Hate!

EP(1994年)/From:デンマーク/Style:グラインド│ブラック│ノイズ

【Track】
Side:A
1.Intro
2.Hate To The Silence Lord
3.Hate
4.I Hate

Side:B
5.Fuck The World
6.Hate To The One Born
7.Die Meateaters
8.Hate To The One Of The Light
9.The Army Of Hate

【Review】
デンマークの伝説【Sortsind】のメンバーによるグラインド/ブラック/ノイズ。At War For Noiseから7インチVinylでリリースされていた。アーティスト写真では3人写っているので、この時点では3人組だったらしい。(Smerte嬢(R.I.P.)は女性なので確認できるのだが、後の二人は誰なのか名前が記載されておらず正確に誰なのかは分からない)。

Samf(Dr) / Stöff(Bas) / Svig(Vo/Gt)

ともあれ、ブラック・メタルを演る前にプレイしていた初期グラインド時代が聴ける貴重な資料的作品。グラインドからブラック・メタルに移行する片鱗みたいなモノを随所で感じ取る事が出来るのだが、上記の様なハイブリット感は薄く、真っ当なバイオレンスでクレイジーなグラインド・コアを演っている。また、やたらとRawな演奏と少しばかりノイズ成分も味付けとして含まれており(特にノイズ成分はSide:Bにて顕著)如何わしい雰囲気と喧しさを引き立てているのに一役買っている。

楽曲の方は勢い一発で感情を爆発させるといったスタイルで、概ねどの楽曲も短く最長でも2分半くらいの短めの楽曲で構成され、その短い中でもある程度の緩急を感じさせる作りにはなっている。しかしながらグラインド特有のヘンテコな半ばSEともインストとも取れるような楽曲をちょいちょい挟むのでバンド・サウンドオンリーで押すといった爽快さはあまり感じられない。やはり何処か病的でクレイジーな作品となっている。

またヴォーカルの病み方がブラック・メタル時代とは些かベクトルは違えども、その病みっぷりは既に頭おかしいレベルであり、マイクがぶり付きで酷く吠えたり、奇声を上げたり、泣き声を上げたりと変態芸達者っぷりを遺憾なく発揮、正にのたうち回りながらシャウトしてるような光景が浮かんでくる。

尚、#3”Hate”や#8”Hate To The One Of The Light”辺りではブラック・メタルを感じさせるフレーズが飛び出してきたりもするのだが、ブラック・メタルへと至る文脈をあまり深く考えずに悪意ある負の感情の塊に圧倒されながら聴くのが正解だろうし、恐らく考えた所で何にも無いかと思われる(笑)

後にブラック・メタルへと移行する1ST、果てはこのサウンドが【Sortsind】へと繋がっていくという事実。その辺を意識して聴くと共通する狂気は確実に芽吹いているのがわかるし、「うんうん、なるほど」と妙に納得してしまうそんな作品だ。

 

Jeg Elsker Beton

1STフル(2015)/From:デンマーク/Style:ブラック・メタル

daarligstemning_1st

【Track】
1.Blodspor
2.Nedstigning
3.Timer
4.Forstad For Darkness
5.Varsel / Jeg Elsker Beton
6.Vejs Ende (Live)
7.Alene I Det Grå (Bonus Track)
8.Endeløse Cirkler (Bonus Track)

【Review】
4人組ブラック・メタル。詳細は不明ながら【Sortsind】のメンバーであるSvigとSmerte(R.I.P)が【Sortsind】より前に演っていたバンドとの事。音源の録音は1997-1998年になっており、どの様な経緯か分からないがAt War for Noiseなるレーベルが満を持してリリース。

【Sortsind】といえば音源の入手難度と病的な内容で相当話題になったのが記憶に新しい。恐らくはここ日本でのみ口コミを通じ、文字通り”伝説”となった極めて異例のケースだったかと思う。

そういった”Pre【Sortsind】”という触れ込みを背負いながらも、期待を裏切らない病的さと不穏を踏襲した極めてダークな路線であり、【Sortsind】で悶絶した好きモノにとって納得できる作品に仕上がっている。

楽曲的には荒涼とした世界観で疾走するといった割とオーソドックスなブラック・メタルで始まるが、曲が進むごとに「やはり、これは紛うことなき…」と確信に変わる。楽曲の節々に漂っている独特の空気感、具体的には”おどろおどろしさ”や焦燥感、そして狂気が既に【Sortsind】のソレなのである。

ジリジリとしたギターが陰惨さと荒涼感を醸し出しながら、自殺した女性シンセ奏者Smerteが奏でる存在感のあるシンセの装飾、そして狂気をまるで疫病を撒き散らすかの如く吐き続けるSvigによるヴォーカルが素晴らしい。ブラック・メタルのカッコ良さを保ちながら、行き過ぎてギャグになってしまう一歩手前位で留まっているバランス感覚はやはり上手いと言わざるを得ない。

また23分に及ぶ#6”Vejs Ende”では悪夢を彷徨う様な生粋のダークアンビエントを演っているのだが、おっかない音響が延々と続き、徐々に狂気に変わっていく「これぞ!」といった展開もやはり彼ららしくてGreat。しかも最後でパチパチパチ…と拍手が聴こえてきて、「え?この曲Live音源やったんかい!」っと突っ込んでしまうこと請け合いである。

一体どんなテンションでLiveを聴いているのかを想像するとなんだか笑えてくるのだが(笑)。

総じて【Sortsind】よりはメロディアスかつそこそこ展開するので聴きやすく、入手自体も【Bandcamp】があるのでグッと敷居は下がっているので、是非とも試しては如何だろうか?

個人的に完全にドツボ、タマラナイ。Great!

※どうやらデータ版はボーナス・トラックが収録されていない代わりにNYP、しかもアルバム・タイトルも違うので別物扱いらしい。