Peste Noire

La sanie des siècles
– panégyrique de la dégénérescence

1STフル(2006)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

pestenoire_1st

【Track】
1.Nous sommes fanés
2.Le mort joyeux
3.Laus tibi Domine
4.Spleen
5.Phalènes et pestilence – salvatrice averse
6.Retour de flamme (Hooligan Black Metal)
7.Dueil angoisseus (Christine de Pisan, 1362-1431)
8.Des médecins malades et des saints séquestrés

【Review】
Famine率いる変種ブラック・メタル1ST。【Dor Daedeloth】から【Peste Noire】と名を改めたそうだ。また、今回の作品では【Alcest】のNeigeがゲストで参加している模様。

他サイト様のレビューを読んでいると無性に聴きたくなった逸品(笑)概ね、マニアの間では高評価だったのと変わり種という所に惹かれた次第。早速、入手出来る内に入手したのであった。

さて、音源の方はこれがまた非常にロマンス溢れるメロディアスな泣きのギターで覆い尽くされた素晴らしい音源である。ブラック・メタルたる部分はヴォーカルの部分に主に感じられるのだが、核となる楽曲はオーセンティックなHR/HMが根底にある。そこにブラック・メタル的パートが添えられている様な感覚であろうか?随所にクリーンギターによる流麗な旋律、そして妙にエモーショナルに濡れるギターソロがねっとりと絡む。しかも、ブラック・メタルのドロドロした雰囲気をしっかりと作りながらも、妙な気品が漂っているのが面白い。なるほど、これは話題になるなと、実感した次第。非常にアヴァンギャルドな作風だが、決して独りよがりな作風に陥っていない。聴いていて感じたのはブラック・メタルとしては異色なだけで、逆に凡百のブラック・メタルよりか幾分、一般的では無いか?…と思うのだが…どうだろう?まぁ、当然だがアンダー・グラウンドに基づく音源なワケだが。

今度、試しに嫁にでも聴かせてみよう。(嫁のスペック:その昔、某CDショップで働いていた80年台ミーハーなHR/HM好き。ある程度のブラック・メタル耐性はあるかと思う。ある程度は/笑)

 

Folkfuck folie

2NDフル(2007)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

pestenoire_2nd

【Track】
1.L’envol du grabataire (ode à famine)
2.Chute pour une culbute
3.La fin del secle
4.D’un vilain
5.Condamné à la pondaison (légende funèbre)
6.La césarienne
7.Maleiçon
8.Amour ne m’amoit ne je li
9.Psaume IV
10.Extrait radiophonique d’Antonin Artaud
11.Folkfuck folie
12.Paysage mauvais

【Review】
変種ブラック第二弾。今作もNeige参加作品。

前作にも増してアンダー・グラウンドに潜っていったかの如く、音質、作風共に怪しさに満ちている。チューニングが狂っている(弦が緩んでる?)様な気持ち悪い不協和音的なギターリフ、比率は減ったモノの時折、狂おしい速弾きにメランコリックなソロが絡む。吹っ切れた様な狂気が全面に押し出されており、グチャっと捻り潰した様な音をしながらも、決して気品を忘れない妙な聴き心地を提供してくれる。前作の聴き易さをかなぐり捨てて実に気狂いブラック・メタル的なのである。

うん、これはまともじゃない、普通に狂っとる(笑)

衝動性溢れる勢いもどこかハードコアに通じているモノが感じられ、前作にも増して勢いが増しているし、ソレを裏付けるような#6なんかはオーソドックスなスラッシュ・リフを大胆に盛り込んでいたりする。また、#7の悪魔を召喚しているかの如くスポークン・ワードにしっかり邪悪な印象付けている点も見逃せないだろう。中々の変種振りではあるが、聴き応えとしてはブラック・メタルのソレに他ならない絶妙なバランス。個性の塊だが、単なる色モノに陥らない所に只ならぬセンスを感じる。しかも、ギラギラと濁った輝きを放っている(笑)聴き易さといった観点では前作の方に軍配が上がるが、ブラック・メタルとして考えるとこのアルバムでは無いだろうか?

