In Torment I Die

Demo(2017)/From:ボスニア ヘルツェゴビナ/Style:Raw

【Track】
Side:Aのみ
1.Intro
2.Vampyric Death
3.Insanity
4.Desperation
5.In Torment I Die

【Review】
ボスニア ヘルツェゴビナの2人組ブラック・メタル、The Throatからカセットでリリースされていた全5曲17分程度のデモ・テープ。レーベルの紹介文から引用すると”Lightning-fast Black Metal with deranged vocals.Highly influenced by the Brazilian scene. Laden with melody and aggression.”との事。要するに「ブラジルのシーンに影響を受けた、高(光)速かつ狂ったヴォーカルをフィーチャーしたブラック・メタル!攻撃的だけどメロディーも忘れてないよ!」って事らしい。なんだか凄そうって事で購入。因みにバンド名である【Dogman】(犬男?)はブラジルの独りカルト・ブラック・メタル【Sovereign】のアルバム名が元ネタとなっている。

さて音の方だが、おおよそレーベル紹介文に準じた音が繰り広げられている様に思うが、聴く前に想像していた「なんだか凄いことになっているのでは?」といったイメージよりかは随分とマトモに聴こえた次第。実のところ、もっと強烈なものを想像してた。

Dogmanだけに「わんわん!」と犬が威嚇しまくっている短いイントロ(#1)から始まり、ノイジーなブラック・メタルへと繋いでいくのだが、主旋律であるメロディが思いの外、寒々しいトレモロを駆使しているので、Raw系にしてみては割と聴きやすく仕上がっている。この手では省かれがち(?)なベースも#3~#5に掛けてはハッキリと確認出来るので楽曲の軸がしっかりしており、骨抜きでグラグラな印象もない。また”ライトニング・ファスト”と表現されていたテンポは、そこまでライトニングな感じではないモノの程よく疾走している感じで案外フツーだったりする(ドラムのクレジットがあるがおそらく打ち込みではなかろうか?)。この様に演奏だけを切り取ると確かにノイジーではあるが、実はそこまで騒々しくないスタイルといえるかもしれない。

しかし、この音源、ひとたびヴォーカルが乗ると途端に騒々しくなるのだ。演奏を巻き込む程、リバーブが掛かりまくった音像で、ダンジョンの奥で錯乱した男がひたすら発狂している様な喚き声が強烈に鳴り響く。極端にリバーブが掛かっている為、単語一つも聴き取れないし、なんなら、喚いているだけで詞といった上等なモノなんてないのかもしれない。正にこの音源のタイトル通り”In Torment I Die”なのである。

そんなこんなで、ノイジーでありながら割と追いやすいメロディ、そして錯乱したヴォーカルによるシリアスなエゲツなさが融合している手法はアングラならではの音源だと言える。デモ音源故に小粒な感じは否めないし、一般的にオススメできるモノでもないが、こういうのも悪くない。