Sorcier Des Glaces

Snowland

1STフル(1998)/From:カナダ/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.L’Enchantement des glaces
2.The Winter Nightsky
3.Pure Northern Landscape Desolation
4.Onward into the Crystal Snows
5.My Journey into the Black Forest
6.Darkness Covers the Snowland
7.L’éternelle majesté des montagnes
8.Night Throne

【Review】
二人組みブラック・メタル。自主制作CD-R盤。寒々しさ満点のグレイトなブラック・メタル!

基本に忠実でありながら、90年代大御所ノルウェー産ブラック・メタルの魂を正しく継承したようなトラディショナルかつ寒々しい”あの音”である。世界観的なイメージで言えば、決して晴れない灰色の空、腹を空かした狼が徘徊する仄暗く鬱蒼とした森、精霊が嘆くが如く深々と絶え間なく吹き付ける吹雪…と、ブラック・メタルにこれらのキーワードを求めている方なら間違いない逸品と思われる。

神秘性と寒々しさを纏ったシンセ、悲壮感を表現し奏で続けるメロウなトレモロ・リフが実に素晴らしい。ねちっこい粘着質なヴォーカルも【Emperor】の1STの頃のIhsahnに迫る邪悪さがある。同郷である【Shade】の突き刺さるような寒々しさとはまた少しニュアンスが違い、シンセを効果的に導入し、あくまでトラディショナルな空気感と悲壮感が漂っているところがポイントであろう。

また、全体的に篭り気味でモヤが掛かったような、晴れないローファイな音質もこの灰色の世界観にベストマッチしており実に味わい深い。時折、切り込んでくるメロウなメロディに胸がキュンキュンする(笑)

まさに大傑作!大推薦!と書きたいが今となっては入手難度が相当高いと思われる。現物に拘らなければ全作品Amazonでデータ販売してるのようなので是非。(テープ音源なら2011年にLes Productions Hérétiques、2015年にDread Recordsからいずれも限定100本で二度リイシューされている)

 

Moonrise in Total Darkness

2NDフル(2006)/From:カナダ/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Misanthropy Within the Endless Mountains
2.Distant Fog Floats in the Grim Nightforest
3.Dense Nordic Veils Fall upon My Realm with Grandiose Obscurity
4.Moonrise in Total Darkness
5.Glaciale Solitude
6.Behold the Halls of Ice
7.Là où la pleine lune éclairé les ombres du royaume des glaces
8.Nature’s Fury

【Review】
前作から随分と間が空いていたが、今は亡きカナダの良質レーベルMankind’s Demise Recordsからリリースされた。リリースは2006年だがレコーディングは1999年となっている。何かあったんやろか?

音源の方は前作の延長線上にある音楽性でありながら、メロディの大胆さが大幅にパワーアップ。音の質は高まったモノのやはりアングラ感を保っており、総じてドラマティックで順当なる進化を遂げている。前作と比べ、アコギやピアノの導入が著しく、それに伴って楽曲に起伏が増したのが今回の特色となっている。

前作もそうであったようにオーロラが目に浮かぶ様な極寒シンセが相変わらず素晴らしいアトモスフィアを放っており、強化されたトラディショナルなギターメロディと相まって傑作を生み出すことに成功している。寒々しくも叙情的、それでいてしっかりと邪悪さを感じさせる完成度の高いアルバムとなっており、これぞ鉄板と言うべき作品。

個人的にタイトル曲である#4が胸キュンが止まらない悶絶チューンだったりする。問答無用でGreat!

 

The Puressence of Primitive Forests

3RDフル(2011)/From:カナダ/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Deathlike Silence
2. …et les anges périrent sous la neige
3.Through the Veils of Frost
4.Cohort
5.Winter Eternal
6.From the Deepest Pits of Hell
7.Tombworld
8.Gateways to the World of Lucifer
9.Tormentor I (Tormentor cover)

【Review】
今回も今は亡きMankind’s Demise Recordsからのリリース。メンバーチェンジを行わず、明確なビジョンを共有したまま理想的な進化を続ける実に頼もしいバンドであり、絶対に外さない安定感は流石!と唸ってしまう。

今回は邪悪さが大幅に上がっており、楽曲も荒涼とした世界観と疾走感を重視した邪悪でアグレッシヴな路線へとスイッチ。それに伴って、ある意味彼らの”要”の一要素であったシンセを今回は完全に封印。しかしシンセのアトモスフィアに頼らずとも全く問題無く、クオリティの高い作品に仕上がっている。リフから放たれるリリカルさがしっかりと残っているので前作が気に入った方にも実に安心して聴ける内容だと思われる。

毎回、絶妙に路線を変化させながら、ここまでブレずにやられるとぐうの音も出ない。もうほとんど完璧やん(笑)と筆者は思うのである。また、何気にヴォーカルの表現力がココにきて飛躍的に向上しているのも見逃せない。聴き所満載で充実の逸品。#6は激カッコイイし、ラストの【Tormentor】のカヴァーもアツい!いやぁ~完璧、カッコ良過ぎる!

これも問答無用でGreat!

