NâHásh

1STフル(2012)/From:スウェーデン/Style:メロディック

Grafvitnir_1st

【Track】
1.Summoning of the Serpent
2.Shadowed Portal to the Left Light
3.Vilddjurets Återkomst
4.Luciferian Flame
5.Beyond the Black Veil of Da’at
6.Vastness of Death
7.Sphere of the Acausal

【Review】
NiantielによるAnti-Cosmic系ブラック・メタル。

北欧神話の世界を構築する巨大な木”ユグドラシル”を食らうとされる蛇「グラフヴィトニル」の名を冠するNiantiel率いる3人組Anti-Cosmic系メロディック・ブラック・メタル、CDに関しては自主制作の1STフル。※Pro-CD-R。同時にアナログ盤もリリースされており、そちらはDrapskunst Recordsから限定300枚でリリースされている模様。

このバンド、ブックレットのクレジット表記にNiantielしか乗っていなかったので、てっきり独りブラックだと思い込みその演奏力の高さから「スゲーな!」と感心していたのだが、後に某データーベースサイトが更新され、実は三人組ということが判明。

サウンドは荒涼たるメロディを紡ぎだすスウェディッシュ・ブラックの王道中の王道。メロブラファンならみんな大好き【Dissection】や【Naglfar】等を元祖とする直系ピュア・サウンドだ。数多のフォロワーの中でも特に暗黒に対する意識が高く、メロディアスであっても決して甘くはないビターな味わい(これ重要!)がまずは大前提にあるスタイル。全編に渡りよく動くメロディアスなリードギターがまるで蛇の様に絡みつき、基本的に突貫しつつも緩急を付けながら寒々しく疾走していく「これぞ!スウェディッシュ!」と膝を打つ事間違いなしである。

主旋律を担うリードギターが奏でるメロディは北欧神話やブラック・メタルが持つ黒々とした荘厳さと荒涼とした世界観を崩さない絶妙な均衡を保っていおり、この絶妙な匙加減はメロデスとメロブラの中間でありながらしっかりと”ブラック・メタル”を感じさせた【Dissection】や【Naglfar】の遺伝子をしっかりと受け継いでいる様に思う。オリジナリティといった面では劣るモノの、この手に求められている要素はキッチリ押さえているので、スウェディッシュ・ブラック全般を好むのであれば間違いなく楽しめるはずだし、一点の曇りのない実直さの前にファンはひれ伏すしかないのだ。

どの曲も隙きのない良曲の集合体だが、#5”Beyond the Black Veil of Da’at”、#7”Sphere of the Acausal”は後にも先にも彼らの楽曲中10分を越すといった大作になっており、荒削りではあるモノのトップクラスのドラマティックさを誇る。

これでもまだまだ一作目、メロブラマニアにアピールするには充分過ぎる程の存在感を示せたのでは?と思う。今後の活動に期待しかない。Great!

※2017/12/28リライトしました。

Semen Serpentis

2NDフル(2014)/From:スウェーデン/Style:メロディック

Grafvitnir_2nd

【Track】
1.Where Time Has Ceased to Be
2.Descendants of the Serpent
3.Av Ormens Blod
4.Sword of the Damned
5.Poisonous Streams of Hraunn
6.Seed of Apep
7.Vilddjurets Återkomst

【Review】
Niantiel率いる3人組メロディック・ブラック・メタル。【Domgård】や【Grá】そして【Arckanum】のComp音源などリリースし、何気にAnti-Cosmic系のアーティストを幾つか抱えているスウェーデンのCarnal Recordsからリリースされた。正に収まるべく収まった感じでレーベルカラーに則したナイスなリリースと言えよう。

前作と今作の間にデモ音源(2013)を一つ挟んでいるようだが(未入手かつ未聴)それを踏まえると年に一作づつのペースで順調に音源を発表しており、バンドとしての創作活動は割とスピード感を持って行われているようで頼もしい限り。

音の方は前作を踏襲した正に”安定 Of 安定”を絵に描いたような作品になっており、取り分けて大きな路線変更はない。今作も”闇の勢力”目線で描かれた様な”神々しさ”を感じさせるダークでビターなメロディ、緩急を付けつつも荒涼殺伐とした厳しい世界観を表してるかの様なファストなドラミングをベースとし、ハスキーな絶叫で雄叫びを上げる邪悪なヴォーカルが木霊する。これらが渾然一体となりスウェーデン産でしかない王道メロディック・ブラックを構築。

