Mütiilation

Vampires of Black Imperial Blood

1STフル(1995/2001)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
1.Magical Shadows of a Tragic Past
2.Born Under the Master’s Spell
3.Ravens of My Funeral
4.Black Imperial Blood
5.Eternal Empire of Majesty Death
6.Transylvania
7.Under Ardailles Night
8.Tears of a Melancholic Vampire

【Review】
LLNの筆頭であるMeyhna’chが演っているブラック・メタル。基本的にMeyhna’chによる独りブラックだがこの音源ではMordredなる人物がベースを担当。また二人のゲストドラマーを迎え製作された。1995年にDrakkar Productionsからリリースされていた音源を2001年にDrakkar Vinlandから限定500枚で再発。

さて本作は【Mütiilation】の数ある作品の中でも名作として名高い作品の一つ。プリミティヴでありながら憂いをたっぷり含んだ、これぞ【Mütiilation】節とも言える#1”Magical Shadows of a Tragic Past”からして名曲だし、その曲以外も実に粒の揃った良曲で構成された聴き所満載の傑作。強烈な地下臭をベースに吸血鬼に纏わる絶望と憂いを綴った様な内容でありプリミティヴに理解がある人にはタマラナイ逸品なのではないだろうか。

元々、インナーサークルに触発されて音楽活動を始めたバックグラウンドがあるそうなので、必然的にクラッシックなブラック・メタルにインスパイアされた楽曲群と言えるのだが、単なるフォロワーに終わらずキッチリと独自の色を打ち出している点が素晴らしい。例えばメロディの湿り具合だったり、切ない憂いを醸し出す部分であったりと独特の空気感を備え持ち【Mütiilation】節と言える個性へと昇華している。Great!

 

Vampires of Black Imperial Blood

ブート盤(2005)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
1.Magical Shadows of a Tragic Past
2.Black Imperial Blood
3.Eternal Empire of Majesty Death
4.Tears of a Melancholic Vampire
5.Transylvania
6.Ravens of My Funeral
7.Under Ardailles Night
8.Forests of an Evil Dream
9.Travels to Sadness, Hate and Depression
10.The Rite of Darkness (Bathory cover)

【Review】
入手困難なLLN関連の音源を白昼堂々と(?)ブート・リリースしていたTragic Empire Rexなる謎のレーベルからリリースされた。しかも”リマスター”されているというオマケ付き。元ネタはEnd All Life Productionsが1999年に限定100枚でリリースしたアナログ・ヴァージョンがベースになっており、それをリマスターしたモノである。元のEAL盤は所有しておらず聴いたことがないので比べどう変わったのか?という部分に関しては残念ながら触れられないのであしからず(EAL盤は曲数も違うし曲順も違いオリジナルと些か仕様が異なっている)。

ただ先にレビューしたDrakkar VinlandからリリースされたCD盤とで比べてみると音質的にドタバタ度が増しており逆に聴き辛くなっている。聴き心地も感触も結構違って聴こえるのでほぼ別物と捉えても良さそうな仕上がりである。オリジナルは少し丸い音質だったのに対して本作は刺々しく苛烈になっている。それによって楽曲の輪郭がオリジナルほどハッキリせず初期衝動のみが増幅された様な音質になっている。

好き嫌いは別としてこちらはブートなのでオリジナル盤推奨。ゆえにコレクター向け。

 

Remains of a Ruined, Dead, Cursed Soul

2NDフル(1999/2002)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
-Side A-
1.Suffer the Gestalt
2.To the Memory of the Dark Countess
3.Possessed and Immortal
-Side B-
4.Through the Funeral Maelstrom of Evil
5.Travels to Sadness, Hate & Depression
6.The Fear That Freeze
7.Holocaust in Mourning Dawn (French version)

【Review】
今回レビューするのはEnd All Life Productionsからリリースされた限定400枚のアナログ盤。ちなみにCD盤はDrakkar Productionsより1999年にリリースされている。内容は#1-#5が1993年に製作されたがリリースされなかった幻の音源 “Evil: The Gestalt of Abomination”に1996年に作られた2曲を追加したモノである。

このアルバムの最大の聴き所は間違いなく#1-#5である。ブラック・メタル史上、最上級の狂気が炸裂する初っ端の#1”Suffer the Gestalt”がとにかく強烈。「これヤバイな…」という呟きが思わず出てしまいそうになる曲もそうそう無いはずだ(笑)個人的に【Mütiilation】の代表曲だと思っている。また#4”Through the Funeral Maelstrom of Evil”も実に素晴らしい!

