Judas Iscariot
The Cold Earth Slept Below…
1STフル(1996)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.Damned Below Judas
2.Wrath
3.Babylon
4.The Cold Earth Slept Below
5.Midnight Frost
6.Ye Blessed Creatures
7.Reign
8.Fidelity
9.Nietzsche
【Review】
Akhenatenによる独りブラック・メタル。【Heidegger】から名前を改めての1ST。
アメリカのブラック・メタルのシーンに君臨していた孤高のブラック・メタル。【Xasthur】や【Nachtmystium】、【Leviathan(US)】辺りが出てきた2000年辺りから北欧的な湿ったスタンスを掲げるバンドが次々と浮上し、シーンを賑やかしてきたが一昔前のアメリカ産ブラック・メタルと言えば、暴虐的でデス・メタル的で攻撃的な姿勢のバンドが多かった様に思う。そんな中、昔から北欧っぽい音をアピールしていた代表と言うべきブラック・メタルがこの【Judas Iscariot】である。
所謂、コテコテのノルウェイジャン・スタイルであり、モロに3RD辺りの【Darkthrone】直系型と言えるだろう。仄かに荒涼感を感じさせるシンプルなリフの反復、単調なリズムを叩きつつローファイな音をもって展開する、まさに教科書通りのプリミティヴ・ブラック・メタル。時折、やたら渋いスローパートや必死にブラストする展開があり(#2なんかはショートカット・グラインドっぽく、浮いているが/笑)、一聴して緩急を付けていると言えそうだが、楽曲自体がフックに乏しいので単調さ、無愛想さを露呈している。しかしながら、この単調かつ無愛想さこそ、プリミティヴの真髄。以後、独りこの路線を貫き伝説となっていく、記念すべき作品である。
アメリカのブラック・メタルは?と、問われると【Judas Iscariot】を真っ先に連想してしまう。
Thy Dying Light
2NDフル(1996)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.But Eternals Beheld His Vast Forests…
2.His Eternal Life, like a Dream Was Obliterated…
3.Helpless It Lay, like a Worm in His Frozen Track…
4.Behold, Our Race of Unstoppable Genius…
5.From His Woven Darkness Above…
6.Writhing upon the Wind of Mystic Philosophy and Dreams…
7.They Saw His Pale Visage Emerge from the Darkness…
8.Thy Dying Light and Desolate Darkness…
9.Arise, My Lord of Infernal Wisdom…
【Review】
ささやかだが荒涼感がアップしているが基本的に前作の延長線上である。
力強さ、勢いも増してきた様に思う。時折、前作以上に必死さが滲み出ており、危なっかしくも懸命に走るドラムが熱すぎる。激走時にはバスドラムがボコボコ鳴っており、時折、全力で叩いているのが分かる必死さが愛おしい(特に#1!)前半に長尺な楽曲が集中しており、主にミドル・パートが中心である事から退屈する人が多そうなイメージ。個人的には【Darkthrone】の3部作に優るとも劣らないと思っている。(渋みはこちらの方が上かもしれない)また、ヴォーカルがEvilにガナるのだが、声質(声色)が非常にカッコ良く、短い言葉を吐き捨てるスタイルで【Satyricon】のSatyrを彷彿とさせる。このヴォーカルはブラック・メタルの中でもベストの部類に入ると思っている。ヴォーカルも演奏も全てが硬派な激渋スタイル。大推薦。
プリミティヴ好きは避けてはならないカッコイイ音源である。
Of Great Eternity
3RDフル(1997)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1. …the Heavens Drop with Human Gore…
2. …I Filled With Woes the Passing Wind…
3. …Then Mourns the Wanderer…
4. …for the Last Judgement Draweth Nigh…
5. …Calls to Heaven for Human Blood…
6. …Our Sons Shall Rule the Empire of the Sea…
【Review】
作風に割りと幅があるアルバムである。
#1は冒頭に薄っすらとシンセを用いており、音のクオリティも若干だが上昇傾向で音にも厚みも出てきた様に思う。ほぼヴォーカルレスな#2辺りは【Burzum】辺りの憂鬱な感覚に近いと言えるし、続く#3では#2の抑圧されたモノが弾けるように啖呵を切ったように走り出し、無愛想ながら緩急が付いたドラマティックな楽曲を演っている。以後、荒涼感タップリなファスト・チューンで最後まで突っ走るといった構成。特に最後の#6がこれぞ!と言ったトレモロ・リフが押し寄せており、決められた手法の中で色々展開している様に思えた。相変わらず、ヴォーカルは良い仕事をしているので、今までの路線が好きなら安心して聴ける事請け合いである。
前作ほどの渋みは無いが、まだまだ渋い。
Distant in Solitary Night
4THフル(1999)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.The Wind Stands Silent
2.Where the Winter Beats Incessant
3.The Black Clouds Roll Under the Parapet of the Sky
4.The Clear Moon, and the Glory of the Darkness
5.To the Black Tower of Victory
6.In the Bliss of the Eternal Valleys of Hate
7.Portions of Eternity Too Great for the Eye of Man
【Review】
これまで以上に荒涼感が大幅にアップし疾走曲が増えた事から、彼のアルバムの中でも一番聴きやすいと言えるのがこのアルバムである。
一般的に【Judas Iscariot】の代表作とも言えるだろうか?実際、リフや漂わせる雰囲気等が北欧ブラック・メタル・スタイルとして洗練されてきた様に思う。明確にメロディを奏でる#2、凍てつく様なシンセが寒々しさを表現する#4、ならではの荒涼たる情景が疾走し、プリミティヴ・ファンならガッツポーズであろう#5など、偉大なるノルウェイジャンのフォロワーっぷりがたっぷり堪能できる作品である。もう、ここまで貫き通すと天晴としか言い様がない(笑)そういった意味ではこのアルバムは分かり易く、馴染み深いモノとなっている。
