Urfaust

1STフル(2003/2005)/From:フランス/Style:ブラック・メタル

【Track】
1.Putréfiance Rédemptrice
2.Nuit de Walpurgis
3.Epitaphe

【Review】
DarkkarmaとSpica率いる二人組みブラック・メタル。End All Life ProductionsからリリースされたVinyl盤(2003)を同レーベルがCD化(2005)。泣く子も黙る、もとい泣く子がもっと泣く傑作。因みに【S.V.E.S.T.】とは”Satanas Vobiscum et Spiritum Tuo”の略称だそうで、なんのことやらとGoogle翻訳に引っ掛けてみるとラテン語で「あなたとあなたの精神とサタン」と何やら哲学っぽい言葉に訳される。

さておき、音の方は輪郭不明瞭ながら黒い波動が渦巻くノイジーなギターが神聖なるモノを一切寄せ付けないが如く防壁を築き上げ、ドカドカと徹底的に叩きつけるRawなドラムで完全武装、混沌とした渦の中でモミクチャにされる事請け合いなドス黒い逸品。そういった極めてノイジーでダーティな作風の中にも確実に感じ取れる深く奥行きある音と畏怖を感じずにはいられない世界観が傑作たる所以だ。

アナログ的Lo-Fiな音質はごく一般的なメタルからドンと突き放したような、ブラック・メタルが持つべき異端さを強めており理想的な音作りを構築していると思うし、その迫力たるや特筆に値する程だ。尚、再発するにあたりリマスターして音を整えるといった行為は施していないであろう部分はよくわかってらっしゃる。これは手を加えたら絶対に駄目なパターンだ。

またいい仕事をしているのは楽曲だけではなく、絶叫とガナリが混ざったようなヴォーカルも最高に素晴らしい。聴き手を震え上がらせる程に異常な邪悪さを放っており、混沌極める凄まじい楽曲と合わさりとんでもなく切迫した緊張感を生んでいるのも聴きどころの一つだろう。

この様に構成される要素全ては異端な芸術として成立しているし、全てが上手く作用し噛み合っているかと思う。全3曲だがトータルランニングタイムは40分を超えるので一曲一曲が濃厚。特に18分ある超大作#1”Putréfiance Rédemptrice”は圧巻。中盤における混沌としたパートから後半の嵐のような展開へと繋ぎ、負の音の塊が総動員で襲いかかる容赦がない楽曲で、強い陶酔感を得られること請け合いだ。残りの2曲も只者らしからぬオーラを纏っておりそれぞれ素晴らしい完成度を誇る。

よく引き合いに出されるバンドと言えば同郷である【Deathspell Omega】だが、【Deathspell Omega】が哲学的でディープな世界観をメインストリームな方向性へと進化させていったとするならば、コチラはさしずめ如何わしさを残した原種ブラックを深化させた影の裏番長といった所だろうか(笑)あと、これは個人的な感性だが初期【Emperor】的な要素も仄かに感じとる事も出来た次第。更にドス黒く穢れているのは言うまでもないが(笑)

ともかくブラック・メタル史上においても傑作中の傑作と断言できる名盤なので市場からなくならないウチに是非とも。※同レーベルより2017年にVinyl盤にて再発されている模様。

 

Coagula (L’Ether du Diable)

Comp(2005)/From:フランス/Style:ブラック・メタル

【Track】
1.The Black Art
2.Reminiscence of an Ancient Prophecy
3.Alpha Wolf Anger
4.Death to Macrocosm
5.Evil War (The End of Men by Men)

【Review】
98年発表のデモ音源”Scarification of Soul”(#1-#2)と99年発表のデモ音源”Death to Macrocosm”(#3-#5)をカップリングしたCD盤。リリースはEnd All Life Productionsから。

傑作であった1STと比べると楽曲の作りがストレートだったり、1STで渦巻いていた凄まじい混沌さの匙加減がまだ弱かったりするのだが、漂わす暗黒度に関しては殆ど同質と言えるだろう。したがって、このコンピもまたブラック・メタル・マニアならコレクションに加えるべき作品の一つかと思う。

