Rautaa ja tulta

EP(2015/2016)/From:フィンランド/Style:メロディック│ペイガン

【Track】
1.Pakkanen
2.Rautaa ja tulta
3.Musta yö
4.Ne salaperäiset
5.Valhallan portit
6.Verta ja tuhkaa
7.Maat mennyttä soi
8.Surmatuli
9.Joka puun takaa
10.Maan alainen

【Review】
Stefanなる人物が動かしている二人組フィニッシュ・ペイガン・ブラック。ドイツのNaturmacht Productionsからリリースされた。元はDigital音源で自主リリースされたEP(2015)をベースに未発表曲を4曲を加え、フルレングス・ボリューム(10曲44分弱)にグレードを上げて再発された音源である。

流石はメタル大国フィンランド!と膝を打つこと請け合いの素晴らしい内容でペイガン系ファンは勿論、メロディ派や叙情派なら間違いなくチェック必須の大型新人だ。驚くべきはStefan一人でヴォーカル、ギター、ベース、ドラムを担当しているといった点だろう。基本は二人組だが、相方であるHumöはソングライティングのみ参加という事らしい(クレジット表記を信用するなら…だが)。

ペイガン・ブラックも様々な様式があるが、その中でも”メタル”である事が大前提のスタイルであり、伝統的なブラック・メタルでは軽視されやすいリードギターを遠慮ナシに弾きまくる、言わば正統派メタル色が全面に押し出されている。故にメタリックになり過ぎることを良しとしない一部のコアなファンには鼻に付くかもしれないが、筆者の感覚ではそういった方にも感銘を受ける余地がある”硬派な音源”に仕上がってると思っている。単に「俺のテクを聴いてくれ!」的なミーハーな演奏には聴こえず、あくまでペイガニズムを前提としたメロディに終始しているので全く嫌味に聴こえない所がポイントだし、骨太さもしっかりと感じさせてくれる。

よってマニアにも良い感じで聴けるハズ…多分(笑)

楽曲の方はおおよそ、メロブラらしい荒涼パートからメロデス的な刻みリフへと移行、太古のロマンを彩るリードギターが大爆発するといった一連の必勝パターンで進行してゆくが、各要素が無理なく滑らかに展開されるので説得力があり、コテコテなブラックが苦手であってもメタルが好きなら演奏だけでも楽しめると思うし、先に書いた骨太な要素も相まってマニアにも推したい要素もしっかりあって、非常に幅広い支持が得られそうな作品となっている。またペイガニズム迸る母国語でガナリ散らす独特の響きのヴォーカル、勇壮なコーラスもヴァイキング・メタルっぽ所があってナカナカにアツい。

全曲素晴らしい死角なしの傑作だが、王道、または真骨頂とも言いたくなる#2”Rautaa ja tulta”なんかは個人的に特に気に入った次第。すんごくカッコ良い。

正にAncient Pagan Metaaaaaaaal!Great!

 

Havulinnaan(S/T)

1STフル(2015/2017)/From:フィンランド/Style:メロディック│ペイガン

【Track】
Side A
1.Talven mustat tuulet
2.Kuvastaja
3.Rautalintu
4.Aavevalo
Side B
5.Terhen
6.Uni kuin unho
7.Tuuletar
8.Havulinnaan

【Review】
元々は2015年にNaturmacht ProductionsからCDでリリースされたが、暫くSold Outになっていた音源。2017年、同レーベルから不死鳥の如くVinyl盤(限定200枚)で再発されたモノである。

今作は相方であるHumöはベースとヴォーカルで参加、Stefanはギターとドラムを担当している。

細かい部分でメロデス色が薄まり、ヴァイキング~ペイガン色が強まっているが「音作り」「印象」「聴き心地」に関しては殆ど何も変わっていない一本筋が通った頑固サウンドを展開。よって前作を好むならまずは100%間違いないサウンドになっている。

独特の響きの母国語でガナリつつも土着的な抑揚を付けたヴォーカルやフォーキーなアコギを楽曲に組み込む場面なんかも若干だが増えており古の浪漫を表現する為の音楽的ロジックがより明確になっているのが本作のポイントかと思う。

随所で弾きまくってたリード・ギターによるソロはやや控え目になっているモノの、随所でしっかりと紡がれておりその存在感をアピール。一方でトレモロリフの比率を上げる事によってブラック・メタルらしい叙情が強まっており、このバンドが持つ芯の部分(オーセンティックなメタルとブラック・メタルとの調和)がよりブラッシュアップされ更に強固なサウンドになっている。

前作と印象は殆ど変わらないとはいえ、しっかりと進化を感じさせつつもバランス的により最適な方向に進んでおり、派手でも地味でもない絶妙なバランスを最後まで崩す事無く完走する様はお見事。

この様に屋台骨がしっかりしているので手堅くも完成度の高い作品に仕上がっており、個人的に古代の浪漫に思いを馳せる事請け合いの#3”Rautalintu”、そしてフックあるトレモロが印象的な#7”Tuuletar”辺りがタマらなく、全体を通してかなりリピートした作品である。

言うまでもなくGreat!

 

Kelle surut soi

2NDフル(2017)/From:フィンランド/Style:メロディック│ペイガン

【Track】
1.Jo näkyvi pohjan portit
2.Vainovalkeat
3.Noidanhauta
4.Vainajain valo
5.Vaeltaja
6.Myrskynkutsuja
7.Verikuu
8.Kelle surut soi

【Review】
Naturmacht Productionsからリリースされた2NDフル!

1STまでの相方であったHumöが脱退、Noitavaloなる人物が新たにドラムとして参加。その他は全てStefanが担当し、相変わらずのマルチプレイヤーっぷりを発揮。また#6”Myrskynkutsuja”のみゲスト・ドラマーとしてJanne Puustinenなる人物が参加している模様(Pagan War Drumなどとクレジットされている)。

これまでの完成度は前菜でしか無かった!と鼻息を荒くして言いたい程、素晴らしい内容であり、EPから順当にペイガン色を強めてきたが、本作でいよいよ極まったようだ。

ほぼ完璧と言っても過言ではない完成度を誇る、傑作をブレイクスルーした傑作!つまり名盤だ。

まず荒涼たるトレモロによるリフが以前にも増して強化されており、古代における異国情緒漂うメロディの明確化が図られているのが今作における最大のポイントであろう。我々日本人にとって全くの異文化であるフィニッシュ・ペイガニズムの一端を本作の旋律から思い描ける程になっているし、何よりもメタルとして格好良く表現されているのである。この様にトレモロ・リフの力の入れようは前作にも増して強化されている事がハッキリと伝わってくる。

これぞ北欧ブラック・メタルならでは、と言えるかと思う。

また力強さも感じるメタル然とした刻みリフのパートや、リードギターによるソロも切り込むべく切り込んでくるタイミングであり、「内容」「量」「質」共にやり過ぎには至らない、ある意味、ブラック・メタルとして節度をわきまえた導入の仕方なのも相変わらずの神バランスだといえる。最早、このバンドには欠かせない重要な要素だと思うし、内容的にも必要性を感じさせるのも素晴らしい。ホント、ここまでやられるとぐうの音も出ない…。

そんなこんなで、クリエイティビティ的にノリにノリまくっており、今、間違いなく旬を迎えている様に思うし、今後、更なる進化を遂げる事になったとしたら…末恐ろしい存在だ。

全曲必聴なのは言うまでもないが、特に#2”Vainovalkeat”は前で長々と述べてきたポイントを全て押さえたキラー・チューンだ。

Great!