初期ほどの渋みは無いが一般的に【Judas Iscariot】入門として最適なアルバムであり、名盤と謳われるのも分かる様な気がする。
Heaven In Flames
5THフル(1999)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.An Eternal Kingdom of Fire
2.Gaze Upon Heaven in Flames
3.Eternal Bliss… Eternal Death
4.Before a Circle of Darkness
5.From Hateful Visions
6.Spill the Blood of the Lamb
7.An Ancient Starry Sky
【Review】
今作ではリスム隊が強化されており、元【Broken Hope、Dying Fetus、Divine Empire】といったデス・メタル畑のドラマーであるCryptic Winterがゲスト・メンバーとしてドラムパートを担当。以前までのドラムにおける不安定さが無くなっている(笑)
楽曲の方は、これまで以上にシンセを大幅に取り入れつつ、雰囲気に重点を置いた作品である。それに伴い暗鬱な要素が随分と露骨に際立つ作品に仕上がっている。彼の音源の中でも屈指の根暗さを誇る音源であり、これらを総括する様な#1”An Eternal Kingdom of Fire”はブラック・メタルの中でも名曲として挙げるべきレベルである。暗雲立ち込める様な闇の濃度に関してはこのアルバムが一番良く表現されているし、何よりもリズム隊を強化したことにより、質、安定感が大幅にクオリティ・アップ。そして、これまでシンセ嫌いで通し、禁欲的に大幅なシンセ導入を見送ってきたAkhenatenがブラック・メタルとして最良のバランスでシンセを導入している点も見逃せない。これぞブラック・メタルにおける正しいシンセの使い方である(笑)大推薦!
大抵のブラック・メタルマニアなら持っているであろう、文句なしの名盤かと思う。
Dethroned, Conquered and Forgotten
EP(2000)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.Descent to the Abyss
2.Benevolent Whore, Dethroned for Eternity
3.Journey Through Visions of War
4.March upon a Mighty Throne
5.Spill the Blood of the Lamb (Special Blitzkrieg version)
【Review】
今作も引き続きCryptic Winterがドラムで参加している。
その恩恵が如実に表れており、彼の作品の中ではこのEPが最速と言える作品である。楽曲に漂う寒々とした荒涼感と猛烈かつ軽快なスピードで疾走するリズム隊、元々、クオリティが高かったEvilなヴォーカル・スタイル。そして、あくまでRawである事に拘った演奏。ある種、到達点に達しているのでは無いか?と思う。ブラック・メタルとして一つの理想形が完成していると言える。(少なくとも筆者にとっては。)音作り、演奏、ヴォーカル、どの角度から見てもEvil過ぎる。これは必聴かつ悶絶盤。【Judas Iscariot】でどのアルバムが良いか?と問われると、2ND、5TH、そしてこのEPを筆者は推す。
EPと言うことだが侮る無かれ。ホント恐ろしくカッコ良い。
To Embrace the Corpses Bleeding
6THフル(2002)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.I Awoke to a Night of Pain and Carnage
2.Bathed in Clouds of Blood
3.Terror from the Eastern Sky
4.Where Eagles Cry and Vultures Laugh
5.In the Valley of Death, I Am Their King
6.With Lust and Murder for Our Drink
7.Behold the Lamb of God Descending
8.Spectral Dance of the Macabre
9.The Dead Burst Forth from Their Tombs
【Review】
アルバムとしては最終作。この後、EPをリリースして終わらしている。
もはや、完全に信頼関係にある、と思われる(笑)Cryptic Winterも参加。前作のEPが一つの完成形を形成していたが、今回はその路線を推し進めフルサイズの作品を作り上げている。迫りくる吹雪のような展開と猛烈でファストな楽曲、大胆にシンセを取り入れたミドル・チューンの#5、オールド・スクールな感覚を醸し出す#8等、これまでを総括する感じではあるが、珍しく吹っ切れた様なファスト・チューンが中心である。あと、2,3曲程ミドルな曲も聴きたかった様な気もするが…。ストイックなまでにブラック・メタルを貫き通し、順当かつ一歩づつ着実に進化してきたAkhenatenの到達点と言うべき作品である。個人的には前作であるEPの方が好みだがコレも相当なアルバムである。
今思うと、初期の様な渋みは消えてしまったが、彼の歩みは正にブラック・メタルそのモノであった!天晴ッ!
Moonlight Butchery
EP(2002)/From:アメリカ/Style:プリミティヴ
【Track】
1.Moonlight Butchery
2.Death’s Hammer
3.Benevolence Crucified
4.Conjuring Hell’s Fire(Bonus Track)
【Review】
ラストアルバムに入っていなかった叙情的なミドル・チューンが聴ける作品。
今回はゲストで【Absu】のProscriptor McGovernが#1-#3でドラムを叩いている。一方、#4(一応、Bonus Track扱いだそうだ)はこれまで通りCriptic Winterがドラムを担当している。さて、作品のハイライトとなるのは作品の核となるミドル・チューンである#1-#3であろう。シンセで情景を描写しながらゆっくり力強く展開していく#1、掻き鳴らすギターに力強いリズムが乗り、一転してブラストに雪崩れ込む#2、5TH辺りで聴けたジワジワとメロウな展開がたまらない#3と、流石の粒揃いである。一転して汚らしいRawプリミティヴさが爆発する#4もアホみたいに強力で悶絶に値する。
最後のスタジオ新作がEPであるのが、少々残念だが作品としては実に素晴らしい。
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