Mysteries of the Nocturnal Forest

1STフル(2004)/From:ポーランド/Style:アトモスフェリック

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【Track】
1.Ode to a Rising Fullmoon (Intro)
2.Immerse into Cold Mist
3.Thy Woods Are Sacred
4.Towards the Funeral Winternight Landscape
5.Solitude Apotheosis
6.Descending Winds of Holocaust
7.The Black Heavens Open
8.Morbid Rejoice
9.Desolate Fields Left (Outro)

【Review】
Funeral Sound ProductionsのオーナーでもあるGrimSpiritによる独りブラック・メタル。Old Legend Productionsからリリースされていた。

気付けばアグレッシヴでブルータルなブラック・メタルが溢れた印象が強いポーランドにおいて、未だに90年代の古臭いアトモスフェリックなスタイルを頑なに貫く、今となっては正統派と言うべき存在。”Mysteries of the Nocturnal Forest”と銘打たれたアルバム名そのまんまの音を構築、アルバム名を見て直感的にピンときたなら期待しても良いアルバムだ。

ふぁ~っとした幻想的なシンセを絡めながら、掻き鳴らしリフにアルペジオを重ね展開、概ね疾走はするモノのドラムは出しゃばらずアトモスフェリックな雰囲気を壊さない程度の調整がなされている。また程よくEvilなヴォーカルもよく馴染んでおり灰色の世界が広がっているのである。湿りに湿ったサウンドであり、実にまったりとした味わいなのでガツンとくる即効性や派手さは感じない作品だが、構成される音の要素全てに味わい深い情緒をしっかりと感じさせる。

ターゲット層としては初期【Dimmu Borgir】(1ST-2ND)や初期【Gehenna】等の”90年代アトモスフェリック・ブラック・メタル”を好むなら恐らく最高の時間を過ごせるだろうし、上記のバンドの音源が好きなら#4”Towards the Funeral Winternight Landscape”なんかは間違いなくガッツポーズだろう。

残念ながらここ日本ではあまり知名度はないように思うし、恐らくは知る人ぞ知るといった程度で留まっていると思うので、ココは一つ隠れた良作として是非ともご記憶願いたい。Great!

 

Funeral Sorcery

2NDフル(2005/2008)/From:ポーランド/Style:アトモスフェリック

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【Track】
1.Funeral Sorcery
2.I Reach the Winter Twilight
3.Krone aus kalten Sternen
4.Tale of Carpathian Wind
5.Iconoclast Eminence
6.Im Schatten der Majestät des Eistodes

【Review】
自身のレーベルであるFuneral Sound Productionsから2005年にテープでリリース。その後、2008年にめでたくAlles StenarからCDで再発された。

どんよりとした仄暗い雰囲気がより強くなり楽曲の展開により個性が付いた傑作。前作ではアトモスフェリックなシンセがメタルサウンドに同調していた印象だが、今作はシンセが表に出る部分と引っ込む部分にメリハリがついた様に思う。加えてギターの音がややノイジーになっておりダークで不穏な旋律を奏で、ドラムも目立たないながらも突っ走るパートの手数足数が大幅に上がっている。

また、湿った音質はしっかりと継承され、あまり分離が良くない音も相まってよりアングラに潜った感じの作品となっている。しかしながら、これもまた計算のウチなのか漂わす暗黒度は大幅に上昇しておりブラック・メタルとして物凄くカッコ良く仕上がっており、どの曲も大変素晴らしい。

メリハリが効いた大胆なシンセと緊張感ある邪悪なリフで展開する#3”Krone aus kalten Sternen”は素直に名曲だと思うし、まるでサウンドスケープさながらの#6”Im Schatten der Majestät des Eistodes”においては、オーロラで彩る夜空から厳しい寒さが残る朝焼けへと場面が移りゆく大自然の情景が目に浮かぶ様で非常に情緒があったりする。

やはりGrimSpiritなる人物、只者ではなく比類なきセンスと明確なビジョンの持ち主である事がしっかりと証明されたアルバムである。音のクオリティが高い音源しか聴かない人にはオススメしないが、Lo-Fiな音を引っ括めてこそブラック・メタルと思っている人にはオススメ。個人的に傑作レベル。Great!

