Dismal Euphony

Dismal Euphony(S/T)

EP(1996)/From:ノルウェー/Style:アトモスフェリック

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【Track】
1.A Winter’s Tale
2.Spellbound
3.The Mournful Silence

【Review】
4人組ブラック・メタル。デモに続くデビューEP。Napalm Recordsよりリリースされた。

2ND辺りからゴシック色を強めていくが初期はアトモスフェリックで叙情的なブラック・メタルを演っていた。シンセ、女性ソプラノ・ヴォイスを大胆にフィーチャーしたドラマティックかつメロディックな逸品。シンセがメロディを主導する内容でありながら、更に女性ソプラノ・ヴォーカルを大胆に絡ますというアプローチで叙情味を最大限にまで引き出している様な作品。

また同時にトラッド色を感じさせ、ノルウェイジャンらしく古の風土を感じさせる様な内容は見事の一言。このバンドの最大の特徴であるシンセや女性ソプラノを抜いたとしても、良い感じで古臭くメタルらしいエモーショナルなギターサウンドが随所に配置されていたりで、部分的ではなく楽曲そのモノが叙情的で味わい深いモノに仕上がっている。

適度に疾走し緩急の付いたブラック・サウンドに森の妖精の様な美しいソプラノ・ヴォーカルを全面に打ち出した作風は単に”美と醜”の対比と言うよりかは共存しているイメージ。当時にしてはコレが斬新なアプローチであった。

90年代ブラック・メタルの個性ここにあり。実に素晴らしい逸品。

 

Soria Moria Slott

1STフル(1996)/From:ノルウェー/Style:アトモスフェリック

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【Track】
1.Prolog
2.Et vintereventyr
3.Natten løftet sitt tunge ansikt
4.Alvedans
5.Trollbundet
6.Ekko
7.Isgrav, det siste hvilested
8.Epilog

【Review】
前作をしっかりと踏襲した音源となっており、アトモスフェリックな空気感がより強くなったと言えようか。

基本的には疾走するノルウェイジャン・ブラック・メタルなのだが、あまり角が立たない(刺の無い)実にマイルドな音質。なのでノイジーで騒々しい感じでは無いのも前作同様、あくまで叙情性を全面に打ち出している。シンセによる浮遊感ある雰囲気作りや女性ソプラノ・ヴォーカルの貢献度、そしてアコギによるトラッドな味付け等、ここまでドラマ性に富んでいると、”ブラック・メタル的なオペラ”と言っても決して過言ではない。

あくまで筆者のイメージだが、深い森や精霊がイメージ出来そうな暗くも美しい楽曲の中で”美と醜”が鬩ぎ合い、精霊同士が対話している光景が脳裏に浮かんだ次第(笑)また、トラッド色が大爆発するフルートを導入したドラマティックなインスト・チューン”Alvedans”辺りも作風に幅が広がっている様に感じられ程良く順当に進化していると思う。

森、精霊、トラッド、叙情性、アトモスフェリック…と、このキーワードに反応する人でまだ聴いた事が無いのなら、是非一度試してみて欲しい作品である。

後にゴシック方面へスイッチするのだが、この時点でその片鱗は既に垣間見れるのも付け加えておこう。

 

Autumn Leaves: The Rebellion of Tides

2NDフル(1997)/From:ノルウェー/Style:ゴシック

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【Track】
1.An Autumn Leaf in the Circles of Time
2.Simply Dead
3.A Thousand Rivers
4.Mistress Tears
5.Carven
6.Spire
7.In Rememberance of a Shroud
8.Splendid Horror

【Review】
ツインギター体制になり新たに二人が参戦、6人編成になった。それに伴ってギターサウンドに厚みが増した。

シンセが主に主導していたメロディを今回はギターがリードするといった部分も聴けたり、メタリックに刻むリフでしっかりと力強い流れを作っていたりと、よりメタル・バンドとして手法が顕著に現れたとでも言えようか。結果、ダイナミックに緩急が付けられ起伏ある作風へと変化している。シンセの使い方も全面に出る部分と引っ込む所がより明確になりメリハリが生まれている。そこにガナるヴォーカルと耽美な女性ヴォーカルが共演する事によりゴシック・メタルっぽい流れが完成している。

勿論、ブラック・メタル色は減退、よりメタルとしてより健全(?)な方向へ向かっているのだが、耽美さとダイナミックさをバランス良く両立させた良作。単なるメタル化が進むだけでは終わらない個性を節々に感じさせる。#5の”Carven”辺りはプログレッシヴな展開があったりして、これはこれで面白い作風であり素晴らしい!