徹底したアングラ魂もまた素晴らしい!やはり只者では無い。

 

Ballade cuntre lo anemi Francor

3RDフル(2009)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

pestenoire_3rd

【Track】
1.Neire peste
2.La mesniee mordrissoire
3.Ballade cuntre les anemis de la France – de François Villon
4.Concerto pour cloportes
5.La France bouge – par K.P.N. (chant de l’Action française)
6.A la mortaille!
7.Vespre
8.Rance Black Metal de France
9.Requiem pour Nioka (à un berger-allemand)
10.Soleils couchants – de Verlaine

【Review】
変種ブラック第三弾。今作ではNeigeは脱退した模様。

これから始まる目眩く変種ワールドに胸を躍らせ、妙に期待感を煽ってくれるオープニングから一転、怪しい軍歌風アカペラ・コーラスが入り込み、より一層、怪しさが加速する。…この様に冒頭からして怪作っぷりが伺える(笑)今作は、前作にも増してアバンギャルドな方向性へ大手を振って堂々と行進している様な思いっきりの良い作風。前作の延長線上であるモノの、今作はミドルチューンで構成されているアルバムなのでより一層、珍妙さがストレートに伝わる作風となっている。アコースティックに奏でるトラディショナルな側面があったり、軍歌風であったり、女性コーラスを交えた背筋が凍りそうな不気味さがあったり、ハーモニカが入ってたりと…怪しさの幅が実に広い(笑)何処か歪でモノクロームに包まれたようなレトロな感触が随所に感じられるのも特徴の一つだろうか?メロディを全面に押し出しているのが特徴だが、怪しい所は徹底して怪しく仕上げている。また、軍歌風な展開もある事から、NSブラック・メタル風の味わいを仄かに感じさせる。(彼らにそういった思想があるのかどうかは知らない)ともかく、ブラック・メタルの原型がまだハッキリと聴けるのは実はこのアルバムで最後だったりする。

怪しく珍妙なので”音を楽しむ”、そう正に”音楽”としての根本的な醍醐味を教えてくれるかもしれない…そんな音源である(大袈裟か?/笑)

 

L’Ordure à l’état Pur

4THフル(2011)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

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【Track】
1.Casse, pêches, fractures et traditions
2.Cochon carotte et les sœurs crotte
3.J’avais rêvé du nord
4.Sale Famine von Valfoutre
5.La condi hu

【Review】
変種ブラック第四弾。

アヴァンギャルドな作風として大前進し、何よりも大作志向になった。#3なんかは20分ある。ウジェーヌ・ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」のパロディ・ジャケもまた眩しい(笑)正にフランス革命もとい、ブラック・メタル革命である。とは言えブラック・メタルたる要素は随所で聴けるモノの大幅に減少、殆どパンク/ハードコアのノリで突き進む良い意味でアホアホ音源である(笑)パリジェンヌ!ってな具合のアコーディオンで奏でる優雅な展開や話題になっていたニワトリの声をヴォーカルでやったり、四つ打ちビートを展開してみたり、ジャズの要素を入れたりと、アヴァンギャルドさが止まらない。もう演りたい放題である(笑)もはや、ブラック・メタルというチッポケな器から完全に逸脱しているとしか思えない変種っぷり。前作が気狂いブラックだとすれば、今回はアヴァンギャルドな闇鍋パンク/ハードコアである。ここまでくるとぐうの音も出ない。音楽として大変面白い事をやっているのだが、ブラック・メタルとしては完全にヤリ過ぎの域で、これはどうなの?と思ってしまう。まぁ、フロントマンであるFamineの中では既にブラック・メタルでは無いのかもしれないが(笑)ブラック・メタルは勿論、根本的な音楽の観点から見ても歪な作品である事は明白。

唯一無二の怪作、ここに極まるといったところであろう。

 

Peste Noire(S/T)

5THフル(2013)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

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【Track】
1.Le retour de la peste
2.Démonarque
3.La bêche et l’épée contre l’usurier
4.Niquez vos villes
5.Le clebs noir de Pontgibaud
6.Ode
7.La blonde
8.Moins trente degrés Celsius

【Review】
豪華なA5ブックレッドが眩しすぎる。意外にしっかり出来ており、ムダに豪華である(笑)ココに来てセルフタイトルを持ってくる辺り、特別な思い入れでもあるんだろうか?

