Anaal Nathrakh

The Codex Necro

1STフル(2001)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.The Supreme Necrotic Audnance
2.When Humanity Is Cancer
3.Submission Is for the Weak
4.Pandemonic Hyperblast
5.Paradigm Shift – Annihilation
6.The Technogoat
7.Incipid Flock
8.Human, All Too Fucking Human
9.The Codex Necro

【Review】
V.I.T.R.I.O.L.とIrrumatorの二人組による苛烈さ/激烈さと言った音楽的な過激さを追求したエクストリーム・メタル。そんな彼らの記念すべきフルレンス第一弾。幾度と無く再発されているが、今回はMordgrimmによるオリジナル盤のレビュー。

リリース当時のインパクトが凄まじく、当然のようにマニアの間で話題になった事が記憶に新しい。音に関しては最早、語り尽くされた感もあるが彼らが提示するサウンドは、ともかく苛烈極まりない激音に塗れながらも、完璧にコントロールされたリズム、そして”のたうち回る”様なやたらとハイテンションでキレッキレな発狂ヴォーカルが乗っかると言うモノである。また、随所でインダストリアルな味付けを施しながら、下地は【Mayhem】辺りの影響を仄かに感じさせるネクロなリフで覆い尽くされている。前半は直線的な印象が強いのだが、後半からミドルパートなどキッチリと緩急が付いた楽曲が楽しめたりと大充実の作品なのである。何よりも伝統的なブラック・メタルとしての体裁をしっかり残してある部分が嬉しい所だろうか。ある意味モダンとも取れる様な方法論でまとめるといった彼らの個性はこの時点で既に出来上がっている。

ブラック・メタルのファンは元より、エクストリームな音を嗜好する方に対して幅広い訴求力がある強力な音源であろう。

 

Total Fucking Necro

Comp(2003)/From:イギリス/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Anaal Nathrakh
2.Necrodeath
3.Ice Blasting Stormwinds
4.Carnage (Mayhem cover)
5.The Supreme Necrotic Audnance
6.Satanarchrist
7.Lethal, D.I.A.B.O.L.I.C.
8.De Mysteriis Dom Sathanas (Mayhem cover)
9.The Technogoat
10.Necrogeddon

【Review】
2本のデモ音源をまとめた音源。オマケにボーナストラック一曲追加しRage of Achillesよりリリースされたモノである。#1-#4が1999年のデモ”Anaal Nathrakh”、#5-#9が同年にリリースされた”Total Fucking Necro”である。因みに#10は未発表曲らしい。また、この頃は正式なベースプレイヤーも居たそうだ。

音源の方はインダストリアル的な要素が然程感じられないクールな純正ブラック・メタルである。ブラック・メタルと言えど【Darkthrone】と言うよりかは、完璧に【Mayhem】寄り。カヴァーが2曲も入っている事からその酔狂っぷりが予想できるだろうが、オリジナル曲の節々にもかなりのリスペクトっぷりが伺える。ネクロなリフ・ワークは元よりV.I.T.R.I.O.L.のヴォーカル・スタイルもかなりAttilaに寄せてる部分が多々感じられたりする。とは言え、単なるフォロワーとも違い、オリジナリティも見出だせる事から一際突き抜けている印象であり、この後1STにリンクしていくと考えると納得の仕上がり。#6辺りは意外にもドラマティックな激メロウな旋律を奏でている点も注目したい。決してネクロな部分だけでは無く、メロウな引き出しも持っている。デモだと侮る無かれ、純粋なブラック・メタルといった面では今作が一番だと思っている。

世間はどうだか知らないが、筆者は1STより断然コッチが好き。これってきっと少数派なんだろうなぁ…※音がブレる所が数カ所あるのだが、テープに起因するノイズなのだろうか?

