Geesten van de verlorenen

1STフル(2017)/From:オランダ/Style:プリミティヴ

【Track】
1.Kroning ter ziele
2.Doodse kilte
3.De poorten van Aaru
4.Riten van de maankoning
5.De steen der wijzen
6.Eenzame oorlog
7.Lichtloos duister
8.Geesten van de verlorenen

【Review】
オランダのVaal(Vo./Gt./Dr.)なる人物が演っている独りブラック・メタル。セッションメンバーとしてMorden(Ba.)なる人物を迎え制作された1STフルレングス。New Era Productionsからリリースされている。

様々なジャンルを飲み込みながら多様化が進む昨今のブラック・メタル・シーン、そんな時代にびっくりするほど古臭いプリミティヴ・ブラック・メタルを真正面から向き合い、胸を張ってぶっ込んでくる非常に硬派なプロジェクトである。

勿論、現代にも90年代リスペクトとして90年代”風”のスタイルを掲げるバンドはゴマンと存在しているワケだが、大抵は”~風”で落ち着いているバンドが多い様な気がする。多くの場合、何だかんだいってメロウさであるとか、やたらとノイジーにしてみたりとか、何かと”+α”の部分を誇張する風潮が少なからずあると思うのだ。90年代風ではあるけれど、90年代に実際に存在していたか?と問われるとちょっと違う…みたいな、微妙なニュアンスではあるが。言わば、今の時代に求められている音を”90年代ナイズしている”といった表現がしっくりくるのではないだろうか(勿論、それが悪いわけではないし、むしろ筆者は大好物だ)。

しかし、このバンドはそんな”~風”バンドとは一味違うモノが楽曲からビンビンと感じられた次第。筆者の語彙レベルでは表現し辛いのだが、細胞レベルで”90年代プリミティヴ”再現というのが徹底出来ていると感じられた。こんな音が2017年のリリースであること自体にまず驚くし、「90年代からタイムスリップしてきたのでは?」と思えるほどのプリミティヴさがあるので、実にリアルな聴き心地なのである。ブックレットにも「Heil The Old Ways!」だとか、オールド・スクールでプリミティヴなブラック・メタルに対してのアツいメッセージが堂々と掲載されており、かなり酔狂的なスタンスであることからも窺えるだろう。

若干、奥に引っ込んだエコーの掛かったヴォーカル、かき鳴らされる無愛想なリフ、激しすぎない湿った感覚、そして不穏でありながらも何処かトラディショナルさを感じさせる絶妙な塩梅のアトモスフィア、おまけに派手な展開も大して無い。

でもこういうのが確かにスタンダードだった。「そう言えば、こんな路線を演っていた有名無名バンドがゴロゴロしてたなぁ」と凄い懐かしい感覚が鮮明に蘇るのである。そう、筆者が思い描く「プリミティヴ」の定義とは正にコレで、ブラック・メタルでしかないといった無個性こそが個性なのである。

プリミティヴを代表する初期【Darkthrone】を筆頭とした有名無名バンドの何にでも当て嵌まる様な(思い当たるフシがある)部分が多々あるのが特にリアルだと感じた次第。少なくとも、色々と装飾されている様なイマドキの音じゃない。

オールド・スクールなプリミティヴ・ブラックが好きな方にはご馳走、オッサン以外に需要あるのか?と言いたくなる、そんな100%プリミティヴ!ごっつあんです。

Love&Great!