Vritrahn-Werwolf(S/T)

Comp(2018)/From:フィンランド/Style:Raw│Lo-fi│アンビエント

【Track】
Side:A – Demo Ein 8.8.14
1.Blasphemies
2.Burning Strife
3.Darkness Inside
4.Crux Satanae

Side:B – Demo Zwei 13.9.14
5.Aamutähden Poika
6.Funeral Remains
7.Thy Pestilence
8.Bael
9.Infernal
10.King with Horns
11.Eternal Decay

【Review】
2014年と2015年に発表した2つのデモ音源をAstral Templeがコンパイル。【Satanic Warmaster】他、多数のバンドに関わるフィンランド屈指のアングラ帝王Werwolf(Dr、Syn)と【White Death】のVritrahn(Vo,Gt)がタッグを組んだプロジェクト。今の所はカセット版しか存在していない。

路線としてはシンセ入りRaw/Low-Fiブラック・メタルを演っているが、アンビエント的要素も含まれており如何にもWerwolfとその周辺が量産してそうなフィニッシュ・ブラックの最下層といった趣である。恐らくWerwolf周辺の熱心なファンなら、「ああ、この感じね」と納得できるかと思われる程、ある意味ド定番な音を出している。

チリチリと擦り切れたギター、アングラ感満載のカビ臭いチープなシンセ、ボコボコドタバタしたドラム、粘着質で邪悪なヴォーカル、おおよそメジャーレーベルの高品質さとは真逆に位置する非常にラフな音源だ。されど、この音質でしか再現できないであろう独特の響きは好きモノなら安心(?)して聴ける内容になっているし、この手にしては最も聴きやすい部類に入る。

本作はこのプロジェクトにおけるメロウな側面とRawで荒々しいといった2つの側面が楽しめる。

メロウな側面であるSide:Aはチリチリしたメロウなリフを軸にアンビエント風チープなシンセが乗っかるスタイルでWerwolf関連でのメロウさが好きならタマラナイであろう楽曲が詰まってる。かの【Darkthrone】の名盤”Transilvanian Hunger”に近い手法を取りながら、もっとメロウさを強調したスタイルと書けば伝わるだろうか?そこに味のあるチープなアンビエンスが乗り、スカスカでスッタンスッタンとしたドラムがリズムを刻む。どうしょうもなくしみったれた音なのだが好きモノにとってはコレがタマラナイのである。特に#1”Blasphemies”辺りはメロウさ、しみったれ度、共に100点満点だ。また、アンビエンス要素が強いのもSide:Aの特徴でもありアングラ的神秘性があって素晴らしい。

一方でSide:Bは主に荒々しい部分を強調したRawな音を聴かすのだが、実に衝動的でSide:Aで大活躍していたシンセを封印、崩壊スレスレの危なっかしさが楽しめる。例えば#6”Funeral Remains”なんかは楽曲の途中でぶつ切りする雑さで慣れてないと困惑するかもしれない(Raw/Lo-Fi系において曲のぶつ切りは割と多く見受けられる手法?の一つ)。決して不良品ではないのである(笑)。総じてノイジーなギターが全面に出ておりドラムも怪しいながらも懸命にドカドカ叩いており、生リハーサル風景を至近距離で聴いている様な音ではあるが、これもまたRaw系としていい感じで腐っていて(褒め言葉)相当カッコいいのだ。

普通にマニア向けな逸品ではあるが、上記の様に聴きやすくもあるので入手できる環境がある方は是非とも試みて欲しい。そして目覚めてしまったら最後、抜け出せない沼が待っている(笑)