 

When Fire Rains Down from the Sky,
Mankind Will Reap as It Has Sown

EP(2003)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.Cataclysmic Nihilism
2.How the Angels Fly In (We Can Never Be Forgiven)
3.Never Fucking Again
4.Genesis of the Antichrist
5.Atavism
6.When Fire Rains Down from the Sky,
Mankind Will Reap as It Has Sown

【Review】
ゲストとして【Mayhem】のAttilaが#5でヴォーカルを、元【Dissection】元【Aborym】のSet Teitanが#2と#4でギターで参戦している。

基本的には前作の延長線上にある楽曲だが、音がタイトかつクリアになった分、音の苛烈さがより一層引き立った音源となっている。直線的な楽曲に程よく展開を入れ込んだり、力でねじ伏せる様な展開があったりと、総じてキレが増している印象である。若干モダンな方向へ進んだ様にも聴こえるが、リフそのモノはネクロな路線を保っているので前作とほぼ同様の印象である。そして何よりもブラック・メタラーなら絶対に気になるのは、Attilaの仕事っぷりだろう。当たり前のように【Mayhem】1STで聴かれた様な気狂い呪詛ヴォーカルが炸裂しており、この音源の中でも随一の邪悪さを誇る。全くを持ってドス黒く【Mayhem】のアルバムにシレっと入っていても何ら違和感のない楽曲である(笑)

【Mayhem】に酔狂している(?)二人もこの仕事っぷりにはさぞ満足した事であろう。

 

Domine Non Es Dignus

2NDフル(2004)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.I Wish I Could Vomit Blood on You… …People
2.The Oblivion Gene
3.Do Not Speak
4.Procreation of the Wretched
5.To Err Is Human, to Dream – Futile
6.Revaluation of All Values (Tractatus Alogico Misanthropicus)
7.The Final Destruction of Dignity (Die Letzten Tage Der Menschheit)
8.Swallow the World
9.This Cannot Be the End
10.Rage, Rage Against the Dying of the Light

【Review】
今回もゲスト2名を迎え作成されている。【Danmaku/弾幕】【Absolute Power】のPaul Harrington(ここではVentnorと名乗っている)、【Thus Defiled】【Basement Torture Killings】のPaul F.がそれぞれ参戦している。因みにVentnorは【Anaal Nathrakh】のアルバムに度々関わっており、あくまでゲストといった要員であるが随分と貢献している。

音源の方は苛烈な勢いも去ることながら地を這う様なリフ・ワークであり、些か空気感が変化している。それに加えて発狂ヴォーカルがメインだがグロウルする面があったり、デス・メタル化が一気に加速している。それだけでは留まらず、曲によっては荘厳なメロディを絡ませ、まるで【Emperor】のIhsahnの様なノーマルヴォイスまで導入しているなど、変化する事を恐れない大胆なアプローチが目立つ。こう書くとぬるくなってるのでは?と思うかもしれないが、メロディ部分に関しては荘厳であってメロウや叙情性といったリリカルな要素では無い。その辺はぬるくならない様に絶妙な匙加減で調整している。故にアグレッションに関してはむしろ上昇しているといっても良いだろう。一方でブラック・メタル度は大幅に減退しているので、その辺が聴き手によって好みが別れるところある。しかしながら、コレもまた彼らの引き出しの一つに過ぎない。いやはや末恐ろしい存在である。

クオリティも右肩上がりで素晴らしい。

 

Eschaton

3RDフル(2006)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.Bellum Omnium Contra Omnes
2.Between Shit and Piss We Are Born
3.Timewave Zero
4.The Destroying Angel
5.Waiting for the Barbarians
6.The Yellow King
7.When the Lion Devours Both Dragon and Child
8.The Necrogeddon
9.Regression to the Mean

【Review】
毎回ゲストが参加するイメージがあるが、今回は【Mayhem】のAttilaが再び#9でヴォーカルをとったり、前作から続投でVentnorが参戦していたり、元【Mistress】のメンバーや【Napalm Death】【Lock Up】のShane Emburyが参戦してたりと何気に脇をガッチリと固めている。

音の方はデス・メタル色が薄まり、再びブラック・メタル的な部分が若干戻ってきた様にも聴こえるが、それよりもスラッシュ・メタル的な展開やハードコア的な展開の方が大きく目立つ。う~ん、お見事。様々なジャンルから激烈な要素のみを取捨選択し軽々と取り入れ、彼ら色に染め上げるセンスに脱帽である。ホント、ここまで演られるとぐうの音も出ない(笑)正に貪欲なまでの吸収力。基本的には何一つ変わらない一本筋の通った頑ななエクストリーム音源なのだが、明らかに前作までとは、テクスチャーが違って聴こえる点も凄い。そんな激音の中にクリーンヴォイスでしっかりと歌い上げる側面があったりもするのだが、その極端な対比が逆にエクストリーム度を底上げしている。

