Gris

Neurasthénie

1STフル(2006)/From:カナダ/Style:ディプレッシヴ

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【Track】
1.Le neurasthénique
2.The Cold Wind of My Breath Is Always Blowing
3.Lueur d’ombre
4.Where So Many Tombs Were Forgotten
5.Elder Moons
6.Funérailles
7.Aux serres de la mélancolie

【Review】
元々は【Niflheim】と名乗っていたが【Gris】と改名後の1ST。二人組ブラック・メタル。因みに【Niflheim】名義でもコレと同じアルバムがリリースされている模様。(アートワークは変更されている)

所謂、ディプレッシヴ系に属する暗く沈み込むような音源である。クリーンギター、ピアノなどを盛り込む側面もあるが、基本的にはジリジリとしたノイジーな掻き鳴らしリフを主体とする。非常にゆったりとしたリズムが時を刻み、エフェクトの掛かったヴォーカルが執拗に絡んでいく。ノイジーなエフェクトの効果も相まって、寸分も何を訴えているか分からない(笑)特に#3辺りは、まるで絶望に押し潰され、この世から消えてなくなくなりそうな悲痛さが、ノイズと化した言霊を通し伝わってくる。全体的に一本筋が通った暗鬱なる流れがあり、随所で奏でられるメロディもまた悲愴に明け暮れ、限りなく冷たいのだがそこはかとなく美しくもある。

この後、ディプレッシヴ系の名盤と呼び名の高い”Il était une forêt…”へと繋がっていくのだが、この時点ではまだ蕾の段階であり、良質だが開花はしていない。

 

Il était une forêt…

2NDフル(2007)/From:カナダ/Style:ディプレッシヴ

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【Track】
1.Il était une forêt…
2.Le gala des gens heureux
3.Cicatrice
4.Veux-tu danser?
5.Profonde misanthropie
6.La dryade

【Review】
名盤と呼び名の高い2ND。実は今年(2014)になってようやく入手したのだが(どえらい苦労したゾ/笑)口コミ通りの完成度。いや、正直想像以上だった。まさか、ここまで素晴らしいとは…

全編に渡り冷たいシンセがアンビエントに鳴り響き、表現力が飛躍的に上がった悲愴なヴォーカルがもの悲しげに乗る。いや、物悲しいといったレベルでは無いな…まるで感情の起伏が野々村クソ議員みたいである(おっと失礼/笑)

また、ノイジーなギターサウンドも健在であり、冷たいシンセとのバランスも神掛かっている。それだけでは無く、随所にアコギが乗っかったり、ギターソロがあったりするので、持っている武器を総動員して悲愴感を描き切っているといった印象なのである。執拗にまでの悲しみが、筆者の竪琴に触れて止まない。久しぶりに心が完膚無きまでに掻きむしられた逸品。目頭から潮吹くこと不可避。

しっかりと音楽として盛り上げる瞬間がキッチリとあり、静と動を巧みに駆使し悲愴感が大爆発する。ともかく、最後のインストまで徹底しており、音楽としてもしっかりしているので、巷に溢れるディプレッシヴ系程、音楽的な敷居は高くないのもポイントだろうか。(ディプレッシヴ系に理解が無い人にも、メロディ派の方なら理解できる余地がありそうな…といった意味で)

ただ、後追い組にとっては入手困難だと言う事が唯一の不満。ディプレッシヴ系に理解があるなら、コレで微塵も心動かん奴はインポ野郎だと断言しておく(冗談よ/笑)ともかく素晴らしい。

 

À l’âme enflammée, l’äme constellée…

3RDフル(2013)/From:カナダ/Style:ディプレッシヴ

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【Track】
–Disc 1–
1.L’aube
2.Les forges
3.Samsara
4.Igneus
5.Dil

–Disc 2–
1.Moksha
2.Seizième prière
3.Sem
4.Une épitaphe de suie
5.Nadir

【Review】
二枚組の超大作。

もう、ディプレッシヴ・ブラック・メタルの枠を超えてしまった感もする大充実の作品である。素晴らしい音世界が広がっているので長尺さは全く気にならない。冒頭のインストから既にブラック・メタルの枠を超えている事に気付かされる。この上なく壮大な世界観が広がっており、プロフェッショナルな次元まで突き抜けた感も。

ヴァイオリンやチェロなどを用い、アコースティックな音の調べを奏でる側面が肥大化した。勿論、エレキによるノイジーなリフもあるのだが、最早、ブラックたる部分はヴォーカルのみで、殆どプログレの域にあると言えるのでは無いだろうか?また、ベースが根幹をしっかりと支え、コントロールしているので普通にHR/HMとしても質が高い。こう書くと普遍的になってしまった…と誤解されそうだが、方向性は同じだし音楽として2ステップ程、深化したと言える。つまり、根っこは不変なのである。

相変わらず静と動のコンストラストがはっきりしており前作以上に展開豊富である。静から動へに移り変わる過程も前作より自然で滑らか。聴き手をかき乱す様な激情っぷりは前作に比べるとやや低下したが、気高くて上品、そしてしっとりとしつつも、ビターな味わいなのである。比較的、メタル要素の強いDisk-1と、ややアコースティックな側面が強いDisk-2。どちらで果てるかは聴き手次第(笑)

ここまで質を高めると次の一手が気になる所だが…さて、どう出るか?楽しみである。