Valo aikojen takaa

1STフル(2016)/From:フィンランド/Style:メロディック│アトモスフェリック

antimateria_1st

【Track】
1.Intro
2.Sieltä mistä valokaan ei milloinkaan karkaa
3.Tieni kohti lopullista tuhoa
4.Roihuten läpi yötaivaan
5.Kun aukeaa mysteerit kuoleman
6.Kadoten merien hautaan
7.Valo aikojen takaa

【Review】
Ahmaなる人物による独りブラック・メタル、傑作デビューフルレングス。Purity Through Fireからのリリース。

プロジェクト名の”アンチマテリア”とは直訳すると”反物質”。何やら小難しい物理等が絡んできそうなプロジェクト名だが、自らを”Cosmic Glorifying Black Metal”と称しており、ここ最近多くなった”宇宙の神秘”にブラック・メタルを見出しているスタンスである。

音の方向性としては宇宙空間の虚無を表現する様な無機質なアトモスフィア(所謂【Darkspace】系)とは少し趣が違い、もっと叙情的で有機的な印象が強いのが特徴。方法論としてはペイガン系に近い方法論で構成された音源だと言えるだろうか。と言うか、ぶっちゃけ筆者の感性では宇宙って感覚はなかった次第。

ドカドカと走るパートはあるモノの、あくまで展開の一部でしかなく、主にゆったりとしたミドル・チューンがベースとなっている。そこに湿り気を帯び、しっとりとした(時として力強い)メロディで展開する。それらは叙情的であると同時に若干のクサみが感じられメランコリックな旋律が中心となっている。時に楽曲に覆いかぶさるシンセ・パートもそうだが、特にギターが奏でるリードメロディにはフィンランド産らしい聴かせどころが満載であり耳にスルスル入っていくメランコリックさが心地よい。

楽曲で例を挙げるのなら#3”Tieni kohti lopullista tuhoa”が割と顕著であり、邪悪ヴォイスとクリーヴォイスがハモるパートから狂おしくもメロウな展開へと雪崩れ込んでいく中盤から後半にかけてが実に素晴らしい。大胆なんだけどそれらを余り感じさせない絶妙な匙加減で紡がれていく。筆者にとってのキラーチューンの一つだ。また、#5”Kun aukeaa mysteerit kuoleman”もメロディ展開に哀愁を感じられずにはいられない良曲。

この様にどの楽曲にも実に分かり易い旋律が終始続いており正に胸を掻き毟られる逸品だ。

宇宙崇拝がテーマだが、どちらかと言うとペイガン/ヴァイキング系の哀愁が詰め込まれている作品であり、そっち系のファンには正にご馳走的作品である。これは堪んないでっせ。Great!