前作に比べるとブラック・メタルさがほんの少し戻ってきた様に思うが、色々と闇鍋的にブチ込む気狂いさは3RD以降全く変わってない。フランスの伝統的な民謡(?)をバック・グラウンドにし暴れまくっている印象である(笑)アコーディオンやトランペットやら飛び道具を盛り込み全般的にトラディショナルな感覚がこれまで以上に目立つ。また、ブラストしたり、ミドル・パートがあったりと緩急を付けながら揺さぶりをかけ、ドラマティック(…と言えるのだろうか/笑)に曲が展開していくのでプログレッシヴな感触も特徴的である。闇鍋っぷりが高次元で融合しているのか、はたまた只の変態なのか、もうワケが分からない。天才と狂気は紙一重とよく言うが、全くそれに当て嵌まる好例だと思う。ただ一つ言えるのは音楽として相変わらず面白いという事である。このバンドを聴き終えて、ストレートな直球ブラック・メタルを聴くとそのピュア(?)さが痛い程良く伝わり何故かホッとする(笑)

こういった灰汁が強く個性ある路線は大好物なので、今後突き詰めて爆進して欲しい。ただ、ネタの方は大丈夫か?と要らぬ心配をしてみる(笑)

 

Les démos

Demo音源集(2012)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

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【Track】
Disk-1
Aryan Supremacy demo 2001
1.Royaume d’occident
2.Les camps de la mort
3.Gisant dans la putréfaction
4.Aryan Supremacy
Mémoire païenne demo 2002
5.Gisant dans la putréfaction
6.Aryan Supremacy
Macabre transcendance… demo 2002
7.Intro
8.Le mort joyeux
9.Prélude
10.666 millions d’esclaves et de déchets
11.Spleen
12.J’éjaculerai sur vos décombres fumants
2005 Ver
13.Retour de flamme (Hooligan Black Metal)
Valfunde (split EP /Amesoeurs)
14.Valfunde – Hôpital
15.Valfunde – “Sérénade” de Verlaine

Disk-2
Phalènes et pestilence – salvatrice averse demo 2003
1.Phalènes et pestilence – salvatrice averse
2005 Ver
2.Dueil angoisseus (Christine de Pisan, 1362-1431)
3.L’hymne en l’honneur de la peste
4.Phalènes et pestilence

【Review】

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内容物一欄

デモ音源集。豪華Box仕様でCD2枚組、ワッペン、ブックレットが入っている限定1000枚モノ。アナログリリース音源が中心だが未収録の2005年ヴァージョンの曲が入っているのでコレクター向け位置付けの音源である。やはり、デモ音源と言うだけあってどの音源も音がヨレヨレだが剥き出しの邪悪さがある。特にDisk-1はブラック・メタル・ファン垂涎モノと言うべき逸品。熱心にアナログ音源まで集めているマニアの方は別として、ブラック・メタルファンならDisk-1だけでも聴くべき作品である。

Disk-1”Peste”

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Aryan Supremacy(2001)#1-#4
最初期は荒涼感全開のプリミティヴ・ブラックを演っており、今のスタイルから想像出来ない程の定番型を演っている。音は酷いが確実にRaw│プリミティヴなブラック・メタルとしての満足感が得られる音源となっている。
Mémoire païenne(2002)#5-#6
この辺りからグレゴリオ聖歌っぽいサンプリングや雰囲気を盛り込んでおり宗教的フレーバーが際立っている。得体のしれない不気味さと邪悪さ満ち溢れており、音を聴く限り、ブラック・メタルとして2002年音源が一番脂が乗っている時期だと思われる。コレは良い音源!なんや普通に演ってた方が良かったんじゃ!?と思える(思った/笑)音源である。音は酷いが実に素晴らしい!
Macabre transcendance…(2002)#7-#12
ココに来て、遂に気狂いさが表立ってきた。鼓膜を破らんとする超音波絶叫が絶望と邪悪さを醸し出し、オーセンティックなHR/HMをベースとするメランコリックなギターソロを入れ込んでいる。独自の美意識とブラック・メタルが放つ邪悪な要素がぶつかり合い、【Peste Noire】としての音が確立され1STへ完全にリンクしていく音源である。これまた音が酷いのだが、この音でなければダメだと断言する。ホント、異常に良い!!
2005 Ver(2005)#13
1ST収録のRetour de flamme (Hooligan Black Metal)の2005年ヴァージョンである。異常なまでに迫力が増しており実に生々しい!1ST収録曲より断然こっちだろう。Rawな迫力、半端なし!
Valfunde (split EP /Amesoeurs)#14-#15(2007)
【Amesoeurs】とのスプリットEPから収録。今回のなかで音、曲と共に一番まともと言えるだろうか。ゆったりとし穏やかな流れの中、何処と無く寂しい楽曲。そこに狂気が潜む…最近の【Peste Noire】節の一端が垣間見れる音源である。この直前までが強烈過ぎたので些かインパクト不足が否めない。