このとてつもないセンス…どないなっとんねん(笑)

 

Hell Is Empty, and All the Devils Are Here

4THフル(2007)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.Solifugae (Intro)
2.Der Hölle Rache Kocht in Meinem Herzen
3.Screaming of the Unborn
4.Virus Bomb
5.The Final Absolution
6.Shatter the Empyrean
7.Lama Sabachthani
8.Until the World Stops Turning
9.Genetic Noose
10.Sanction Extremis (Kill Them All)
11.Castigation and Betrayal

【Review】
ゲストとして前作から続投のShane Embury、新たに元【Mistress】のメンバーであるDirty Von Donovan、そして【Circle of Dead Children】のJoe Horvath(#9で下水道ヴォイスを披露)をゲストとして迎えての作品。

今回は前作の延長線上であり、当然のようにブラック・メタルやスラッシュ・メタル色もあるのだが、どちらかと言うとグラインド・コア~ハードコア色がやや強めに配分されている。よって前作と方向性は同じながらも、微妙に毛色の違う路線を打ち出している。ノリが軽快というか、ハネてると言うか、Liveにおいてモッシュ上等!といった印象の楽曲が多く感じられる。ともかく彼らの匙加減一つで何にでも化けられるといった脅威の器用さが浮き彫りになっており、それらがもっとも伝わる作品だと思う。また音質がこの上なく向上しておりスッキリ聴けるヌケの良い音なので随分と聴きやすい。それによって苛烈さとクリーンヴォーカルとの融合がこれまで以上に活きている点も注目すべき点だろう。聴き手の好みは別として、もう、ブラックなのかグランドなのか…はたまたインダストリアルなのか?…なんて考えるのも今更ながらナンセンスだと気付いた(笑)

正にイギリス屈指のエクストリーム生成マシーンというべき存在である。

 

In the Constellation of the Black Widow

5THフル(2009)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.In the Constellation of the Black Widow
2.I Am the Wrath of Gods and the Desolation of the Earth
3.More of Fire than Blood
4.The Unbearable Filth of the Soul
5.Terror in the Mind of God
6.So Be It
7.The Lucifer Effect
8.Oil Upon the Sores of Lepers
9.Satanarchrist
10.Blood Eagles Carved on the Backs of Innocents

【Review】
三度、Ventnorが参戦、もう一人新たにZeitgeist Mementoなる人物がゲスト参加している。ここに来て、ちったぁ落ち着くんでは無いかと思うのが普通なのだが…5作目にして名盤と呼ぶべき作品が生まれたのである。実にエクセレント!

邪悪さとキレ、そして叙情性といった要素が華麗に融合している逸品。叙情的と言うべきメロディアスな側面を強めつつ、歌メロもやたらとキャッチーでより目立っているのだが、不思議と苛烈さがスポイルされているといった事は無い。まるで激音を引き立てる為に用意されているかの様である。トレード・マークである発狂Voもこれまで以上にキレッキレなのである。更にはインダストリアル的な要素もスパイスとして気持ち良い塩梅で入ったりする。

だが、今作の最大のポイントはソコでは無く、あくまでメタリックに仕上げている部分がポイントだろう。ここ数作はハードコア色が強かったりしたのだが、今回ではあくまでメタリックな部分に焦点を絞っている音なのである。メタル畑の筆者にとってはコレが実に心地よい。勿論、どのアルバムも作品ごとに個性がありカッコイイのだが、ちょっとこのアルバムは飛び抜けてるな…と感じた次第。また、10曲で34分弱と理想的なランニングタイムってのも相まって、頭からケツまで筆者の激しい部分(?)を刺激して止まない…そんな楽曲のオンパレードだった。

これには悶絶!参りました。。

 

Passion

6THフル(2011)/From:イギリス/Style:インダストリアル

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【Track】
1.Volenti Non Fit Iniuria
2.Drug-Fucking Abomination
3.Post Traumatic Stress Euphoria
4.Le Diabolique Est L’ami Du Simplement Mal
5.Locus of Damnation
6.Tod Huetet Uebel
7.Paragon Pariah
8.Who Thinks of the Executioner?
9.Ashes Screaming Silence
10.Portrait of the Artist

