Visionary

1STフル(2009/2011)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Åpenbaring
2.Word of Uncreation
3.Void
4.Djevelens lys
5.The Opposing Ideal
6.Warfare by Witchcraft
7.Interlude
8.Raziel
9.En hyllest
10.Frelserens ord
11.Glorious Salvation
12.Torner i snøen

【Review】
二人組ブラック・メタル。2009年にSatanic Propaganda Recordsからリリースされた1STアルバムを2011年にDaemon Worship Productionsが再発したモノ。

音源の方はあくまでRawに徹したドガドガと豪快な疾走、トレモロ、掻き鳴らし・リフにて邪悪なムードを作り上げ、怨念と言うべき変化自在に声色をコントロールする気狂いヴォーカルがねっとりと絡み付く。一つ一つの要素にしっかりと聴き所があるといった印象。所謂、Rawでありながら展開を重んじる硬派なスタイルだと言えそうだ。また、奏でる旋律が意外とメロディアスなので、取っ付き易く、聴き易いといった側面があるのだが、人を寄せ付けないようなドス黒い雰囲気もまたソレと同じ位にあり、結果として世界観が歪かつ独特なモノになっている点が最大の特徴。それに伴った音作りも中々に面白い。顕著なのが#3におけるピッチを狂わせた様なギターや、水っぽいヴォーカルパフォーマンスなど、なんとも気色悪カッコイイ(笑)そういったネタ的な部分を除いたとしてもブラック・メタルとしてカッコ良く、Raw音源としてのクオリティも高い。

かつての【Mayhem】(1ST)辺りに通じる不気味さ、不穏さ、邪悪さを彷彿とさせる…といっても決して大袈裟な表現では無い。この手は没個性が多い中、ある程度のブラック・メタル様式を守りつつ、オリジナリティが見え隠れしている所がなんとも末恐ろしい存在。まだまだノルウェイジャン・ブラック・メタルに可能性を見出だせる作品である。

 

Mirium Occultum

2NDフル(2010)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Azonei Wyrdwalker
2.Evocation of Amezarak
3.Alor Mal Ki
4.A Word to Conquer the Aeon
5.Lucifer Ascendant

【Review】
2010年以降にリリースされたブラック・メタルの中でも一際完成度が高く、既に良作の一つと名高い作品。19分を超える曲があったりと随分と大作志向な路線を打ち出している。相変わらず気味の悪い歪な世界観は健在。それはジャケットのアートワークにもしっかり反映されており、一見チープでしょぼく我々の目に映るが、同時に只ならぬモノを予感させ、記憶に刷り込まれそうなナイスなジャケットである(笑)

さて音の方は前作と同様、適度にRawな演奏を軸にドカドカと野蛮に疾走、仄かに感じ取れる荒涼とした世界観にしっかりと緩急を付けた曲展開、そして何よりもドス黒い負のオーラを纏っている。前作同様、音作りがカッコ良く、ギターの歪ませ方、限定的だがピッチを狂わせた様な音が入ったりと小技が冴えており、個々のサウンドパーツが印象深い。また、ヴォーカル・ワークも素晴らしく、苦悶する様を表現する暗鬱っぷりも随所で聴け垣間見れる。特にそれらの要素を存分に味わえる19分の大作”Evocation of Amezarak”において顕著であり、今作におけるハイライトと言えるだろう。展開も充実しておりミドルからの疾走、そしてドゥーミーな展開に雪崩れ込んだりと、長さを全く感じさせず、聴き応えも十分。

アルバム全体を通し、ブラック・メタルらしい荒涼感を軸にオカルトな側面やディプレッシヴな側面を内包しながらも、うまく消化し纏め上げていると思う。また、ブラック・メタルとしてのレベルも相当高い良作。

 

Dødsengel(S/T)

EP(2011)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

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【Track】
1.Assimūlare! (Assemblence) – Conjuration Within the Carnal..
2.Intrare! (Entrance) – A Trail I Leave, Through the Nine…
3.Apotheosis! – Resemblence, Though Altered Quintessence…
4.Liberalis (Liberation) – Exaltation Beyond the Cyclus…

【Review】
セルフタイトルのEP、4曲で28分弱ある。

今作は何処と無く密教っぽさが全体的に漂っており、オカルト色がより一層と色濃く出ている作品である。闇雲に突っ走る部分もあるが、基本的には雰囲気重視のミドルパートが主体。よって地味に聴こえるかも知れないが、楽曲が持つ根の深さと暗さは侮れない。これこそ深淵なるダークネス・ミュージックってヤツだ。楽曲に関してはクリーンギターを使い雰囲気を高めていく側面を取り入れつつも、やっぱりノイジーでRawなスタンスは貫かれており好印象だった。また、随所でクリーンヴォイスによるコーラスが入り込むのだが、どれも気味の悪い呪詛系であり、部分的に【Mayhem】のAttilaを彷彿とさせる程の気狂いっぷりが堪能できる。そういった面では#3、#4辺りが実に印象深い。ミドル・パートから徐々に盛り上がり、その盛り上がりに伴いヴォーカルも徐々に狂っていく下りなんかは、正に今作を象徴している。

