1349

1349(S/T)

EP(2001)/From:ノルウェー/Style:プリミティヴ│オールド・スクール

1349_ep

【Track】
1.End of All
2.Antichrist Warzone
3.Chaos Within
4.The Usurper(Celtic Frost cover)

【Review】
4人組ブラック・メタル。Holycaust Recordsからのリリース。【Satyricon】のFrostがゲスト参加していることで話題になった。(後に正式に加入)バンド名は西暦1349年、ノルウェーでペスト(黒死病)が蔓延し大流行したという年号に由来しているそうだ。物騒で如何にもブラック・メタルらしいバンド名だが音の方も名前負けしない強力なバンドである。

基本的にはRaw│プリミティヴ路線でありながら、ややオールド・スクールな感覚も含む渋い線を突いた音源であり、温故知新を体現する硬派なスタイルと言える。まるで病魔がジワジワと迫り来る様な不穏なリフを軸に、随所で暴れまわる印象的なトレモロで程良くフックを付け、最強助っ人Frostによる激烈Rawドラミングでアクセントを付けているといった感じだろうか。また、Ravnの吐き捨てる様にガナり立てるEvilなヴォーカルもスタンダードながら楽曲の空気にマッチしており強烈。正に病魔を撒き散らす様な不穏さとダーティさに満ち溢れた音源に仕上がってるかと思う。

また、Live感やRawな雰囲気がこの作品からヒシヒシと感じられ、取り分け生演奏にこだわっている印象がある。よって口が裂けても良質な音質とは言い難いモノの、スタジオにこもって加工したり、チマチマとした小細工をあまり感じない硬派な姿勢がGood。そこを意識して聴くとFrostのドラミングが如何に強烈かと言う事がよく分かるのではないだろうか?

尚、最後の曲は【Celtic Frost】の名曲カヴァー。ここではRavnがドラムを叩いているのだが収録されている中でも一際Rawな仕上がりでGreat!

 

Liberation

1STフル(2003)/From:ノルウェー/Style:Raw│プリミティヴ│ファスト

1349_1st

【Track】
1.Manifest
2.I Breathe Spears
3.Riders of the Apocalypse
4.Deathmarch
5.Pitch Black
6.Satanic Propaganda
7.Legion
8.Evil Oath
9.Liberation
10.Buried by Time and Dust (Mayhem cover)

【Review】
Frostが正式に加入し5人体制になった名盤1ST。本作はCandlelight Records、そしてIrond Recordsから同時にリリースされている。(ダブルブッキング?)筆者が所有しているのはCandlelight盤。

今作では低音を徹底的にカットしたプリミティヴな音像にてノイジーにそして苛烈に畳み掛け、タガが外れた様な規格外の喧しさを誇る。スラッシーなリフやトレモロを駆使しながらあくまで邪悪であることに拘った極上のエクストリーム・サウンドを展開。また、言わずもかな正式メンバーとなったFrostの活躍が実に顕著で間違いなく今作の聴き所の一つと言えるだろう。直線的なスピード感は勿論のこと、まるで雷鳴が轟いている様なタム回しでアクセントを付けたりと正に全身全霊という言葉に相応しいドラミングが全編余すこと無く堪能できる。これらの音が混ざり合い、正に”瘴気”と言うべきオーラを撒き散らしており”如何わしい苛烈さ”を見事に体現したアルバムだと思う。

思わず焦燥感を感じてしまう様なノイジー極まりない病的な音の調整も【1349】と名乗るだけあってイメージ通り!ホント【1349】とはよく言ったモノだなぁとこの機会に改めて感心してしまった次第。ファスト、Raw/プリミティヴと…この辺をキーワードにしている方にとっては美味しい部分が全部入りと言える。

私事だが#3の”Riders of the Apocalypse”が筆者にとってのキラーソング。単純にいつ聴いてもテンションがブチ上がる。また不穏な雰囲気のインストから雪崩れ込むラストの【Mayhem】のカヴァーも【1349】流の邪気を放っておりナイスなカヴァーに仕上がっている。Great!

 

Beyond the Apocalypse

2NDフル(2004)/From:ノルウェー/Style:ファスト│ブルータル

1349_2nd

【Track】
1.Chasing Dragons
2.Beyond the Apocalypse
3.Aiwass-Aeon
4.Nekronatalenheten
5.Perished in Pain
6.Singer of Strange Songs
7.Blood Is the Mortar
8.Internal Winter
9.The Blade

【Review】
名盤パート2。Candlelight Recordsからのリリース。尚、ジャケ写はノルウェイジャン・ブラック・メタルをテーマにし、ここ日本にも個展を開いたことがあるカメラマンPeter Beste氏が手掛けている。また、プロデューサーはノルウェーのベテランHM/HRバンド【TNT】のRonni Le TekrøとRavnによる協同作業との事。大枠で同じメタル界とはいえ、畑違いのベテランを起用するなど意欲的で力が入っているという事が伺える。