 

Snowland MMXII

4THフル(2012)/From:カナダ/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.L’Enchantement des glaces
2.The Winter Nightsky
3.Pure Northern Landscape Desolation
4.Onward into the Crystal Snows
5.My Journey into the Black Forest
/ Darkness Covers the Snowland
6.L’éternelle majesté des montagnes
7.The (Night) Throne

【Review】
名作1STをリレコーディング、新たに命を吹き込み、蘇らせた音源である。Mankind’s Demise RecordsとLes Productions Hérétiquesの共同リリースとの事。ちなみに豪華メタルBox仕様、限定250枚である。ナンバリングがケースの裏にマジックで書き殴られている(笑)筆者が所有しているのは196/250。

これは意味あるリレコーディングだと思うし、単なる焼き直しでは無い。当然ながら音に改善が施され、凄みが増しているのだが、アレンジ自体が変わっているので殆ど作品としては別物と言っても過言ではない。

”リレコーディングは元を超えれない”という印象が筆者の中にはあるのだが、この音源にはオリジナルとは完全に切り離したい、また別の作品としての魅力がある。つまり、両方同じくらい素晴らしいのである(笑)

オリジナルはシンセを活かした寒々しさを重視した叙情的で素晴らしい音源であったが、こちらは洗練された邪悪さが極まっているのである。気になる音もブラック・メタルらしいノイジーさを誇り、小奇麗で丁寧なプロダクションにして衝動をスポイルさせるような、ブラック・メタルにおいて本末転倒な事にも陥っていない。

何度、筆者の胸をトキメかせるねん!って位、流石としか言いようがない!

今となってはあっても高値だったり、レア盤かと思われるが、現物に拘らなければAmazonでデータ販売してるのようなので是非。問答無用でGreat!

 

Ritual of the End

5THフル(2014)/From:カナダ/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Under the Moonlight
2.Morbid Ritual
3.Snowland
4.The Frozen Sword of Midnight
5.The Sign of the End
6.Macabre Operetta (Samael cover)
7.Slumbering in the Dark

【Review】
Obscure Abhorrence Productionsからのリリース。

ジャケからも感じられる様に、一気にオカルト色が上昇、”仄暗い”から”どす黒く”変貌を遂げ、とりわけ大きく暗黒路線へと傾いた作品。時折、ザクザクと刻む地を這うようなリフを盛り込んだり、不穏な空気を煽るおどろおどろしい展開があったりと楽曲のバリエーションを拡張する事に成功したと言える。それに伴ってスローチューン~ファストチューンをアルバムに散りばめており、これまで以上に作風が幅広くなった印象。

ただ、初期の様なアングラ感溢れる寒々しい展開や物悲しくトラディショナルでリリカルなメロディを期待してしまうと、やや肩透かしかも知れない。感覚的に少し魅力が分散している、と言うべきか。

しかしながら初期のおいしい要素が完全に無くなったワケでは無く、随所にしっかりと刻印されているので特に真価が失われたというほどの深刻さでもない。むしろ、進化するために新たなレパートリーを得たと言える。1ST-4THを聴く限り、アルバム毎にしっかりと進化し、各アルバムのエッセンスをうまく昇華しているバンドなだけに、今回のアルバムで培った要素が次回作でどう活かされるのか…今から楽しみである。

ちなみに2016年にObscure Abhorrence Productionsからリリースされる事が決まっているようだ。

 

North

6THフル(2016)/From:カナダ/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Passage au-delà des glaciers noirs
2.(To the) Snow-Crowned Mountains
3.La Noirceur éternelle
4.Storming from Beyond
5.Dawn of the Apocalypse
6.North
7.Witchcraft (Obtained Enslavement cover)
8.Rites of the Black Moon

【Review】
Obscure Abhorrence Productionsからのリリース。前作ではややオカルトでリチュアルな方向性を示したが、アルバム名通り再びコールド・ブラック路線に舞い戻ってきた。

ひんやりとした冷気を醸すシンセが被さり神聖かつ幻想的な雰囲気で楽曲を満たし、ゆったりと優雅でいて寒々しいトレモロ、邪悪なヴォーカルを配したこれぞ【SDG】!と言わざるを得ない90年代風コールド・ブラックの王道を展開。音質も過去最高レベルのクリアさを実現しているので各楽器の動きが明瞭で聴きやすくなっている。

「森」「冷気」「90年代風」といったキーワードに反応するブラック・メタラーに安心して薦められる逸品、いや、必須といっても良いレベルかと思う。全曲素晴らしいが特に#5”Dawn of the Apocalypse”や#6”North”は冷気、ドラマ性を兼ね揃えた神懸り的とも言える楽曲だし、マニアなら気になる#7の【Obtained Enslavement】の名曲カヴァーも如何にもでGreat!

ただ、個人的に不満点が無いわけではなく、音がクリアになった反面、衝動性は薄れたかな?といったもどかしさはある。ギターに関してはもう少しノイジーでも良かったと思うし、ドラムがもう少し楽曲に馴染んでいたら完璧だったのになぁと感じた次第。しかしながら、この冷気迸るブリザードの前ではこれらの不満点もほんの些細な事だし、人によってはプラスになっているのかな?とも思う。ともかく、この多様性の時代に、ここまで頑なに冷気に特化したスタイルのバンドは貴重。

コールド・ブラック・メタルファンはスルー厳禁!