こういった密教的とも言えるオカルト性が神秘性を助長、今作の聴きどころとなっている。

 

Imperator

3RDフル(2012)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

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【Track】
Disc 1

1.XXV
2.Sun on Earth
3.ΣΕΙΡHΝΕΣ
4.No Beginning, No End
5.Momentum: On the Devil & Death
6.Holy Metamorphosis
7.Apoph-Ra
8.Pneuma: Sidpa Bardo
9.Hymn to Pan
10.Asphyxia
11.Leap
12.Stellar Masturbation
13.The Serpent’s Head

Disc 2

1.Towers of Derinkuyu
2.Upon the Beast She Rideth
3.Ascending Beyond Good and Evil
4.Your Glory
5.Attainment
6.ΚΕΦΑΛΗΑ: Sabbath of the Goat
7.Darkness
8.The Supreme Ritual
9.XXV

【Review】
2枚組の超大作。 BarghestとTerratur Possessionsが共同してリリースしたモノである。因みにBarghestからは巾着袋に入った2本組テープもリリースされている。今回レビューするのはCD盤の方である。まずアートワークがかなり分厚く作りもしっかりとしており豪華で各レーベルの力の入れようが伺える。中のフォトも禍々しい装飾を纏ったメンバーに儀式風の光景が映し出されており、中々に興味深い。以前から音もそうであった様にメンバーもまたオカルト趣味全開なのである(笑)

さて、音源の方はクソ真面目に最初から通して聴くと2時間半持っていかれ、ちょっとした映画なら一本分は観れるという脅威の収録時間を誇る。最早、気軽に身を委ねるといったお手軽感は皆無で、ある程度構えて聴く必要がある(笑)当然、その長さに見合った楽曲展開であり、様々な展開を聴くことが出来る。

前回のEPである”Dødsengel”の拡大版と言える作風であり、暗黒アトモスフェリック的な側面が非常に強い。ミドルパートを基調としつつ、スロー・パートを盛り込みながら世界観を盛り上げており、時折、経典を読み上げている様な儀式的な展開もより色濃く反映されている点が特徴だと言えよう。実にオカルト色に統一されたドス黒い内容である。ヴォーカルも場面場面に合わせ様々な声色を使い分け、素晴らしいパフォーマンスを披露している一方、音作りも相変わらず面白い。女性コーラスで怪しさを演出したり、空間を感じさせるアトモスフェリックさだったりと集大成的な内容でドッシリと腰を据えて聴きたい逸品。

そういった面で芸術的な側面が強く、カッコイイとかそういった単純な次元では語れない内容に仕上がっている。正に宇宙にまで広がりを見せるかの如く、壮大で禍々しいアルバムとなっている。ブックレットを見ていると、どうやらアレイスター・クロウリーを師と仰いでいる様で、歌詞に引用する部分があったりするみたいだ。(Disk-1の#9、Disk-2の#6-#8)

今回の作品でアートな一面が露呈されたが、こんな大作を放ってしまった後、一体どんな展開を聴かせてくれるのか楽しみである。ただ、掻い摘んで聴くようなアルバムでも無いので、長尺過ぎる点が唯一の難点か…。次はもう少し短いのでお願いしたい。

 

Alongside Choronzon / Ecstatic Horror

Comp(2014)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

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【Track】
-Alongside Choronzon-

1.Contra Mundi
2.Vi, Templa Diaboli
3.Of Kali, of Seth, of Satan!
4.The City of Pyramids

-Ecstatic Horror-

5.Axis Mundi
6.Unchained and Reborn

【Review】
2枚のアナログEPを一つに纏めてGenuflextionより再リリースされたモノである。#1-#4が”Alongside Choronzon”。#5-#6が”Ecstatic Horror”である。何れも2010年にリリースされていた音源である。1ST~3RDまでの路線を一通りなぞった様な内容なので今までの【Dødsengel】が掌握できる作品といえるのではないだろうか。

-Alongside Choronzon-
ファストな展開もあるが、基本的にはミドル・パートでじっくりと闇を描いていく路線で小綺麗な展開などあるワケでも無く安定の暗黒度と密教具合といった所であろう(笑)気狂い的ヴォーカルとパイプオルガンがせめぎ合う#3がハイライト。このバンドが目指しているであろう方向性がしっかりと示されている様に思う。オープニングとエンディングの#1と#4も怪しさが爆発しておりGood。

-Ecstatic Horror-
比較的、1ST辺りの路線に回帰した様な音源である。メロウでファストな曲で1ST辺りの感覚を思い起こさせる#5、オカルト的な空気感を大胆に盛り込みつつも、オールド・スクールなノリで突っ走る#6と、久しぶりに勢いある【Dødsengel】が聴ける(笑)個人的に特に#2みたいなオールド・スクールとオカルト性を組み合わせたスタイルの楽曲はこれからも定期的にちょいちょい挟んでほしい路線である。