4.Evil Prevail
5.Slava Satan
6.The Black Winged Horde
7.Vobiscum Satanas
8.Ineffable King of Darkness

【Review】
Lord Ahrimanを筆頭に往年の【Dark Funeral】を支えた名ヴォーカリストEmperor Magus Caligula、そして【Funeral Mist】【Infernal】でプレイ経験があるギタリストTyphos、【Dissection】【Gorgoroth】でプレイ経験のあるドラマーAlzazmon(Tomas Asklund)とラインナップを一新。Peter Tägtgrenプロデュースの元、Abyss Studioで録音され、No Fashion Recordsからリリースされた傑作にして名盤。

スウェディッシュ・ブラックの経典とも言える前作から順当で理想的な進化を遂げており、ブラック・メタルとしてより苛烈な方向へと駒を進めた。荒涼感や冷気を保ちながらも音圧がググっと増しているので体感できる苛烈さは前作を軽く凌駕する。それに伴って、リフから冷気だけではなく強大な負のパワーが溢れ出し威風堂々とした威厳を放っているのが今作の特徴だろう。

そこに異常な肺活量を誇り、明らかに前任よりも表現力が豊かになったCaligulaのブチギレヴォーカルが濃密に絡み、より強固で強力な【Dark Funeral】サウンドが生み出されている。基本的なスタイルを確立した1ST、そしてその地盤を確固たるモノに仕上げたのがこの2NDだ。

以後、完成された【Dark Funeral】サウンドを踏襲しながら時にメロディアス、時にブルータルにと段階を踏み進化していくが、1STから2NDにかけての進化ほどの衝撃は得られなかった。よって極論だが【Dark Funeral】サウンドの進化はこの2NDにてピークを迎えている様に思う。

彼らのディスコグラフィーの中、最も硬派かつビターで禍々しいアルバムであると共に基本中の基本の名盤であることに疑いの余地はない。


Teach Children to Worship Satan

EP(2000)/From:スウェーデン/Style:ブラック・メタル

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【Tarck】
1.An Apprentice of Satan
2.The Trial (King Diamond cover)
3.Dead Skin Mask (Slayer cover)
4.Remember the Fallen (Sodom cover)
5.Pagan Fears (Mayhem cover)

【Review】
メンバーが安定しないバンドだが、今回のラインナップはLord Ahriman、Emperor Magus Caligula、Dominion、Gaahnfaustの4人。Peter Tägtgrenの実の兄Tommy Tägtgrenの元、Abyss Studioで録音されNo Fashion Recordsからリリースされた。

内容はオリジナルの楽曲を一曲だけ含む、カヴァーが中心のEP。因みにLive映像を元にした”An Apprentice of Satan”のビデオが入っており、Caligulaの火吹きが拝める(要PC)。

当時としてはそれはそれは貴重な映像だった。

EPのタイトル”Teach Children to Worship Satan”と銘打っている通り、我々に”サタン・メタル”とは如何なるものか?という事を【Dark Funeral】直々に叩き込まれる内容となっている(笑)

オリジナル曲の#1”An Apprentice of Satan”は些かマイルドな仕上がりになっており、起伏が明確に付きつつも非常にメロディアスなニュアンスがある楽曲だ。今思えば続く3RDへの方向性をサラリと示しているように思う。

一方でメインであるカヴァー楽曲は【King Diamond】【Slayer】【Sodom】【Mayhem】と大抵のブラック・メタルバンドが影響を受けたであろう往年の有名バンドがずらりと並ぶ。当然ながら思いっ切り正統派メタルしている【King Diamond】のカヴァー、【Slayer】や【Sodom】のスラッシーなカヴァー、Attilaに頑張って寄せている呪詛ヴォーカルが微笑ましい【Mayhem】のカヴァーは通常運転時とは全く違う側面を聴かせてくれる。

指して重要な作品では無いにせよ、彼らのルーツを辿れる作品としてファンなら聴いておきたい逸品。


Diabolis Interium

3RD(2001)/From:スウェーデン/メロディック

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【Track】
1.The Arrival of Satan’s Empire
2.Hail Murder
3.Goddess of Sodomy
4.Diabolis Interium
5.An Apprentice of Satan
6.Thus I Have Spoken
7.Armageddon Finally Comes
8.Heart of Ice
9.The Trial(King Diamond cover)
10.Dead Skin Mask(Slayer cover)
11.Remember The Fallen(Sodom cover)
12.Pagan Fears(Mayhem cover)

