Drakonian Paradigm

1STフル(2009)/From:カナダ/Style:デス│ブラック

【Track】
1.Weapon
2.Cacophony! Black Sun Dragon’s Tongue!
3.Serpentine Ayat
4.Mortem Pyre (In Darkness and Blood)
5.Archana
6.Drakonian Paradigm: The Flame of All
7.Remnants of a Burnt Mosque

【Review】
バングラディッシュ出身のVetis Monarchがカナダに移住し結成された4人組のブラッケンド・デス・メタル。The Ajna Offensiveからリリースされた。

何やらアンチ・イスラムな思想があるらしく、#7”Remnants of a Burnt Mosque”(焼けたモスクの跡地みたいな意味だと思う)の曲名をみると何となく頷ける(笑)。

楽曲はヘヴィでザックリとしたリフを軸に80年代風のダサい(褒め言葉)掛け声コーラスが入ったりする懐かしいスラッシュ・メタルを想起させる作風。この様に一見、オールドスクールでオーソドックスなスタイルと見せかけて実は細かい部分で変則的な匂いがムンムンと漂っている個性派なのである。

時折入り込むピアノやシンセ、アコギもそうだが、限定的にシタール(民族弦楽器)なども飛び込んでくる。また、ドラムが直線的でなく緩急の付け方になんとなく個性があったり、リードギターがHR/HM風ギターソロを弾いたりとこの手にしてはなかなか一筋縄ではいかないスタイルである。

書いてる事が意味不明かと思われるかもしれないが、スラッシュを経由したデス・メタルの要素が大部分を占めており、逆にブラック・メタル的要素は殆ど感じられないのだが…聴き終わった時に振り返るとやっぱりブラック・メタルの一種だったのか?となる何とも不思議なタイプだ(笑)。バンド名が【Weapon】なのでウォーでダーティーな音源のつもりで聴くと少し予定調和が乱される感じと書けばわかりやすいかも知れない。尚、音源の概要としては前半がスラッシュ・ティストが強く、後半になるにつれ雰囲気的な要素が色濃くなっていく。

しかしながら、一旦この不思議な灰汁というか個性に慣れてしまうとクセになる魔法が掛かっており、間違いなく面白い作品だと思うしこれが妙にカッコイイのだ。オーソドックスながらヘヴィかつ細かく刻むスラッシーなリフを軸に疾走するといった構図にはメタラーならやはり興奮するモノだろうし、ガナリヴォイスで小気味よく吐き捨てるヴォーカルも全作品を通して一貫しており実にカッコ良い。

比較的#5”Archana”が雰囲気を押し出すパートとアグレッシヴに走り回るパートがハッキリしているので、このアルバムが持つ特徴が出ているのでサンプルにするには良い楽曲かと。気になる方はどこぞで聴いてくだされ。

 

From the Devil’s Tomb

2NDフル(2010)/From:カナダ/Style:デス│ブラック

【Track】
1.From the Devil’s Tomb
2.Vested in Surplice, and Violet Stole
3.Furor Divinus
4.Vortex – 11724
5.Lefthandpathyoga
6.The Inner Wolf
7.Sardonyx
8.Trishul
9.Towards the Uncreated

【Review】
Vetis Monarch率いる4人組ブラッケンド・デス・メタル。BaとGtのメンバーが2名交代している模様。今作もThe Ajna Offensiveからのリリースだが、ポーランドのAgonia Recordsからもリリースされている。因みに今回レビューしているのはThe Ajna Offensive盤であり、おそらく内容には違いはないはず。

宗教色を匂わせるアートワークが実に素晴らしく、何処と無く神聖さを感じさせつつも完全に禍々しい感じがまるで本作のサウンドを表しているかの様だ。

音の方は前作を踏襲しているモノの若干感じられた灰汁が完全に消え去り、非常にクオリティの高いデス/ブラックに仕上がっている。前作で感じられたHR/HM調のギターソロはやや残るモノの、完全に雰囲気にあったテイストに上手くローカライズされ、オーソドックスなスラッシュなリフもまた不敵で堂々たるデス・メタル的な威厳を醸し出すスタイルへと姿を変えた。これにより、随所で奏でられるオリエンタルなアレンジも威厳ある雰囲気に程よくマッチしており実に良いアクセントになっている。またバンド・サウンドが渾然一体となった時の圧とドラムの激しさもグッと増しており禍々しさと攻撃性を伴った迫力あるサウンドに仕上がっている。

おっと、書き忘れる所だったが、80年代風ダサい掛け声コーラスはすっかり無くなってたりする(これはこれで、ちょっと残念だが/笑)。

基本的な楽曲の展開や流れ、大まかな外枠は前作を踏襲しているとは言え、ちょっとした事で灰汁って消えるもんなんだなぁと少し感心した次第。故に前作にあった変則的な面白みは減退した代わりに堂々としたデス/ブラックならではのカッコ良さを手に入れたといった印象だ。

また、作品中に散りばめられたオルガンやシンセの使い方も節度ある使い方をしており禍々しさを盛り上げる要因として一役買っている。カッコ良し!

 

Embers and Revelations

3RDフル(2012)/From:カナダ/Style:デス│ブラック

【Track】
1.The First Witnesses of Lucifer
2.Vanguard of the Morning Star
3.Crepuscular Swamp, Unhinged Swine
4.Liber Lilith
5.Grotesque Carven Portal
6.Embers and Revelations
7.Disavowing Each in Aum
8.Shahenshah

【Review】
Vetis Monarch率いる4人組ブラッケンド・デス・メタル。Gtの一人が後退した模様。今回はグラインド・コアやデス・メタルなど多くの有名アーティストが所属するRelapse Recordsからリリースされている。Relapseということで国内盤も用意されているので流通も良いし、正に大出世といった所だろう(筆者が所有しているのは輸入盤だが)。

さて、音の方は大枠では前作を踏襲しているモノの音質が随分とクリアになって整理整頓が行き届いた丁寧な音作りになっている。前作まであったシンセやオルガンなどを用いた特徴的なアレンジは影を潜め、よりバンド・サウンドを重視した内容になっている事から総じてラウドな感触が強まった様に思う。ブラッケンド・デス・メタルとしては些かキレイ過ぎる音質とも言えそうだが、音の分離と鋭さが増しており矢継ぎ早に展開する楽曲をより一層引き立てていると思うし実に格好よし。

また、新加入したギタリストによるリードギターが冴えまくっており、随所でキュルキュルピロピロと「我はギターヒーローなり!」って感じで弾きまくっているのが実に印象深かかった。何というか【Slayer】とかが放ちそうなエキセントリックさがあると同時に、仄かな色気を感じさせる様な不思議な塩梅とでも言うべきか…それをブラッケンド・デス・メタルに絡ませているといった部分に個性を感じた次第。

この様に前作で放たれていた禍々しさは幾分抑えられた感じだが、エクストリームなメタルとして間違いなく洗練されており単純に完成度が高い作品に仕上がっている。尚、ギターソロなどのフレーズを聴いていると一般的なブラッケンドなデス・メタルとは少し異なる感覚が入っているので、一見、オーソドックスだが細かい所で個性的といった1STを初めて聴いた時に感じた印象がそのまんま当て嵌まる事に気付く。当然、灰汁は完全に抜けており洗練されているのは言うまでもない。Great!

因みにこのアルバムを最後に解散した模様。