全体的に劣悪な音質とズレまくる演奏(特にリズム隊)もヤバイのだが、Meyhna’chのヴォーカルワークが邪悪な部分を全力で曝け出しており狂気じみたモノが否が応にも伝わってくる勢いだ。一方で#6-#7に関してはドラムが打ち込みに変わっており、意外と普通のブラック・メタルで若干拍子抜けするが、#1-#5に関しては神懸り的。オンボロなのにカッコイイ!プリミティヴの名盤。Great!

 

Evil: The Gestalt of Abomination

ブート盤(2004)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
1.Suffer the Gestalt
2.To the Memory of the Dark Countess
3.Possessed and Immortal
4.Through the Funeral Maelstrom of Evil
5.Travels to Sadness, Hate & Depression
6.The Fear That Freeze
7.Holocaust in Mourning Dawn (French version)
8.Dawn of the Fallen Angel
9.Under the Fullmoon

【Review】
またしてもTragic Empire Rexからリリースされたブート盤。単純にオフィシャルでリリースされた”Remains of a Ruined, Dead, Cursed Soul”にボーナストラックが2曲追加されている。こちらはリマスターは施されておらず音質に関しては手を加えられた形跡は確認できない。追加された2曲は何れもなかなかGoodな出来栄え。

#8”Dawn of the Fallen Angel”は不穏な空気が秀逸で焦燥感を煽るも割とメロディアスで小粒な疾走曲、#9はMeyhna’chの気だるくも狂気に満ちたヴォーカルワークが遺憾なく発揮された病的極まりない楽曲。ブートなのでコレクター向け。

 

Black Millenium (Grimly Reborn)

3RDフル(2001)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
1.The Eggs of Melancholy
2.New False Prophet
3.The Hanged Priest
4.Inferi Ira Ductus
5.Curse My Funeral
6.A Dream
7.Black Millenium
8.No Mercy for Humans
9.Black as Lead and Death
10.Outro

【Review】
Drakkar Productionsからリリースされた。

どう考えても健全ではない空ろな表情で空(くう)を見つめるMeyhna’chの表情がちゃんと音を物語っており閉鎖的な雰囲気が漂うアルバムである。音の方向性はブラック・メタルとしてややストレートな方向へ進んだ様だ。尚、2NDで聴かれた過剰なまでのぶっ壊れた病的さは然程感じ取れなくなっているので、その辺を期待した人ならひょっとして肩透かしかもしれない。誤解を生む表現かもしれないが、如何わしさが減少し小奇麗にまとまっているといった印象。しかしながら根底にある本質的な部分に些かのブレも無く安心して身を委ねることが出来るアルバムかと思う。

個人的にこのアルバムの魅力を大幅に底上げしているのは#2”New False Prophet”であり、【Mütiilation】の楽曲の中でも1,2を争う名曲だと思っている。出だしの病的なリフから一転して憂いたっぷりの疾走へと繋がっていく構成であり初期【Mütiilation】の魅力が手堅く凝縮されている一曲だと思う。

その他も割と粒揃いの曲が揃っているので【Mütiilation】を知る最初の一歩、言わば入門に最適だと思われる。Great!

 

Black Millenium (Grimly Reborn)

ブート盤(?)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
1.The Eggs of Melancholy
2.New False Prophet
3.The Hanged Priest
4.Inferi Ira Ductus
5.Curse My Funeral
6.A Dream
7.Black Millenium
8.No Mercy for Humans
9.Black as Lead and Death
10.Outro
11.New False Prophet(Live)
12.Transylvania(Live)
13.Eggs Of Melancholy(Live)
14.To The Memory Of The Dark Countess(Live)
15.Born Under The Master’s Spell(Live)

【Review】
おなじみTragic Empire Rexからリリースされたブート盤。ジャケの写真が微妙に変わっており脱力感がより一層際立っているナイスショットである(笑)尚、オリジナルの楽曲に加えLive音源が5曲追加されている。このLive音源、録音レベルが極端に小さく、いかにもブートという音質なのでコレクター以外は無理に入手する必要は無いだろう。

 

Majestas Leprosus

4TH(2003)/From:ブラック・メタル/Style:プリミティヴ

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【Track】
1.Introducing the Plague
2.Tormenting My Nights
3.Destroy Your Life for Satan
4.Bitterness Bloodred
5.Majestas Leprosus
6.Beyond the Decay of Time and Flies
7.The Ugliness Inside
8.If Those Walls Could Speak
9.Words of Evil