 

Lost Horizons of Wisdom

3RDフル(2008)/From:ポーランド/Style:アトモスフェリック

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【Track】
1.Algol’s Northern Lights
2.Grim Spirit, the Forest Wanderer
3.Cages of Cold Despondency
4.My Tower Among the Timeless Mountains
5.Lost Horizons of Wisdom

【Review】
Nykta Recordsからリリースされた3RD。アートワークはドイツの画家Caspar David Friedrich画伯の絵画だそうだ。

元々、大作主義な傾向があったにせよ、いよいよエスカレートして全曲10分超えの大台を突破、#4”My Tower Among the Timeless Mountains”に関しては19分弱にも及ぶ超大作に挑んでいる。

個人的にこのプロジェクトの”核”だと勝手に思っているシンセ・ワークは勿論そのままで更なるスケール・アップとクオリティ・アップが図られた意欲作。特にメタルサウンドの部分に対して大幅なテコが入った様で、以前からはあまり感じられなかった疾走感が大幅にパワーアップ。

寒々しくもジリジリとしたギターリフにサウンドスケープさながらの幻想的なシンセが絡み非常に安定感のある作品に仕上がっている。神経を摩耗させるようなノイズを構成するギターリフは時に【Burzum】の影響が伺えたりと往年のノルウェイジャン・スタイルを強めており、いよいよポーランド産とは思えないレベルになってしまったと言える。

個性はやや減退したモノの確実に熟れてきたといった感じで一つの作品としてネクストレベルに達したかと思う。一方で2NDにて強烈に放っていたある種の”カルト感”は薄れてしまったのが個人的に残念な部分であるモノの、クオリティの高さとカルト感はおおよそトレードオフの関係にあると思うのでまぁ仕方がない所ではある。しかし、それらを補って余る程の完成度かと思うし、一般的には良い方向へと動いたのではなかろうか。

ともあれ、アトモスフェリックなブラック・メタルファンなら必ずや楽しめる強力な逸品だろう。正にGrim & Cold!

 

Wintermoon Enchantment

4TH(2011)/From:ポーランド/Style:アトモスフェリック

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【Track】
1.Intro: Open the Mysteries from Beyond
2.Fullmoon over the Eastern Woods
3.Tradition – Heritage – Destiny
4.The Wind & the Old Willows
5.Interlude: Passing the Meadows in Woe
6.Wolves of Hyperborean Frost
7.Summoning the Splendour Once Fallen
8.Outro: Descent into the Starlit Spheres

【Review】
今作もNykta Recordsからのリリース。アートワークはオランダ生まれの画家Remigius Adrianus Haanen画伯の絵画だそうだ。アートワーク通り幻想的なシンセで描き出す大自然の情景描写は相変わらず健在。

当然ながら基本的な世界観に変更は見受けられず、楽曲から感じる印象も然程変わっていない。したがって、前作の延長線上にある作品であるのは間違いないのだが、楽曲の構成や展開にドラマ性を含ませているのが今作の特徴になっている。

前作は十分な緩急が付いていたモノのイメージとしては突貫している印象が強かったのに対し、今作では非常にバラエティ豊富なリズム・パターンが用意されている。楽曲の展開に合わせブラストから2ビートに移行したりミドルからスローになったりと一曲の中でも場面場面において様々に使い分けている。緩急を付けるというよりかは展開そのモノがドラマティックにアップグレードされていると言ったほうが適切か。

これはシンセが表に出る部分と引っ込む部分などのアレンジの濃淡においても同様で、Evilなスタイル一辺倒だったヴォーカルもナレーション風の語りが挿入されたりと明らかに演出がパワーアップを遂げている。されど大仰でやり過ぎな域にまでは行っておらず、実にいい塩梅で踏みとどまっているので極端にイメージを覆す程ではない。

個人的で勝手な見立てだが、強固な信念を持っているアーティストといった印象が強いので、大きくブレたりする事は無いにせよ、更なるドラマティックさを披露した今作が今後の作品にどう影響するのか今から楽しみである。Great!