前作を知っているのなら決して想像の域を出ない作風だが、間違いなく質は上がっているし、頑なにブレてない所はお見事。今作もまたコテコテなスウェディッシュ好きならノールックで手に取り購入しても火傷しないと思われる。

また、プロダクションの向上した事により音のヌケが良くなり、音圧もアップしている事から音質重視派も問題ないだろうし、演奏のキレが増した事により楽曲がグッと引き締まっているのも◎。展開は前作より贅肉が削ぎ落とされた感じで楽曲がスマートになってきた印象で、似たような楽曲のオンパレードになっているが、一曲一曲、確かな求心力があり、全体的に平均点が高いアルバムとなっている。

だからこそなのだが「コレ!」といったキラーチューンの不在がやはり気になる。画一的なこの路線を貫きつつ、更なるブレイクスルーを試みるのなら、やはり頭一つ突き抜ける様なキラーチューンが欲しい所。

これは私的に好きな路線だからこそのワガママなオーダーではあるし、ブレイクスルーするポテンシャルは十二分に感じられるが故の感想だ。やはり期待しかない!Great!

※2017/12/28リライトしました。

 

Necrosophia

3RDフル(2015)/From:スウェーデン/Style:メロディック

Grafvitnir_3rd

【Track】
1.Kenaz
2.Awakening of the Dragon
3.Vessels of Serpent Fire
4.Varulvsnatt
5.Fires of Golachab
6.Elddop
7.Into the Vast Forever

【Review】
Niantiel率いる3人組Anti-Cosmic系メロディック・ブラック・メタルの3作目。今回はDaemon Worship Productionsからのリリース。順調、順調(^^)と柄にもなくニコちゃんマークを上げたい程の正統進化。今作も期待を全く裏切らない高品質なスウェディッシュ・ブラック・メタルが炸裂。

過去作では割と直線的で突っ走ることが多かったが、今作ではミドルパートを程よく織り交ぜ、より緩急ある作風になってきた。勿論、基本的には寒々しい疾走を基軸とする楽曲なのだが、メリハリが効いてきたとでも言えようか。それは冒頭を飾る#1”Kenaz”から緩急巧みになったのはハッキリと確認でき、いよいよ円熟味が増してきたと言える。このバンドでは珍しく#2”Awakening of the Dragon”で凍てつくようなオーロラ系シンセをちょこっと導入してみたり、幾つかの楽曲で環境SEが入ってたりと雰囲気にも注力されている点にも注目したい。そして何と言っても筆者のお気に入りの楽曲は#3”Vessels of Serpent Fire”である。正に【Naglfar】+【Dissection】といったニュアンスが当て嵌まりそうな楽曲でフックが効いたリフ(フレーズ)で溜めてからの疾走に思わずガッツポーズ!後の楽曲も全くスキが見当たらず、最後まで安心して身を委ねることが出来る傑作だ。

やはり緩急が増したことにより各楽曲にも個性がより明確になってきたのが大きく、似たような楽曲のオンパレードには聴こえなくなってきたのは正に成長の証だろう。また各楽曲のフレーズがとても印象深く、このバンドが描き出す北欧神話の世界観を上手く引き出しているのがタマラナイ。

後は後世にも語り継がれる様なキラーチューンがあれば完璧で、実現したなら本格的なブレイクスルーを果たすだろう。先に引き合いに出した2つの先輩バンドとの差は最早ソコだけではなかろうか?なかなか難しいと思うが頑張って欲しい。

巷で話題になっている所謂【Dissection】のフォロワーである【Thulcandra】や同郷である【Hyperion】辺りはちょっとメロデス過ぎると感じるのなら、是非ともビターなコチラも試して頂きたい。Great!!

※2017/12/28リライトしました。

 

Obeisance to a Witch Moon

4THフル(2016)/From:スウェーデン/From:メロディック

【Track】
1.Lightbringer
2.The Great Beast
3.Wrath of the Tempest
4.Nigrum Ignis Serpentem
5.Via Dolorosa
6.Serpent’s Blood
7.Children of the Void
8.Legion of the Serpent
9.Obeisance to a Witch Moon

【Review】
Niantiel率いる3人組Anti-Cosmic系メロディック・ブラック・メタルの4作目。今回はDaemon Worship ProductionsとCarnal Recordsの共同でリリース。本作のマスタリングは【Marduk】でお馴染みのMagnus Devo Anderssonが手掛けている。それが影響しているかは定かではないが、録音レベルが10%程(筆者の感覚だが)小さくなっており、耳触りの良いマイルドな質感になっている。