【Review】
Ordealis Recordsからリリースされた。アルバムとしては通産4作目となる。

【Mütiilation】の苛烈な部分を強調したかの様な作風で【Mütiilation】史上屈指の喧しさを誇る。また、以前までの”憂い”はあからさまには表立っておらず、どちらかと言うと邪悪さに徹している様なバランスになっている。それに伴って、冷淡なブラスト(打ち込み)主体で突っ走り、無機質でストレートな展開が中心。リフの随所に不協和音が盛り込まれており不穏さを煽る路線へとジワジワ歩み寄っている印象を受ける。それらは#3”Destroy Your Life for Satan”にて最も顕著に現れており、今作の性質を端的に現している楽曲だと言える。また、Meyhna’chのヴォーカル・パフォーマンスも邪悪さと凄みが増しており良い感じで脂が乗ってきている。

初期とはまた違った音楽性で徐々に形を変えてはいるモノの病的なものは変わらず真価が失われているワケではない。個人的には突出した名曲は無いが全体的にムラがなくしっかりと平均化され安定した良曲が詰まったアルバムといった印象。Great!

 

1992-2002 Ten Years of Depressive Destruction

Comp(2003)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
Disc 1
Side A
1.Black Winds of War (1992)
2.Blasphemous Suicide (1992)
3.Desecrate Jesus’ Name (1992-93)
4.As the Night Falls (1992-93)
5.Sorcerer’s Land (1992-93)
Side B
6.Under the Full Moon (1992-93)
7.Dawn of the Fallen Angel (non-metal version) (1993)
8.Forests of an Evil Dream (1994)
9.Last Night Among Those Times (1994)
10.Holocaust in Mourning Dawn (drummer on vocals) (1994)

Disc 2
Side A
1.The Rite of Darkness (Bathory cover) (1995)
2.Dawn of the Fallen Angel (1996)
3.Glorious Evil Time (1999)
4.Black Millenium (2000)
5.Possessed (Venom cover) (2001)
Side B
6.To the Memory of the Dark Countess (live 07/07/01)
7.Born Under the Master’s Spell (live 07/07/01)
8.No Mercy for Humans (live 07/07/01)
9.Desecrate Jesus’ Name (live 07/07/01)
10.Black as Lead and Death (live 07/07/01)

【Review】
End All Life Productionsからアナログ2枚組み(限定666枚)でリリースされたデモ/レアトラック/Live音源を収録した寄せ集め盤(ポスター付き)。初期の【Mütiilation】をお腹一杯楽しめるオフィシャル音源である。

ブートに頼らず手っ取り早く【Mütiilation】の起源を知るのには打って付けだが音質は極悪を極め、スレスレでカッスカスの酷い音質(笑)故に完全なるマニア向けであることは言うまでもない。

基本的に1993年までの音源は【Venom】や【Bathory】をカヴァーしている事から分かるようにアングラ・スラッシュ・メタルをベースにしたよくあるテンプレ的楽曲のオンパレードといった所であるが、ある時期を境に(1994年辺り)からグッと従来の【Mütiilation】スタイルを確立しつつある。だからといって資料的価値のある音源以上のモノがあるとは思えない内容。因みにラストは2001年7月7日にドイツのゲルメンドルフで行われたLive音源。

 

Rattenkönig

5TH(2005)/From:フランス/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.That Night When I Died
2.Testimony of a Sick Brain
3.The Bitter Taste of Emotional Void
4.Black Coma
5.The Pact (The Eye of the Jackal)
6.The Ecstatic Spiral to Hell
7.I, Satan’s Carrion
8.Rattenkönig

【Review】
Ordealis Recordsからのリリース。

ネズミの干物を弄んだアートワークが非常に強烈だが、今作の楽曲のイメージを的確に表しており素晴らしいジャケットだと個人的に感心したのだが…そう思うのは筆者だけだろうか?

音の方はモゴモゴと低い位置で蠢くような質感であり気味の悪さを強調した非常にダークな作品に仕上がっている。初期の様な憂いのあるメロディは見る影も無くネクロな方向へと進んでいる。またMeyhna’chのヴォーカルも以前にも増して呪詛的要素が大きくなっており、例えるならばネクロマンサーの様である(笑)不潔で暗い地下下水道の一角でネズミの干物を用い呪いを掛けている様な…そんな情景すらイメージできる。

トーンが非常にダークなのでコレまでの路線よりかは些か地味に感じるのだが、よく聴くとリフもしっかりと練られており闇は確実に下方向へと深まっている。何と言うか横の広がりというよりかは縦の広がりを感じ、味わい深くそしてDeepな音だ。また#1のオープニングと#8のエンディングがリンクしている部分などちょっとした小技も効いててニクイ。

間違いなく【Mütiilation】の中で最も完成度が高い音源だろう。何故かあんまり評判は良くないみたいだが…ここは胸を張って書こう。間違い無く”ブラック・メタルの傑作”であると。Great!