さて出来上がった音の方は彼らが発表した音源の中でも取り分け疾走感が感じられ、実にキレのある音源となっている。それに伴い、前作で感じられたプリミティヴ感は完全に払拭されている。言い換えると音が整然とし明らかに分厚くなったと表現できるかと思う。一方、勢いや苛烈さといった観点でも前作を踏襲・凌駕しており隙が見当たらず、順当で理想的なパワーアップを遂げている様に思う。

やたらとダイナミックになったスラッシーなリフに要所要所でここぞと暴れだすトレモロなど、ギターサウンドの強化が著しく、苛烈さをスポイルすること無く聴き易さに繋げている実にナイスな調整かと思う。またFrostのドラミングも力強さが増しており、ブラストは勿論のこと、2ビートで疾走する割合が増えたように思う。これにより物理的な速さと言うよりかはドライヴ感を醸し出している点も素晴らしい。

前作から改善を経てパワーアップが図られている名盤。1ST及び2NDはファスト・ブラック・メタルファン垂涎の逸品。Great!

 

Hellfire

3RDフル(2005)/From:ノルウェー/Style:ファスト│ブルータル

1349_3rd

【Track】
1.I Am Abomination
2.Nathicana
3.Sculptor of Flesh
4.Celestial Deconstruction
5.To Rottendom
6.From the Deeps
7.Slaves to Slaughter
8.Hellfire

【Review】
メンバーはそのままで作成された安定の三作目。今作もCandlelight Recordsからのリリースとなっている。

何よりも「Hellfire!」と呟き(?)から始まる#1で掴みはOKではなかろうか(笑)

音の方はスラッシュ色がやや減退し、どちらかと言えば荘厳さを全面に押す様な堂々たるブルータル・ブラック・メタル路線へ駒を進めた。Frostによる注目のドラミングも緩急を付けながら力強いブラストが多かったりするので、疾走感と言うよりかは曲の雰囲気に合わせている様なスタイルになっている。(とは言えスラッシーな#3とか疾走感がある曲も健在)

また随所で紡がれる印象的な荘厳さを感じさせるメロディが今作の最大の特色かと思う。それは#2を筆頭に顕著に現れており堂々たる威厳を身につけた様な印象。尚、ラストは13分ある大作にチャレンジしており曲に多様性が増している点も見逃せない要素の一つである。このバンドの特徴でもある疾走する爽快さに関しては前二作と比べるとやや控え目でどちらかと言えば重々しくなった印象だが、まだまだファストであり今回、雰囲気を重んじるブラック・メタルとしての引き出しの一つを披露したに過ぎない。

これもまた非常に質が高く優秀な作品となっている。Great!

 

Revelations of the Black Flame
-Works of Fire, Forces of Hell

4THフル(2009)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル│ドゥーム

1349_4th

【Track】
Disc 1 – Revelations of the Black Flame
1.Invocation
2.Serpentine Sibilance
3.Horns
4.Maggot Fetus… Teeth like Thorns
5.Misanthropy
6.Uncreation
7.Set the Controls for the Heart of the Sun (Pink Floyd cover)
8.Solitude
9.At the Gate…

Disc 2 – Works of Fire, Forces of Hell
1.Hellfire
2.Chasing Dragons
3.Satanic Propaganda
4.I Am Abomination
5.Manifest
6.Slaves To Slaughter

【Review】
Candlelight Recordsからのリリース。Tjalveが脱退、4人体制になり思い切った舵の切り方をした異色作。またプロデューサー/ゲスト・ミュージシャンに【Triptykon】元【Celtic Frost】のTom G. Warrior(!)、また再び【TNT】のRonni Le Tekrøもゲストミュージシャンとして参加している。もうアングラ・シーンとは程遠い豪華なゲストを起用している。今作においてTom G. Warriorの参加は凄く納得させられた。尚、ヴァージョンによってはボーナスディスクが一枚付いており、4TH単品での音源もリリースされている。今回レビューするのは2枚組の音源である。

Disc 1 – Revelations of the Black Flame(本編)

まず楽曲の路線が大幅に変わっており、コレまでとはまるで違うドゥーミーな路線に急展開したせいか、面食らった人が多そうな作品である。前回の路線を極限まで拡大解釈したら辿り着くであろう路線には違いないのだが、その変化の過程を急ぎすぎた感じだろうか?よってブルータルさやファストな展開は随分と影に潜んでしまっており、只管に重々しいミドルチューンで覆われた暗黒色が際立つ作品となっている。

恐らくは大抵の人がファストで手数の多いFrostの激烈ドラミングを軸にした激烈ブラックチューン連発を期待していたのだろう、この作品においてはあまり良い評判を聞かない。(過去の片鱗が伺えるのは#4のみ)

だが不穏な気味の悪さを感じさせる様な”オカルティックな邪悪さ”といった側面で言えば、今作は彼らの中で突出した音源であり個人的には問題無く聴けた。と言うかむしろアリ。