以前までバッキバキの高出力で音に厚みとキレがあったのだが、今回の音はどうしても物足りなさを感じてしまうのがタマにキズではある。しかしながら、愚直なまでの潔いスウェディッシュ・ブラックを徹頭徹尾に貫く姿勢は相変わらずで、録音レベルが小さくとも、何ら問題なく聴ける質の高さを誇る作品となっている。最早、このバンドの辞書に「駄作」の文字は無い!とでも言わんばかりである。

楽曲の方、主にメロディに関してだが基本的なイメージはそれ程大きくは変わらないモノの【Naglfar】+【Dissection】といった図式が必ずしも当て嵌まらない部分が多くなってきたのも今作の特徴の一つだろうか。以前にも増してメロディが濃厚になってきており、楽曲の一部分がメロディアスとかそういったレベルではなく、楽曲全体でメロディを発するかの様な濃厚さを感じさせるアルバムだ。そういった側面では最近の【Dark Funeral】辺りの感触に割と近いかもしれない。また、程よく緩急を付けつつも突貫するブラストが主体となっており、全曲3分~4分台というナイスなタイム感で胃もたれする前に終了する粋なトータルランニングタイムが素晴らしい(実のところ1STと2NDはその辺がネックだった)。濃厚なメロディを繰り広げ、かつドラマティックでありながらコンパクトにまとめるといった点においては間違いなく洗練されていると思う。

個人的には3RDの方が好みだったが成長として受け止めた次第。Great!

 

Keys to the Mysteries Beyond

5TH(2017)/From:スウェーデン/Style:メロディック

【Track】
1.Nidhögg
2.Key to the Mysteries Beyond
3.Vargavinter
4.Crossing the Abyss
5.Eternity’s Glistening Black
6.Journey into Storms
7.Unleash the Storm of Nothingness
8.Eye of Lucifer
9.Whispers of the Primordial Sea
10.Glimpses of the Unseeable

【Review】
Niantiel率いる3人組Anti-Cosmic系メロディック・ブラック・メタルの5作目。Carnal Recordsからのリリース。今回もマスタリングに【Marduk】のMagnus Devo Anderssonを起用している。そして、この素晴らしいアートワークは幾つかのブラック・メタルでアートワークを手掛けているイタリアの絵師Daniel Valerianiが担当(代表作は【Dark Funeral】の3RD~5TH/通称赤ジャケを手掛けた人物)。

さて音の方は前作の延長線上でありながら個を確立できた音源だと思っている。悲しいかな、録音レベルの小ささを引き継いでいるが、そんな事を軽く吹き飛ばす程のキラーチューンが冒頭を飾る#1”Nidhögg”である。印象深くキャッチーでありながら決して甘くない荘厳で過酷な北欧神話の世界観を余すこと無く表現した素晴らしい楽曲はインパクト大。メロブラファンを全力で殺しに掛かってくるこの曲を冒頭に持ってくる事による掴みはそれはそれは強力でしかない。また続くタイトル曲である#2”Key to the Mysteries Beyond”、#3”Vargavinter”と冒頭3曲が取り分けて素晴らしく、正に「これがホンモノのメロディック・ブラックだ!」と言わんばかりにあるべき姿を体現。また、雰囲気あるインスト(できれば中世的なアコギでやってほしかったが/笑)や環境SE(吹雪の音、狼の遠吠え)も入っており、過酷な寒々しさも伝わってくるのもニクい演出だ。

今まで、【Naglfar】【Dissection】【Dark Funelal】等と引き合いに出してはフォロワー扱いしていたが、もうココまで演ったなら個として確立できていると認めざるをえない。勿論、大枠では同じ路線を走る画一的な伝統的スウェディッシュなスタイルだが、先に挙げたバンドのエッセンスを幾度もなく取り入れながら、ふと気付けば、もうフォロワーとは呼ばせない程の説得力、そして似て異なる次元に達しているのである。強引に180度方向を転換するワケでもなく、己を貫きつつごく自然に…ってのがホント凄い。

故にこのアルバムは傑作と云うよりかはネクストステージだと思っていて、星の数ほどいるバンドの中でフォロワーから個へと脱皮する…こういう過程を目撃できるのって、実はそう頻繁にあるもんじゃない。そんな音源に出会えて私は嬉しいかった。感謝である。

残念ながら、未だ知る人ぞ知るといった感じで知名度は低いかもだが、そんなものは後からついてくると信じている。Great!!