Coldworld
Coldworld
TheStarsAreDeadNow
EP(2005/2011)/From:ドイツ/Style:ディプレッシヴ│アンビエント
【Track】
1.This Empty Life
2.Hate
3.Cancer
4.Suicide
5.The Old Ghost in the Well
6.Dead Stars
7.Ragnarök
【Review】
本業はヴァイオリニストのGeorg Börner(G.B.)による独りディプレッシヴ・ブラック・メタル。2005年に自主制作でリリースされた音源だが2曲追加で再発、Zero Dimensinal Recordsのサブレーベル、Maa Productionsからリリースされた。帯まで付いており国内盤タイトルは一応”寂滅の星”となっている様だ。
【Coldworld】…読んで字の如く、身に染みる様な寒々しい世界が眼前に広がり、悲壮の中に美しさが見出だせる楽曲が特徴。
ブラック・メタルらしい掻き鳴らしリフとトレモロを主体とし、神秘的でひんやりとしたシンセが全体を包み込む極めてストレートでオーソドックスなスタイルだ。そこに絡むエフェクトで増幅された非人間的な絶叫は【Xasthur】辺りを彷彿とさせ悲痛さを際立たせている。この様にシンセが重要な役割を担う音響系ブラック・メタルとしてはステレオタイプと言えそうな作風だが、シンセが奏でるアンビエンスが氷に覆われた極寒の極地を連想させるサウンドスケープ風である。
故にディプレッシヴ系ファンは元より寒々しいコールド・ブラック・メタルファン、そしてサウンドスケープ風アンビエントがお好きな方にも幅広い訴求力がある作品かと思う。
続く名盤”Melancholie²”程、ハッキリとした物語性は無いが、氷に覆われた情景が脳裏に浮かぶ様な氷点下アンビエンスは極上。聴き手を極寒の地へと誘ってくれる。
Melancholie²
1STフル(2008)/From:ドイツ/Style:ディプレッシヴ│アンビエント
【Track】
1.Dream of a Dead Sun
2.Tortured by Solitude
3.Winterreise
4.Schmerzensschreie
5.Red Snow
6.Stille
7.Hymn to Eternal Frost
8.My Dead Bride
9.Escape
【Review】
言わずと知れた名盤1ST。Cold Dimensionsからのリリース。悲壮から溢れ出る美意識が早くも極まった逸品。何せ”メランコリー”の二乗である。タイトルの念押しからも並々ならぬ意気込みを感じさせる。
前作と比べ、一聴して音がゴージャスになっており、単純に質の高さがググッとアップしている。今作ではヴァイオリンの導入やシンセの音色なども増量されておりワンランク格調が高くなったと言えよう。前作は良質なディプレッシヴ・ブラックで留まっていたのに対し、音のバリエーションのパワーアップが著しく、それによって楽曲が表現できる幅が上がっている。様々な情景描写を楽しむ事ができ、正に”良質”から”絶品”へと進化のコマを進めている。
そういった品質面だけでなく、楽曲の内容も情景がしっかりとイメージできる程に完成度が高く、楽曲自体の引き出しもかなり豊富で、過酷で時に穏やかだったりと決して画一的に陥らない。
ディプレッシヴ系にしては寒々しく疾走する#1”Dream of a Dead Sun”を皮切りに物悲しいフレーズ満載のアーティスティックなナンバーが目白押しなのである。特に唸ったのは中盤から終盤にかけての展開だろうか。孤独と死を感じさせる#5”Red Snow”から切ないメロディを引き継ぎ#6”Stille”のインストへと繋ぎ、死のイメージを残しつつ何処か穏やかな雰囲気もある#7”Hymn to Eternal Frost”へと至る展開が実に秀逸だと感じた次第。
この一連の流れをイメージで例えると”冬山で遭難、やがて力尽き、死にゆく際にみる走馬灯”である。
余談だがアルバムの最後は”死後の世界は桃源郷だった”的な、実に穏やかなインストで〆るのだが、バックでジリジリと耳障りなノイズが時折入り込むというちょっとした仕掛けがある。それが生と死の狭間にある境界の様なモノを連想させ、なかなか悪意ある演出だなぁと感じたのだが…。実際の意図はどうなんだろ?
ともかくGreat!
Autumn
2NDフル(2016)/From:ドイツ/Style:ディプレッシヴ│アンビエント
【Track】
1.Scars
2.Void
3.Womb of Emptiness
4.Autumn Shades
5.The Wind and the Leaves
6.Climax of Sorrow
7.Nightfall
8.Escape II
【Review】
アルバム・タイトル通り”秋”を連想させる色彩、そして頭を抱え絶望するメランコリックな女性でアートワークに関しては100点満点(笑)前作と同じくCold Dimensionsからリリースされた。
プロダクションが更に向上しており、上質な味わいかつ非常にクオリティが高く仕上がっている。前作では極寒アンビエンスとしっかりと死を感じさせるディプレッシヴさが絶妙な絡みを有した音だったが、今作はジャケから連想できるようなセンチメンタルな内容になっている。
メロディラインがしっかりとしており、どちらかと言えばアンビエンス的に”感じさせる”からメロディを”聴かす”方向へシフトした印象を受けた。また、絶叫一本だったが、その絶叫も表現力が付いており朗々と歌うクリーンヴォイスもいよいよ解禁、更には#2”Void”においては女性コーラスを導入するなど、ディプレッシヴ・ブラックが描く”暗鬱”というよりかは”憂い”に力点を置いた楽曲群になっている。
テーマ的にも過酷で辛い死を連想させる様な要素は今作においては控えめである。当然、ブラック・メタル的に牙を剥くパートも頻繁にあるが、ディプレッシヴ系として些かキレイになり過ぎたかな?という側面は否めない。故に死に直結した暗鬱さを期待するなら肩透かしだろう。
しかしながら、儚くも美しく、タイトル通り秋ならではの寂しさみたいな感情がアルバムにギュッと詰まっており、グイグイと聴き手を牽引いく楽曲は単純に素敵。これはG.B.の作曲能力の高さの証明であると思う。胸が締め付けられそうな全8曲!
流石の完成度にぐうの音も出ない。Great!
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