Storm Seeker

1STフル(2011)/From:ノルウェー/Style:プログレッシヴ

【Track】
1.The Blackmobile
2.Odin’s Tree
3.Skoal!
4.Dogsmacked
5.Aces
6.Windward
7.When Shuffled Off
8.Oil in Water
9.Storm Seeker
10.Flaskeskipper
11.The Sub Mariner

【Review】
【Borknagar】、【Lamented Souls】、元【Dimmu Borgir】、そして2017年に来日を果たした【Arcturus】のヴォーカリスト、ICS VortexことSimen Hestnæsのソロ・プロジェクト。大手Century Media Recordsからリリースされた。

【Dimmu Borgir】を脱退してから立ち上げたプロジェクトであり、レーベルの触れ込みではブラッケンド・プログレッシヴ・メタルとなっている。しかしながら”ブラッケンド”と付いているモノの音楽性自体はブラック・メタル的要素は殆ど無く、どちらかと言えばヴァイキング風味のプログレッシヴなHM/HRといった印象。

一般的には【Dimmu Borgir】在籍時のイメージが強いと思うが、そもそも彼が自分でフロントマンを務める【Lamented Souls】ではブラック・メタルとは関係のないサイケデリックなドゥーム・メタルプロジェクトを91年に結成しているという文脈で考えると、むしろ本質はこっち側にあるのかも知れない。

さて、今回のアルバムでは殆どの楽器を彼一人で担当しておりマルチプレイヤーっぷりを発揮しているが(現在は4人組になってる模様)、やはりSimenの独特な抑揚を有した歌声を余すところなく堪能できるのがやはり今作最大の魅力ではないだろうか。楽曲の路線としては色々と多彩にやっており穏やかでポップな曲から分厚いハードな楽曲まで幅広く演っているが、根底には北欧ヴァイキング信仰に基づくノルウェーの伝統が染み込んだ音源と言える。

Simen自身もメンバーである3RD以降の【Borknagar】の路線に割と近いというか、向いている方向は概ね同質のモノかと思う。楽曲全般に漂っている古代北欧に思いを馳せている様な感覚や奏でられるギターリフのテイスト一つ取ってみても、その音から類似性を見出すことが出来る。

尚、本作の肝であるヴォーカル・パートはディストーションの掛かったヴォイスは完全封印しており、全編クリーンヴォイスを披露。個性を剥き出した往年のパワフルさは影に潜み、熟成と共に技巧派になった気もするし、角が取れて丸くなり些かソフトになった印象だが独特の抑揚や歌いまわしは健在で紛うことなきSimenだ(当たり前だが/笑)!Love!

因みに彼の歌いまわしや、独特の抑揚が一番冴え渡っているのは【Borknagar】の3RDである”The Archaic Course”が究極だと思っているので、それを超えることは無いのだが(アレを超えるのは不可能だと思ってる)また彼の歌声がメインで聴けるバンドが一つ増えた、それだけで筆者は嬉しいのである。