【Review】
ゲスト大量導入。Ventnorを始め、ワールド・ワイドに6人が参戦。(めんどいので割愛/笑)

今回は前回に引き続きメタリックな作品となっているのだが、より暗黒色を強めている。当然、直線的で激烈なファスト・パートも去ることながら、ミドル・パートもハッキリと盛り込んでおり緩急の付いたドラマティックな側面が垣間見れるのが今作の最大の特徴かと思う。ソレは#2において顕著に表れており、彼らにしては7分ある大作にチャレンジしているのである。よって全体的に楽曲の雰囲気に重きを置いており、リフが堂々としたドス黒き荘厳さを放っている。短い曲でありながら#3のリフなんかは凄まじい荘厳さを放っていたり、#6の印象深いリフも然り。という訳で今作はリフに聴き所が実に多いのである。それに加えて、歌メロも強化されており、発狂ヴォーカルや苛烈な要素だけでは無いと言う事を改めて再認識させてくれる好盤である。ややメロディアスになったとも言えるが、ブラック・メタル・ファンなら歓迎すべき内容であろう。堂々たる完成度。作品ごとに逸脱しない程度に色を変え、未だ進化を続けている。

…ホンマ、どないなっとんねん…と賞賛を贈りたい。お見事。

 

Vanitass

7THフル(2012)/From:イギリス/Style:インダストリアル

anaalnathrakh_7th

【Track】
1.The Blood-Dimmed Tide
2.Forging Towards the Sunset
3.To Spite the Face
4.Todos Somos Humanos
5.In Coelo Quies, Tout Finis Ici Bas
6.You Can’t Save Me, So Stop Fucking Trying
7.Make Glorious the Embrace of Saturn
8.Feeding the Beast
9.Of Fire, and Fucking Pigs
10.A Metaphor for the Dead

【Review】
第7作目。今作では3名ゲスト参加。内一人は女性であり、どれどれとMetal Archivesで調べてみたらエロいお姉さんだった。#6においてヴォーカルで参加しているようだが判別不能(笑)

前作の暗黒色や荘厳さをある程度保ちつつ、メロウと言っても良いくらいのメロディを大胆に取り入れている。更にはインダストリアルな音の仕掛けもより明確に盛り込んでおりモダンな一面がより明確になってきたように思う。また、#7や#10ではリリカルで大胆なギターソロがシレっと添えられており、少しあざとくもなってきた印象だ(笑)この様に様々な展開が入り混じっており些かカオティックな印象を残すアルバムとなっている。とは言え、何処を切っても一貫したアナール節であり整合性や統一感を出しているのは流石というべきだろう。

バラエティの豊富さで選ぶならこのアルバムだろうか?

 

Desideratum

8THフル(2014)/From:イギリス/Style:インダストリアル

anaalnathrakh_8th

【Track】
1.Acheronta Movebimus
2.Unleash
3.Monstrum in Animo
4.The One Thing Needful
5.A Firm Foundation of Unyielding Despair
6.Desideratum
7.Idol
8.Sub Specie Aeterni (Of Maggots, and Humanity)
9.The Joystream
10.Rage and Red
11.Ita Mori

【Review】
ゲスト大量投入第二弾。総勢7名ほど参加している。その内の一人が【Shining(Swe)】でおなじみのNiklas Kvarforthであり、#10でヴォーカルとして参加している。

音源の方は前作の延長線上にあるモノの、インダストリアルである強みを活かし、前作以上にモダン化が進行した音源である。所謂、宇宙を舞台にした様な近未来的サイバーな感覚に溢れている中、ここ数作で確立されたメロディや歌メロの導入もしっかりと入っているといった贅沢な逸品である。インダストリアルを指標とするのであれば収まるところにキッチリ収まっているアルバムとも言えそうだ。彼らが持つレパートリーの中(ブラックを中心にデス/スラッシュ/グラインド/ハードコア/インダストリアル)でどの要素に力点を置くかで毎回アルバムごとに特色を付け、一貫したアナール節に染め上げている印象なのだがどう展開しても及第点を軽々と超えてくる。今作も例には漏れておらず流石である。

最早、今世紀におけるエクストリーム界の顔といっても決して言い過ぎでは無いと思う。