Devil is Fine

1STフル(2017)/From:アメリカ/Style:アヴァンギャルド

【Track】
1.Devil Is Fine
2.In Ashes
3.Sacrilegium I
4.Come On Dowm
5.Children`s summon
6.Sacrilegium II
7.Blood In The River
8.What Is A Killer Like You Gonna Do Here?
9.Sacrilegium III

【Review】
Manuel Gagneuxなる人物による珍品。MvkaとRadicalisなるレーベルが共同してのリリース。たまたまユニオンの新譜コーナーで発見、紹介文を読むだけでは今一つ音が想像出来なかった事もあり少し考えた後に購入、やはり無視は出来ませぬ。

さて、気になる中身はブルース、エレクトロ、ブラック・メタルを組み合わせた”ごった煮系音楽”を演っている。エレクトロとの組み合わせはインダストリアル・ブラックをはじめ、昔からゴマンとある手法なので決して珍しいモノでは無いのだが、黒人発祥であるブルースとブラック・メタルの組み合わせはコレが唯一ではなかろうか?言わば”水と油”に近い関係だと思うのでこれまでに類を見ないスタイルとなっているし、このスタイルの出現は誰も予測できなかったであろう。元来あるブラック・メタルの伝統云々さえ考えなければ音楽として面白みがあるし、普通にカッコ良かったりするのだ。

自らをアメリカン・スレイブ・ブラック・メタルと称している通り、アメリカに奴隷として虐げられてきた黒人の負の念を呪詛に乗せ、魂を震わせながら声高らかに歌い上げる…そんなスピリチュアルな響きが作品全体に満ち溢れており、音楽性自体は至って大真面目に作られている。

特に大胆に歌唱するヴォーカルはかなり本格的に歌い上げており、冒頭のタイトル曲でもある#1”Devil Is Fine”、続く呪詛的要素が色濃く出る#2”In Ashes”辺りは相当なインパクトがあった。一方で気になるブラック・メタル的表現はそこまでメインを張るわけでは無く要所要所で切り込んでくる掻き毟るトレモロ・リフとドラミング、そしてほんの少しの絶叫くらいに留まっているので過度の期待は禁物だろう。そんな中、#4”Come On Dowm”は融合性として面白い曲に仕上がっている。エエやん(笑)

上記の様な作風なのでメタラーの心構えとしては、ブラック・メタルがブルースへ歩み寄ったというよりかは、ブルースがブラック・メタルに歩み寄ったといった関係性だと思って接した方が恐らく精神衛生上良いかと思われる(笑)。

また、黒人由来の土着的スピリチュアルさとブラック・メタル勢が度々テーマとして用いる黒魔術は神秘性といった側面で共通する部分が少なからずともあるので、混ざらない水と油を無理矢理融合させた一貫性のない音楽では決してない。珍品とはいえ、この辺はしっかりしているし、この音源を聴けば「なるほど、こういうのもアリだな」と納得がいく。少なくともジョークの一環で作られているとは思えない、しっかりとしたアルバムになっているのが何よりも大きいのである。

奇抜さ故に、一過性のモノで終わる可能性や、これに影響を受けたフォロワーが出てくるとはナカナカ思えないのだが、後にも先にもいい意味で珍品として君臨するだろう。ユニークさを求めるなら一度試してみて欲しい。