The Black Quran

EP(2013)/From:イラク(不明)/Style:ブラック・メタル

【Track】
1.The Black Quran

【Review】
Anahita女史(Vo,Bass)が率いている4人組(女性二人、男性二人)アンチ・イスラムを掲げるブラック・メタル。Hammer of Hate RecordsからCDでリリースされた一曲約19分のEP。

アンチ・イスラムを掲げるサークル”Arabic Anti-Islamic Legion”に所属しており、そのサークルの中でも恐らく一番知名度のあるバンドではないだろうか?他にはAnahitaの別バンド【Janaza】や【Tad-nees】【Mosque of Satan】【False Allah】といったバンドが所属しているらしい(いずれも未所持&未聴)。

また、イラク出身という触れ込みではあるが、どうやら情報が一定ではなく実のところ素性は未だハッキリとしていないらしい。故に有名データベースサイト「Metallum」でも”Unknown(不明)”扱いになっている。

事の発端はデビューEP”Jihad Against Islam”(未聴)のブックレットにて別アーティスト(ノルウェーの【Vulture Lord】)の写真を無断盗用した事に端を発しているらしく、不明というのもあくまでマニアの間での話であり出身国詐称ではないか?といった疑惑によるモノである( 詳しく書かれたページがあったのでリンクを貼っておきます→コチラ)。

さて、肝心の音の方だが「イラク」「イスラム」といったキーワードからおおよそ想像できるエキゾチックなアラビア語によるコーラスが随所で挿入されるのが最大の特徴になっている。何を語ってるのか全く不明であるがコーラスの響きには宗教的なニュアンスが含まれており邪悪さに怪しさを足し算。コレがブラック・メタルの要素を薄めずにハマっており長尺でありながら聴き応え十分。途中で飽きてしまうといった事もなかった。

メタルパートに関してはメインの詞が英語で書かれている事もあって、感触としては割とスタンダードなブラック・メタルといった感じでメロウさ等といったメロディックな要素を排除した邪悪でヘイトフルな路線だ。またオカルティックな側面もあってダークで不気味な音響的パートも随所に盛り込まれており、静と動を幾度と繰り返しながら展開。Anahitaのヴォーカルも怨念じみた絶叫でおっかなGreatだ。

ただリフに関してはイマドキのブラック・メタルと比べてしまうと随分と弱く、コードを鳴らす程度のシンプルなモノなので90’s音源を彷彿させるような、今となっては若干古臭いスタイルとも言える。尚、音質や楽曲自体からは強烈な辺境地っぽさは然程感じられない。

もっと辺境地ならではの灰汁が強い音楽を期待していたので、折角なので大胆に演って欲しいなぁと思う反面、想像より真っ当なブラック・メタルだったので良い意味で肩透かしを食らった作品だ。

 

Anti Quran Rituals

1STフル(2013)/From:イラク(不明)/Style:ブラック・メタル

【Track】
Side A
1.From Mecca to Jahannam
2.Qamar (Islamic Lies P.1)
3.72 Virgins
4.Behind the Horns of Allah
5.The Prophecy of Rape

Side B
6.Qabr (Islamic Lies P.2)
7.Islamophobia
8.Sura 9
9.Allah Is Dead

【Review】
四人組のAnti-Islamic Black Metal【Seeds Of Iblis】の1STフルレングス。アメリカのUnmerciful Death ProductionsからリリースされたVinyl盤。限定500枚だがそのうち100枚はレコード盤がopaque greenの特別仕様で、残り400枚は通常盤となっている(筆者はボーリングの玉みたいな色をしたopaque green盤を所有)。因みにCD盤も同時にリリースされている。

音の方はこのバンドの肝といっても過言ではないエキゾチックなコーラスアレンジを特色とするブラック・メタルであり、前作の延長線上にある作品といった所だろうか。尚、楽曲の多様性は確実に広がっており、怪しいコーラスとAnahitaによる絶叫怨念ヴォーカルを絡ませながら勢いに乗せて展開する動的な楽曲から、怪しいアトモスフェリックさを纏う楽曲、はたまたダークな雰囲気で押すアンビエント仕立ての作風まで幅広く収録されており、なかなか充実したアルバムに仕上がっている。

取り分けアトモスフェリック×エキゾチックといったパートにおいては成長が感じられ、怪しくも邪悪に仕上がっているので単純に前作の上位互換として楽しめた次第。そういった面ではアトモスフェリックなシンセが印象的な#3”72 Virgins”や猛烈なブラスト・ビートから一転、怪しいコーラスがたまらない#5”The Prophecy of Rape”、そして途中から殆どピアノの独奏が続く#9”Allah Is Dead”辺りが印象深かった。まぁ、総じて言えることだが、やはりバックで地味に鳴っているエキゾチックなコーラスがボディブローの様に効いてくる(笑)

相変わらずメインのリフは若干弱いままだが、不穏なアルペジオを重ねてエキゾチックさ引き立てたりと前作では見られなかった工夫が施されているので、リフの弱さは然程気にならなくなったのもポイントだろうか。

路線が路線だけに命がけでバンドを演っていると思われるので、次があるかは不明だが辺境メタルマニアはチェックしてみては如何だろうか?(もしかしたら、コレを書いてる段階では入手は難しいかも…だが)