あまりこの2ND自体が言及される事はそれほど多く無かったように思うが、是非、再評価を!尚、最後の曲は打ち込みありのエレクトロっぽい装飾が施されたよくあるアレンジ。その後、暫く無音状態が続きアコギ、ピアノが主導し、徐々に倒錯していくシークレット曲が入っている。

 

All Little Devils

3RDフル(1999)/From:ノルウェー/Style:ゴシック

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【Track】
1.Days of Sodom
2.Rage of Fire
3.Victory
4.All Little Devils
5.Lunatic
6.Psycho Path
7.Shine for Me, Misery
8.Scenario
9.Dead Words

【Review】
ギターとキーボード奏者(因みに女性、後に薬物過剰摂取で他界したそうだ)が2人抜けて4人体制になって作成された作品。キーボード奏者はゲストとして【Grip Inc.】のWaldemar Sorychtaがゲストでプレイしている。また、今までNapalm Recordsからのリリースだったが、大手Nuclear Blastへと移籍した作品でもある。

音の方は前作を踏襲した上で、ストレートにメタルらしさを強調した様な作風である。シンセの使用率も以前よりグッと減り(とは言え、活躍、乱舞する部分は多々あるのだが)イメージ的によりソリッドなテクスチャーになった感じである。まぁ、乱暴に言い換えれば如何にもNuclear Blastからリリースされそうなクオリティの高い音である。

尚、少し幼さが残る艶かしい女性ヴォーカルが曲によっては、ほぼメインでフィーチャーされている。これにより耽美さとメタリックな感触が大幅に増して、より一層ゴシック・メタル、または女性ヴォーカルモノのメタルに近づいた様な作風となっている。また#5の”Lunatic”辺りは笑えるほどのメタル・チューンも聴ける。

ブラック・メタルからは完全に逸脱した作風と言えるが、普通に良質なメタル。

 

Lady Ablaze

EP(2000)/From:ノルウェー/Style:アトモスフェリック│ゴシック

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【Track】
1.Lady Ablaze
2.Abandon
3.Cabinet Bizarre
4.150 mp/h
5.Bortgang
【Review】
再びNapalm Recordsからリリースされているが、曲の方はどうやら93年から97年に掛けてレコーディングされた蔵出し音源をリミックスや録り直しされてリリースしたモノである。尚、これに伴ってPVも作られており、同タイトルのVHSもリリースもされていた様である。

浮遊感あるシンセが主導する初期の路線とも言えるタイトル曲”Lady Ablaze”やメタリックな路線である”Abandon”など大雑把ではあるが一通り【Dismal Euphony】のレパートリーを楽しめる作品となっている。しかしながらEPなので収録時間は短く、あくまでファン向けの作品といった所だろう。

尚、楽曲には全く関係ないが、女性ヴォーカルのAnja嬢、なんかムチっとしてて変なフェロモンが出てる。色気があってエロい!けしからん!ブヒッ!

 

Python Zero

4THフル(2001)/From:ノルウェー/Style:アヴァンギャルド

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【Track】
1.Critical Mass
2.Python Zero
3.Zentinel
4.Magma
5.Birth Reverse
6.Needle
7.Plasma Pool
8.Flyineye

【Review】
シンセ奏者が一人増え、5人体制になった。リリースは大手Nuclear Blastから。

アートワークが印象深く、大昔ここ日本でも一世風靡した(歳バレる!/笑)エリマキトカゲがドーーーンと居座り、バンドロゴも頭文字をとって”DE”と…なんだか近代的になっておりモダン化の洗礼を思いっ切り受けたようなアートワークである。

ブラックメタラーにとっては”見えている地雷臭”が半端ないアートワークと言えよう(笑)。まぁ、一般的には逆なのかもしれないが…。因みに今作がラストアルバムとなっている。

さて、楽曲の方はメタル色を大幅に上げており、ブラック・メタルの要素は殆ど無くなった。とは言え、それっぽいトレモロも入っているのだが、どちらかと言えばメロデスっぽいトレモロである。今回、デス・ヴォイスやガナりも随分と大人しく控え目で、男女混声ヴォーカルを主軸にした力強いミドル中心の曲展開を特色としている。更には曲によってはデジタル色が強かったり、程良くレパートリーがあったりするので割りと楽しく聴ける。故にタダの進化に留まらず個性派である事には変わりないし、間違いなく良作の部類であろう。

もう完全に脱ブラック・メタルである。3RDの時点でこうなる事は予想できたし、むしろ最初のEPと1STが異質だったって事で考えるとコレはコレで正しい進化だと思う。ブラック・メタルとしてでは無く、少しアヴァンギャルドなメタルとして考えるとスッと腑に落ちる…そんな作品であった。

個人的にはさすらいのレディ・ガンマン!的な#8の”Flyineye”が一番良かったな(笑)