【Review】
ドラマーが交代、スウェーデン屈指の凄腕ドラマーMatte Modinが参戦。Peter Tägtgrenの元、Abyss Studioで録音されNo Fashion Recordsからリリース。また彼らの音源では初の国内盤がSoundholicから発売されている。日本盤ボーナス・トラックとして、前EPで使用されたカヴァーが全て入っている。

以前までは青を基調とする寒々しいアートワークだったが、今作から地獄の最下層で燃え盛る業火(赤)をイメージさせる色合いになっているのが興味深い。よりエクストリームにといった狙いが込められている様にも取れる。

で、肝心の音の方だが従来のサウンドを踏襲しつつも音の分厚さが増しており、取り分けメロディに対するアプローチがより一層大胆になっているのが今作の特徴だろう。楽曲そのものがよりダイナミックになっており暴虐度とメロディの調和を狙ったような意欲的な作品になっている。冒頭の#1”The Arrival of Satan’s Empire”や#2”Hail Murder”の頭二曲にその様なイメージの楽曲を持ってきている辺り彼らの意図がハッキリと伝わってくる。

悲哀と荘厳さが混じり合ったギターリフに一糸乱れぬMatteの鋭いドラミング、そしてCaligulaの邪念を吐き出しているかのような恐ろしいヴォーカルが渾然一体となってビシバシと印象深いフレーズをキメていく様は聴き手のダークサイドな激情を呼び覚ますようだ。

この様にメロディが全面に打ち出されたとはいえ、あくまで暴虐さの果てにあるメロディである事に焦点が定められているので、ヌルくなったとか軟弱になったという事は全く無いのである。


Attera Totus Sanctus/復讐の賛歌

4THフル(2005)/From:スウェーデン/Style:ブルータル

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【Track】
1.King Antichrist
2.666 Voices Inside
3.Attera Totus Sanctus
4.Godhate
5.Atrum Regina
6.Angel Flesh Impaled
7.Feed on the Mortals
8.Final Ritual
9.Atrum Regina(Bonus Track)
10.Open The Gates :2005 Version(Bonus Track)

【Review】
ギタリストが交代、新たにChaq Molが参戦。倒産してしまったNo Fashion RecordsからRegain Recordsへと移籍、国内版はSoundholicから発売された。これまで【Dark Funeral】を支えてきた名プロデューサーPeter Tägtgrenから離れ、新たにDaniel BergstrandとÖrjan Örnklooなる人物の共同プロデュースの元、DugOut Studiosにて録音された。

Danielの方は【Behemoth】の4TH以降や【Meshuggah】【In Flames】【Darkane】等々、実に数多くのバンドを手広く手掛けており、印象としてはエクストリーム・メタル系全般といった毛色の人物である。

少なくともあまり鬱々としたブラック・メタルといった印象がない人物だ。

この事が影響しているのか、サウンドの方は【Dark Funeral】史上よりタイトでブルータルな方向を示している。前作と大きく異なるのはリフによるメロウさや荒涼感を醸すフレーズがやや減退傾向にあり、それに引き換えてか、荘厳さを感じるフレーズと畳み掛ける様な苛烈さが際立っている。

元来ブラック・メタルが持つ根暗さと外に向けたブルータルさを天秤に掛けたとしたならば、少しブルータル側に傾いているとでも表現できようか。

Caligulaのヴォーカルスタイルも楽曲に合わせてか、邪悪な絶叫というよりかは獣性が高いガナり声を意識した唱法に”意図して変えてる”といった印象が強い。Matteのヤケに力強くなったドラミングも然りである。これも、かねてよりLord Ahrimanが言及していた「よりエクストリームかつブルータルに!」と拘っていた一つの答えなのだろう。

寒々しい情景(青)から地獄の業火(赤)へと一連のアートワークにおけるイメージカラーの変更もこれで説明が付くし納得もいく。

路線が変わったとはいえ、一本筋が通った【Dark Funeral】サウンドが大前提での話であり、著しくイメージを覆すほどの変化でもない。


Angelus Exuro pro Eternus

5THフル(2009)/From:スウェーデン/Style:メロディック

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【Track】
1.The End of Human Race
2.The Birth of the Vampiir
3.Stigmata
4.My Funeral
5.Angelus Exuro pro Eternus
6.Demons of Five
7.Declaration of Hate
8.In My Dreams
9.My Latex Queen

