Black Ritual Metal

Demo(2015)/From:オーストラリア/Style:Raw

【Track】
1.Satan (Intro)
2.Maya Inae
3.Blood Bone Dry
4.Sa-Tah-Nah-Ma
5.Kill All Scum
6.Vergreuvbre (Coda)

【Review】
オーストラリア出身という以外は素性が謎のバンド。Australibus Tenebrisからカセットでリリースされた。

生演奏を録音したかのようなRawさが際立ちつつも不穏さが香るブラック・メタルを演っている。デモ音源とはいえ楽曲の輪郭が不明瞭で何を演っているのか分からない程ではないので、この界隈の音源にしては割とまともに聴ける方ではなかろうか(笑)。

まるでダンジョンの奥から聴こえてくる悲鳴にも似たヴォーカル、光が差し込まない不気味さのみを切り取ったギター(やや、暗黒系ドゥームっぽい所もあり)、タマにトチ狂った様な即興気味フレーズが飛び込んできたりもしたりで凄惨かつオカルティックな要素が満載。また、楽曲の流れとしてはどんよりしたミドルチューンが中心でRawなドラミングが場面場面の盛り上がりにおいて、良い感じでフックと緩急を付けており、楽曲の流れに単調さは感じられない。バンド・サウンド的な速い、遅い等の概念があまりない、言わば雰囲気モノの領域にあると言えるだろうか。

やはり印象的なのは、兎にも角にもヴォーカル・パートであり、詞をシャウトしているとは到底思えない悲鳴や呻き声で覆い尽くされている。まるで禁忌とされるダンジョンの奥深くで延々と罪人が拷問を受けている…そんな血生臭い情景を克明に描き出している。”Black Ritual Metal”とはよく言ったものである。

この様にマニア向けである事は勿論の事、明らかにその中でもフェチ向けに属する音を出している。

尚、このサウンドをブラック・メタル・マニア向けに説明するとポルトガルの”Black Circle”に属する連中、その中でも特に【Mons Veneris】がやっている方向性/路線に類似している。マニアの方は参考にされたし。

まぁ、あまり日の目をみてはいけない類の音源だがフェチにはご馳走である。

 

Hate Yoga

Demo(2016)/From:オーストラリア/Style:Raw

【Track】
1.Untitled
2.Destruction Of Young Soul
3.Poison Master Satan
4.Jet Black Darkness
5.Hate Yoga

【Review】
Australibus Tenebrisからのプロ・カセット(限定100本)でリリース。

Hate Yoga(憎しみのヨガ?)とはこれ如何に。少なくともホット・ヨガとかマタニティ・ヨガ等の健康エクセサイズの類で無いことだけは確かである(笑)因みにアートワークはJames Campbellという人物が手掛けているそうで、バンド・メンバー等の情報は一切クレジットされていないにも関わらず、何故か彼の名前だけがデカデカとクレジットされている。有名だったりするのだろうか?

音の方は阿鼻叫喚だった前作に騒々しさと凶暴さといったブルータルな要素を足し算した様な内容。割れ歪んだレッドゾーンすれすれのノイジーな音の塊が吐き出される。緩急を付けつつもドカドカバコバコと徹底的に叩き付けるドラミング、半ば怨霊と化したヴォーカルが総動員で「さぁ、一緒に憎しみのチャクラを開きまショー」と言わんばかりに畳み掛ける様は圧巻。

ビリビリと音が割れ歪んでしまう一歩手前の音量に調整されており、如何わしさと騒々しさが同居するおっかなびっくりな轟音アングラ祭りを人知れず開催しているのである(笑)。各々の再生環境にもよるかと思うが、録音レベルが通常より大きいので初めて聴く方は注意されたし。

尚、楽曲における作風の幅は結構広がっており、#1”Untitle”ではこのバンドにしては意外とストレートで骨太な骨格を持つ割とキャッチーな楽曲で意表をついたり、#3”Poison Master Satan”においては【Mayhem】のAttilaに通ずる呪詛ヴォーカルを披露してこれまでとは少し違った側面を聴かせ、更には#4”Jet Black Darkness”ではパンキッシュなニュアンスをも垣間見せたりで割と多彩な側面を披露している。

一聴してノイジーかつ押しが強い作風故にさらりと流して聴いたり、”ながら聴き”をすると、どうしても画一的に聴こえてしまうかもしれないが、よくよく分析してみると実はなかなか多彩だったりするのだ。

筆者としては是非ともこのバランス感覚のまま、少なくともフルレングスを出すまでは頑張って欲しい。