#1の悲痛にもがき苦しむ民の叫び声が何重にも重なっているSEから引き摺るようなリフで展開する#2、ダークなアンビエンスが暗黒空間を演出する#3…この一連の流れが今作の路線を色濃く表している。その流れから#6の【Pink Floyd】のカヴァーも何となく納得できる。

疫病が蔓延してしまい、数多の遺体が放置された荒廃した世界が目に浮かぶ。正に阿鼻叫喚の地獄絵図…といった感じであろうか。相当ドス黒いし、抗えない恐怖を感じた次第。

よって方法論は違えどバンドが指標するであろう路線は一切ブレてないと感じた。

 

Disc 2 – Works of Fire, Forces of Hell

2005年12月3日に行われた”Hellfire”ヨーロッパ・ツアーのストックホルムでのLive音源。音質良好、各演奏の音の分離も問題なし。一切隙がない恐ろしい破壊力と演奏力。やっぱりFrostは凄いとしか書けない音源(笑)Ravnもアルバムより気合入っている様に思う。正にGreat!

 

Demonoir

5THフル(2010)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル

1349_5th

【Track】
1.Tunnel of Set XI
2.Atomic Chapel
3.Tunnel of Set XII
4.When I Was Flesh
5.Tunnel of Set XIII
6.Psalm 7:77
7.Tunnel of Set XIV
8.Pandemonium War Bells
9.Tunnel of Set XV
10.The Devil of the Deserts
11.Tunnel of Set XVI
12.Demonoir
13.Tunnel of Set XVII

【Review】
Candlelight RecordsからIndie Recordingsに移籍した作品。2枚組ヴァージョン(ボーナスディスクはカヴァー集の様だ)もリリースされているが、今回レビューするのは単品ヴァージョン。今作も前作に引き続きTom G. Warriorがプロデュース、Ronni Le Tekrøがゲスト参加。

音の方は3RDと4THをコンパクトにまとめた感じのアルバムである。奇数曲ごとに短いダークなアンビエンス仕立てのインストを挟むなど4THを彷彿とさせるが、偶数トラックのメタル部分にFrostのファストな激烈ドラムが戻ってきた。また、楽曲の節々にピアノを導入したり#6に至ってはRonni Le Tekrøによる神経を逆撫でるようなギターソロがあったり露骨ではないが、さり気なく色気が出てきた様に思う。

正直、必要なモノはそろっているのだが、個人的にはそれほどハマれなかった音源。

上手いこと書けないが何かが違う。タイトな音質になったせいか、少しヨーロピアンなデス・メタルっぽくなった印象も。

う~ん、微妙だ。

とは言え、至極個人的な感想だし更には【1349】の中で比べての話。そんじょそこらの月並みな音源では無いことは確か。

 

Massive Cauldron of Chaos

6THフル(2014)/From:ノルウェー/Style:ブラック・メタル│スラッシュ

1349_6th

【Track】
1.Cauldron
2.Slaves
3.Exorcism
4.Postmortem
5.Mengele’s
6.Golem
7.Chained
8.Untitled
9.Godslayer
10.The Heretic (Possessed Cover)

【Review】
Indie RecordingsとSeason of Mistからリリースされた。(ダブルブッキング?)一応、ラストに収録されているカヴァー曲が違う。Indie Recordingsからリリースされているヴァージョンでは【Voivod】のカヴァーが入っており、一方、Season of Mistからリリースされているのは【Possessed】のカヴァーが入っているとの事。レビューしているのはSeason of Mist盤。

さて、今作は一聴してメタル寄りのアプローチであると言う事が判る。何となく前作で匂わせていたが…いよいよである(笑)2ビートとブラストを絡め、これまで以上に露骨に刻むザクザクとしたスラッシーなリフ、限定的にギターソロを挟んだりとアンダーグラウンド的要素は感じれれなくなった。言い換えれば陰湿な感じが無くなって吹っ切れたというべきか。

これが予想に反して最高にカッコイイ!

随所でスラッシュ・メタル的なフックが効いており、心地良いドライヴ感が単純にカッコイイ。そういった面では、ほぼほぼスラッシュ・メタルな#4とか最高である。ブルータルさとメタルの匙加減が絶妙で、もはや初期に聴かれた向こう見ずで荒々しいダーティなファスト・ブラックからは完全に脱却している。

個人的には初期が大好きなので少し寂しい気もするが、ブラック・メタル云々よりまずはヘヴィ・メタルである事が大前提で原点回帰しているのでは無かろうか?そう考えるとラストの【Possessed】のカヴァーも大いにハマる。

初期で荒々しかった中堅やベテランは往々にしてこの様な進化を辿るのが定説で大抵の場合は残念な結果に終わるが【1349】は違った。次もこの路線でお願いしたい。Great!

※前作が個人的にイマイチだったので買ったはいいが、暫く積んでいた自分を呪いたい(こんなん家に一杯あるような気がしてきた…)