White Death(S/T)

1STフル(2017)/From:フィンランド/Style:メロディック

【Track】
1.Born from the Unholy Fire
2.Immortal Hunter of the Moon
3.Kaste
4.Goat Emperor
5.Warpath
6.Cunt
7.Commandant
8.White Death’s Power

【Review】
5人組ブラック・メタル(現在は4人組になった模様)。フィンランドのアングラ界を牽引する重要レーベルWerewolf Recordsからリリースされたデビューアルバムである。

バンド名の由来はフィンランドの軍人で英雄でもあった伝説のスナイパー「Simo Häyhä(シモ・ヘイヘ)」(1905-2002)の”通り名”から拝借している模様。フィンランドとソビエト連邦の間で起こった冬戦争(1939年-1940年)において凄腕が故に敵国から「The White Death(白い死神)」と恐れられていた人物だったそうだ。因みに記録では542名を射殺したとされており、これはスナイパーとしては史上最多だったとされている。(Wikipediaより)

ってなワケでWerewolf Records所属のフィニッシュ・”メロウ”・サウンドが好みなら一撃でスナイプされるだろう素晴らしい逸品となっている。

音楽性は同郷バンドで言うと【Satanic Warmaster】や【Horna】、フォークを演ってない時の【Goatmoon】辺りが恐らくは引き合いに出てくるであろう、ある意味定番のスタイルと言えようか。この界隈の音が好きなら恐らく間違いないハズ。

ハイテンションに喚き散らす絶叫ヴォーカル、寒々しくも北欧らしいメロウさが漂うリフ、時折、控え目に入り込む大仰になり過ぎないシンセ、緩急を付けながらも前傾姿勢でエネルギッシュに疾走する一連のフィニッシュ・サウンド炸裂である。

決して緻密で大掛かりなアレンジを施す”スタジオに引き篭もって曲を練る”といった芸術肌なタイプではなく、あくまでフットワークが軽めの、言わばバンド・サウンドの良さを活かしたオールド・スクールさも魅力の一つではないかと思う。言い換えればRawさを感じさせつつも、プリミティヴ感はあまり感じられないしっかりとしたサウンドといった印象で、Werewolf Recordsのレーベルカラーが色濃く感じられつつも、一定のクオリティが確保されたバランスの良い音源に仕上がっていると思う。

一方で肝となるメロウさに関しては確かに全面に押し出されているモノの、しっかりとサタニックな展開からメロウさに至る導線が確保されている為、聴いていて燃えるし、何よりも聴きやすく仕上がっているのがポイント。そういった面ではアルバムの掴みである#1”Born from the Unholy Fire”辺りは正に往年の【Satanic Warmaster】に通じるカッコ良さを有しており非常にカッコ良い。また、喚き散らしヴォーカルからクリーンなヴォーカルまで取り入れた、大胆な勇壮さとメロウさを誇る#8”White Death’s Power”の様なオーセンティックで泥臭くも漢らしいメタリックな楽曲も演っている。また、これは余談だが曲名が”Cunt”(#6)と下品で卑猥でありながら、何故か勇壮かつメロウな旋律が飛び込んでくるチグハグ感もまた素敵。なんでこーなったんや?と問い詰めたい所である(笑)

最近、アトモスフェリック系の台頭により、楽曲が長くなる事がトレンドとなっている様な気がするブラック界隈だが、一曲4~5分台とコンパクトに収まっているのも個人的にポイントが高かった次第。勿論、曲の長さはスタイルに依存するモノだが、このアルバムの様に全7曲34分弱と短い位が40過ぎたオッサンには丁度良かったりする(笑)

ともあれ、バランスの取れた これぞSatanic ”KVLT” Metalだ!Great!