Orcustus(S/T)

1STフル(2009)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

orcustus_1st

【Track】
1.Coil
2.Of Sophistry, Obsession and Paranoia
3.Conversion
4.Jesus Christ Patricide
5.Death and Dissolution
6.Ego Sum Chaos
7.Asphyxiokenisis

【Review】
元【Gehenna】【Enslaved】のDirge Rep、【Amok】のTaipanによるブラック・メタル。【Gorgoroth】TormentorやInfernusもこのアルバムに絡んでいる。有名所が絡んでいるだけあって流石の完成度。しかも非常にカッコ良い音源なのである。

楽曲の方は、ノイジーさを強調させつつ、リスナーを扇動する非常に良く動くテクニカルなリフを積み重ねているのだが、あくまでストレートなブラック・サウンド。そのテクニカルさや複雑さといった要素がストレートなブラック・サウンドを邪魔する様な事も一切無く匙加減は心得ている様だ。ヴォーカルも非常にストレートなブラック・ヴォイスで個性があるとは思わないが、中高音で絶叫するスタイルでしっかりとした安定感がある。そこにハードコアにも通じるようなアグレッシヴな縦ノリを誘発する苛烈なドラミングが縦横無尽に駆けまわる。下手すれば明るくなり兼ねないノリの良さを絶妙な加減で調整している辺りは流石と言えよう。しかも、ノリ良く疾走するだけでは無く、良い感じで展開を設けており、奈落の底に落とす所はしっかりと落としてくれる芸達者っぷり。ズバリ【Gorgoroth】と【Gaahlskagg】を掛け合わせたような音楽性を想像すれば良いだろう。先に挙げた音源がツボなら高確率でハマれる音源である。

何よりもプロダクションが良い仕事をしており、この手の音源にしてはベストな音質と言える。高音を持ち上げ、ブラック・メタルらしく低音はカットして苛烈さを印象付けた上で、音の分離に気を遣い、非常に良好に仕上げておりノイジーだが聴きやすいという相反する音を作り上げている。正に痒い所に手がしっかりと届いているベストな調整だと思っている。楽曲の苛烈なアグレッションからくるカッコ良さも勿論そうだが、それ以上にプロダクションの調整には感激した次第。久々に有能な仕事っぷりを聴いた様な気がする。単に音のテクスチャー、バランス等が好みってのもあるかも知れないが、少なくとも筆者はそう思う。

ともあれ、完全にブラック・メタルなのだが、ハードコアファンに対しても、それなりに訴求力がありそうな完成度である。コレは紛うこと無き匠の仕事だ。大推薦!