【Review】
B-Forceなる専属ベースが加入、Matteから【In Batlle】等で活躍していたDominatorへとドラマーが交代、新たに5人体制となった。Peter Tägtgrenを再びプロデューサーに迎え、Abyss Studioで録音、Regain Recordsからリリースされた。国内盤はAvalonから”業火の使徒”と邦題が付けられリリースされている(今回レビューするのは輸入盤)。

苛烈でブルータルな方向性を聴かせた前作と比べるとミドル・チューンが多く収録されているのが今作の特徴。当然、従来通り速い楽曲も収録されているのだが取り分けてミドル・チューンの存在感が大きいといった印象だろうか。楽曲に明確な起伏を盛り込むことにより作風の幅は確実に広がっており、より一層とメランコリックなフレーズが封じられたアルバムになっている。

その昔、Lord Ahrimanが自ら「ブルータルな【Dark Funeral】にはギターソロは似合わない」などと言及していたが、今回のアルバムに収録されている#6”Demons of Five”にはオリジナル曲では初のギターソロがしっかりと入ってたりする。いよいよ【Dark Funeral】もギターソロが似合うようになってきたのか…と考えるとなかなか感慨深いモノである。

当然ながらCaligulaのヴォーカル・スタイルも従来の激情溢れる絶叫に戻しており、楽曲が放つ雰囲気によくマッチしている。メロディアスでありながらエモーショナルな側面を強めた本作で特に顕著なのはPVにもなった#4”My Funeral”だろう。まるで”【Dark Funeral】流ディプレッシヴ・ブラック”とでも表現出来るほどに悲哀が爆発する泣きの一曲。また、#8”In My Dreams”の胸を掻きむしる様なエモーショナルさも実に印象的。

【Dark Funeral】らしさを貫きつつも大きくメロウに傾いたという事を物語っている。


Where Shadows Forever Reign

6THフル(2016)/From:スウェーデン/Style:メロディック

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【Track】
1.Unchain My Soul
2.As One We Shall Conquer
3.Beast Above Man
4.As I Ascend
5.Temple of Ahriman
6.The Eternal Eclipse
7.To Carve Another Wound
8.Nail Them to the Cross
9.Where Shadows Forever Reign
10.The Eternal Eclipse (Demo)
11.Where Shadows Forever Reign (Demo)

【Review】
ヴォーカルであるCaligulaとB-Forceが脱退、代わりに【Grá】【Domgård】等で活躍しているHeljarmadrがヴォーカルとして加入。4THでプロデューサーをしていたDanielとLord Ahrimanとの共同プロデュース作品。DugOut Studiosで録音され大手Century Media Recordsからリリースされた。

今回、レビューしているのは国内盤で、コチラの方はWard Recordsのエクストリーム・メタル部門”Chaos Reigns”からボーナストラック2曲が追加され日本先行でリリースされた。

ジャケは久しぶりにNecrolordが手掛けており、ぐうの音もでない程に完璧なアートワークを披露。やはりこの人が描き出す独特な暗黒美は寒々しいブラック・メタル・バンドにこそよく似合う。

音は前作の延長線上にあるサウンドであるが、バンド史上最もキャッチーであると同時に内容が充実したアルバムになっているのではないだろうか。オープニングを飾るに相応しいこれぞ【Dark Funeral】と言うべきファストチューン#1”Unchain My Soul”、バンド史上最もメロディアスな#7”The Eternal Eclipse”、アートワークのイメージ通りの世界観を描き出す筆者イチオシの#9”Where Shadows Forever Reign”と印象深く強力な楽曲が目白押しである。

総じてファスト~ミドルチューンを織り交ぜた緩急あるアルバム構成、強力なフックを携えたメロディ、最早言及するまでもない優れた演奏など、何処を切り取ってもベテランらしいアルバムに仕上がっている。

また今回新たに加入したHeljarmadrのヴォーカルもCaligula程の強烈な存在感はないが”地味ながらパーフェクトに仕事をこなすタイプ”といった印象であり、#8”Nail Them to the Cross”での言葉数多く、まくし立てる際の歯切れの良さは圧巻。

決して想像の域を出ない作品だが今出来ることの全力を示してくれた様に思う。

ブラック・メタル初心者から玄人まで対応できる窓口の広さ、質の高さと完成度を含め今回のアルバムはズバリ傑作。