Disk-2”Noire”

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Phalènes et pestilence – salvatrice averse(2003)#1(3曲分)
トラックは分かれていないが3曲で構成されている。美意識の向上か、クリーンギターをしっとりと絡ませたり、ギターソロがあったりする一方で、宗教色があったりとブラック・メタル的な怪しさを垣間見れる。気狂い一歩手前位で留まっておりこの美意識的な感覚は同郷の【Mystic Forest】っぽくもある。
2005 Ver(2005)#2-#4
大作志向の3曲、基本的に儚さと暗さが同居する路線である。美意識と突進力、美と醜が表裏一体となった楽曲が中心。緩急が付いた大作で、やたらと長尺だが気狂いさ加減は控えめであり非常に真面目に作られている感じである(笑)故に強烈なインパクトは少ないが素晴らしい充実感が得られる音源と言える。#4の儚さと哀愁が入り乱れるメランコリックな旋律が胸を打つ。素晴らしい!

初期音源であるDisk-1が最大の聴き所であり、デモと言えど侮るべからず。【Peste Noire】のブラック・メタルたる部分のみを凝縮し抽出された非常に意味のある音源集である。美意識と展開の妙が冴えるDisk-2もやはり素晴らしいが、ブラック・メタルの旨味が味わえるのは確実にDisk-1であろう。限定モノで今となっては入手は難しいかもしれないが、見かけたら即ゲットでOKかと思う。あくまでRawプリミティヴ耐性/理解がある方限定だが。個人的にDisk-1は悶絶盤だった。

 

La Chaise-Dyable

6THフル(2015)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

pestenoire_6th

【Track】
1.Avant le putsch
2.Le dernier putsch
3.Payés sur la bête
4.Le Diable existe
5.A La Chaise-Dyable
6.Quand je bois du vin
7.Dans ma nuit (2nd version)

【Review】
変わり種三人組ブラック・メタル、アルバム6作目。自身のレーベルLa Mesnie Herlequinより限定2000枚でリリース。

Famineのやる気のないレーベル運営の為、買うのに妙な制限が掛かっており入手する事自体が難しいらしい…(一日に20枚しか出荷しないとの事)筆者はタマタマ、オフィシャルで買えたので特に意識することなくカートにブチ込み普通にGet。(運が良かった?)

さて、音の方は口笛やらアコーディオンやら女性ヴォーカルが部分的に絡む相変わらずの路線。あくまでメロディアスな展開を身上とし、アルペジオやトレモロを織り交ぜたり、フォーク・チューンがあったりと総じて優雅な香りを漂わす反面、アンニュイな感覚もまた同様に香り立つ。(…と表現していいのかよくワカラン/笑)そこに下品かつヤケクソ気味になっているようなFamineの泥酔ヴォーカルが楽曲を華麗に穢している(笑)たまに【Shining(Swe)】のKvarforthっぽい唱法にも聴こえるっちゃー聴こえるかも。

のっけからカントリー風(?)な短い楽曲が始まったり、アコーディオンの響きが優雅な旋律を奏でる一方で、泥酔ヴォーカルが喚き散らす”田舎の酔っぱらい風チューン”である#7辺りは中々インパクトあり。

ただ期待した程、楽曲の変態度が上がっておらず意外とおとなしく演っているように聴こえるのは、きっと筆者の耳が麻痺しているのに違いない(笑)やはり、一般的にはブラック・メタルの枠には全く収まっていない楽曲/路線に違いはない。初めて聴いた時の様な変なインパクトや妙な新鮮さは薄れつつあるモノのスタイルとして確立されているので一応安心感(?)みたいなモノはある。安定した灰汁と個性とでも言えようか。

※音源と全く関係ない話だが、歌詞カードにコラージュされたフォトギャラリーの中に何匹か猫が写ってるんだが、その内の一匹が毛並みと体格、しっぽの長さまで筆者が飼ってる猫そっくり(笑)