Servants of the Apocalyptic Goat Rave
Servants Of The Apocalyptic Goat Rave(ST)
1STフル(2006)/From:オランダ/Style:エレクトロ│ブレイクコア
【Track】
1.Blood of Three Virgins
2.Demonic Sales of Salvation
3.Tomb of the Black Light Serpent Goddess
4.Rave Bird with Sirens In White Gloves
5.Glowstyx for the Dead Children
6.Goat Rave Versus the Instrument of Torture
7.The Goapocalypse Death March
【Review】
アー写ではタイガーマスク(?)みたいな覆面と黒いヤギの被り物をしているJurgen DesmetとJason Köhnenら二人によるエレクトロ/ブレイクコア。カナダのエレクトロ専門レーベルSublight RecordsからリリースされているCD盤(レーベルは既にクローズした模様)。2007年に一度活動を停止したみたいだが、2017年にブレイクコアにブラック・メタル要素を取り入れてカムバックした。
実のところ、2NDでブラック・メタル要素を取り入れたのを知ったのが切っ掛けで手にとった音源。純粋なブレイクコアは全くの素人で、インダストリアル系ブラック・メタルの要素の一つとして触れる事があっても、ガチな音源を手にしてまで向き合うのは今回が初めての体験となる。
さて、音の方は基本的に「ガバキック」と呼ばれる歪んだリズムが核となり、細やかで複雑なリズムを重ねながら、高揚感や陶酔感といった感情を煽っていく、あくまでリズムが主体のサウンドを構築。当然ながらメタル的な要素は皆無に等しく無機質な音がメインである。そこにクラッシックな恐怖映画から抜いてきたと思わしきセリフ的サンプリングやそれに因んだSE、シンセによるダークなアンビエントと、ある意味、有機的とも言える音をぶっ込んでいるのが最大の特徴だろう。
ブレイクコア自体を語れない筆者の想像の範囲だが、恐らくブレイクコアという目線で見ると割とダークな部類に入るのではないかと思われ、後にブラック・メタルの要素を取り入れるに至る下地が”何となく”整っている様に感じた次第。つまりメタル的成分はこれっぽっちも含まれていないモノの、「ブラック・メタル」のメタルを抜いた”ブラック”の部分といった観点ではダークさといった大枠で同じレール上を走っていると言えなくもない。
ブラッカーでメタラーの方々には電子的にピコピコした部分が鼻に付き、ちとキビシイかも?だが、このご時世、Bandcampもある事なので、まずは#2”Demonic Sales of Salvation”、#5”Glowstyx for the Dead Children”辺りを参考にしてみては如何だろうか?特にこの2曲はこのユニットのダークさが全面に押し出されているので、サンプルにするには打って付けかと思うし、エレクトロ全般に強い抵抗さえなければ、純粋にエクストリームな音として楽しめるのではないかと思う。尚、ブラック・メタルを嗜好する筆者のお気に入りを挙げるとするならば、同じくこの2曲といった感じだ。
当然の事ながらジャンルの性質上、可能な限り大音量を推奨したい。ちまい音で聴くもんじゃない。
非常に興味深く鑑賞できたし、タマにはこういう刺激も悪くない。
Queen Of The Darkness
2NDフル(2018)/From:オランダ/Style:エレクトロ│アンビエント│ブラック・メタル
【Track】
Side:A
1.Worship
2.Queen of Darkness
3.Kali Rises
4.Destroyed
Side:B
5.Scourge
6.Xiombarg
7.Mortal Bodies
8.End of Chaos
【Review】
エレクトロにアンビエントとブラック・メタルを取り込んだ2NDフル。フォーマットはデジタル音源(Bandcamp)、LP(Svart Lava Records)、プロテープ(Tartarus Records)の3種類が用意されている。今回紹介するのはTartarus Recordsからリリースされた100本限定のカセット版。主要メンバー2人は変わらないが、今回のブラック・メタル化に伴ってBasseck(Vo)なるゲストミュージシャンを招き入れている。
エレクトロからブラック・メタルに歩み寄った割と特殊なケースだと思うので(逆パターンは多い)、それがどの様な音に仕上がるのか興味津々であった。
さて気になる内容だがブラック・メタルらしい楽曲が顕著に確認できるのは全体を通すと主に以下の3曲が挙げられる。まずは前作のメインであった”ガバキック”を全面に打ち出しつつ、上手くブラック・メタルのエッセンスを引き出している冒頭の#1”Worship”だ。1STからの文脈で考えるとクロスオーバーといった側面で一番しっくりとくる楽曲で「なるほど、この感じね」と納得できる、言わばイメージ通りの楽曲といった所だろう。次点で本作のタイトルトラックであり、手数の多いリズムで苛烈さを際立たせながら不穏さを引き立てるアンビエントが融合した#2”Queen of Darkness”だ。嵐のように手数が多いリズムがファストなブラック・メタルを彷彿とさせるスピードチューンで、#7”Mortal Bodies”も同様にブラック・メタル度が高い。
その他の楽曲は随所にギターリフを盛り込んではいるモノのヴォーカルの貢献度が意外と低く、全体的を通して聴くと思いの外、インスト寄りの内容になっている。先に挙げた3曲以外は所謂インストが大半を占めているので、ヴォーカルが活躍するイメージは実のところあまりないのだ。これはこれで全く問題なく楽しめたが、ここはやはり専属ヴォーカルを加入させてヴォーカルの充実を期待したいところではある(言うまでもなくブラック・メタルの要素としてヴォーカルの存在は絶対的だと思っている派なので)。
しかしながら、よくよく考えてみると、そもそもがインスト中心のエレクトロであった事を考えるのならば、文脈的にごく自然な流れではあると思うし、ヴォーカルの充実を願うのはあくまでブラック・メタル側に立った時の目線だ。メタル色を強めてしまうと結局それはインダストリアル・ブラックになってしまう訳で、いい感じでアイデンティティを保っていると思う。
そう、あくまで本流はエレクトロにあるのだ。
という訳で、エレクトロ系に抵抗がなく、更にはアンビエントに理解がある方なら要チェックかと。個人的な感覚的だがブラック・メタルでいう【Aborym】の1STに近い雰囲気を感じたが、恐らく皆が想像する以上にエレクトロでアンビエント的な作品。さしずめ、ブラック・エレクトロといった所だろう。
※このレビューを書いた後、某データベースサイトを確認してみると何とJason Köhnenは元【Orphanage】のヴォーカルであった。90年台初頭までメタル界に身を置いていたみたいで、今回のブラック・メタル要素もこれで合点がいく。
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