まず98年デモ音源の”Scarification of Soul”だが、冒頭でトラディショナルなインストが挟まる以外はノイジーなギターの壁を構築しながら穢れを撒き散らす非常に暗黒度の高い楽曲を収録。エコーが掛かった邪悪な絶叫ヴォーカルは正に90年代ブラック・メタルそのモノを体現しており、楽曲もまたブラック・メタルの基本的スタンスを崩さずにインテレクチュアルな感覚をチラつかせるといった楽曲が中心となっている。特に#2”Reminiscence of an Ancient Prophecy”が不敵かつおどろおどろしい感触があって大変素晴らしい。これは個人的な感性だが往年の【Mayhem】っぽい邪悪さを何となく感じた次第。

一方で99年のデモ音源”Death to Macrocosm”ではフランス産らしい憂いを感じさせるメロウさが印象的な作品に仕上がっている。しかしながらそのメロウさの匙加減も程よい加減に留めているのでモロにメロディックになってしまう一歩手前の寸止め感があり、決して邪悪さをスポイルしない良バランスに調整されている。

尚、最後に収録されている#5”Evil War”だけはこれまでとは毛色が違い、オールドスクールかつパンキッシュな勢いがとんでもなくアツい楽曲を披露。これがまた猛烈にカッコイイのである。破壊的な演奏とドライビングなリズム、そして邪悪なヴォーカルのパフォーマンスが渾然一体となって衝動を掻き立て身体が疼く事請け合いのオススメの一曲。

と、この様に粒揃いの楽曲が揃っているので、デモ音源だからといって侮るべからず。見かけたら即ゲット推奨!

 

Veritas Diaboli Manet in Aeternum: Le diable est ma raison

EP(2008)/From:フランス/Style:アヴァンギャルド

【Track】
1.Et la lumière fut, comme un coup de scalpel
2.Le diable est ma raison
3.Veritas Diaboli Manet in Aeternum

【Review】
一気にアヴァンギャルド色を強めEnd All Life ProductionsからリリースされたEP(CD盤)。因みに同じアートワークで【Deathspell Omega】とこの音源が入ったお得なVinyl盤スプリットもあるのだが、敬意を込めて筆者は単品で入手。尚、変な拘りがなければ、国内盤も用意されておりそちらはCDで入手可能となっている。

音の方はプロダクションの強化により前作で防壁を築き上げていたノイズが緩和され、音の分離も随分と良くなってクオリティ・アップ。これによりアヴァンギャルドな部分がより明確に浮き彫りになり、元々あった複雑怪奇な楽曲がより鮮烈な形となって耳に飛び込んでくる。これがまた一筋縄でいかない独特の聴き心地になっており、ブラック・メタルでありながらブラック・メタルでは無いようなある意味突き抜けた作品になっている。

特に#1”Et la lumière fut, comme un coup de scalpel”で聴ける何処か軽快で軽やかなリフ、弾きまくるギター等、「普通で終わってなるものか!」と言わんばかりに何処か捻くれた印象が強く、元来ブラック・メタルが持っているストレートな邪悪さとは些か雰囲気が異なっている。しかしながら捻くれた分、楽曲が聴き難いのか?と問われると、意外とそうでもなく流れるような疾走感の恩恵からか、案外スルスルと聴けてしまうし、実際にカッコ良かったりもする。

考えれば考える程、「間違いなくブラック・メタルではあるけれど、この微妙な違和感は一体何?」という深みにハマるし、言葉で表現しにくい摩訶不思議な感覚は、聴き終えた後にもしっかりと爪痕を残すのである。まぁ多少、誇張して書いてはいるモノの、普通じゃないのは確かで、筆者の語彙では到底伝えきれない難儀な作品だと言うことが伝われば有り難い(笑)

独創的で意欲作であることには違いないし質も高いので、一風変わったブラック・メタルを好むなら一度試してみるのも良いだろう。こういうのが本当の意味でアヴァンギャルドなんだろうなぁと思う今日此の頃。

ただ、個人的にはもう少しストレートなのをお願いしたいのが本音。