 

Sorrow Galaxies

6TH(2007/2013)/From:フランス/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Cosmic Seeds of Anger & Dementia
2.The Coffin of Lost Innocence
3.Cesium Syndrome 86
4.Acceptance of My Decay

【Review】
今回、レビューするのはDark Adversary Productionsから2013年に再発リリースしたモノである。オリジナルは2007年にEnd All Life Productionsからリリースされていた。

今までは打ち込みドラムの作品が続いていたのだが今回はセッションドラマーをちゃんと起用しての作品。因みにこの作品、Vergile G.(誰??)なる人物に捧げられたアルバムなのだそうだ。曲数を見ても分かるように今回は一曲10分程度の尺を持った大作志向、4曲で44分弱ある。

今まで通りの【Mütiilation】らしい暗黒描写を散りばめながら、さりげなくメランコリック、それに伴ってリフの多様化によってもたらされる展開の充実、そして何よりも凄みが増した演奏などメタルとして大幅にレベルアップ。#3”Cesium Syndrome 86”のモロ疾走型ブラックチューンと割と前傾姿勢で攻撃的な楽曲を演っており【Mütiilation】からすれば新機軸(これがまたカッコイイ)。

【Mütiilation】の成長フェーズがまた一つ繰り上がった作品と言わざるを得ない。丹念かつ濃密に紡がれていく構成にもう単なるプリミティヴだとは言わせない説得力のある芸術作品。縦の方向への深度をキープしつつ、横の広がりを感じさせるサウンドは流石。Great!

 

Black Wind Of War

ブート盤(?)/From:フランス/Style:プリミティヴ

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【Track】
Rites Through The Twilight Of Hell
1.Millenium Of A New Kingdom
2.Born In Malediction
3.Black Wind Of War
4.Cursed By The Inquisition
5.Under The Fullmoon
6.Blasphemous Suicide
7.Sorceror’s Land
Satanist Styrken
8.Skoger Av Onde Drom
9.My Last Night During Those Times
10.Eternal Empire Of Majesty Death
11.Infernal Holocaust
Ceremony Of Black Cult
12.Intro
13.Desecrate Jesus’ Name
14.As The Night Falls
15.Sorceror’s Land
16.Under The Fullmoon

【Review】
カルトなブラック・メタルのブートをリリースしている謎のレーベルGoat Moon Worship Recordsからリリースされている。このブート・レーベルがリリースする音源を見ているとあざといまでにターゲット層が絞られており何とも憎たらしい(笑)また、アートワークにあるバンド・ロゴも意図があるのかどうか定かでは無いがミスプリがあり、なんだかなぁ…と思う。

さて、今作は入手困難なデモ音源等が詰め込まれているコレクターアイテムの一つである。内訳は”Rites Through The Twilight Of Hell””Satanist Styrken””Ceremony Of Black Cult”の3作品を一つにまとめたモノ。

Rites Through The Twilight Of Hell(1993)
この時点では3人編成であった。一応、ベースプレイヤーもいるみたいだが音に反映されてるか?これ(笑)ザクザクとオールドスクールに刻むリフにザリザリした掻き鳴らしリフ、そしてボテボテとドタバタ感強めのドラムが奥のほうで鳴り響く崩壊ブラックを展開。ただMeyhna’chのヴォーカルだけは相変わらず狂気を感じられ、この時点から凄まじい。如何にもアンダーグラウンドなデモ音源といった所だろう。ヤケッパチ度が凄い。

Satanist Styrken(1994)
ベースプレイヤーが抜けて二人編成になっている。音圧を全く感じない隣の部屋から漏れてる音みたいな音源。ただ崩壊とまでは行かずある程度の整合性は感じられる。とにかく音が薄く録音レベルが小さい。楽曲はどこかで聴いた事ある様なアングラ暗黒メタルのテンプレみたいで特に面白みが無い音源だった。

Ceremony Of Black Cult(1993)
Rites Through The Twilight Of Hellの時と同じメンツで作られたデモ音源、以前よりかは音圧があり整合感も増している。1STの頃の【Mütiilation】に近い音と言え、原型みたいなモノは出来上がっているように思う。まだ【Mütiilation】節には到達していないモノの片鱗はしっかりと感じられ、なかなか興味深い音源ではなかろうか?トレモロの使用率が格段に上がっているのもポイントだろう。1STに収録されていても違和感は無い程度のクオリティはある。