Poems To The Wretches Hearts

EP(1999)/From:ドイツ/Style:アトモスフェリック

Sun Of The Sleepless EP

【Track】
1.Thou, Whose Face Hath Felt the Winter’s Wind
2.Grimme Pain
3.Nebelmond

【Review】
ドイツのゴシック・メタル【Empyrium】のMarkus Stockによる独りブラック・メタル。Prophecy Productionsからリリースされている。99年に突如として登場し僅か一枚のEPで、ここ日本でもマニアの間で結構話題となった逸品。

もともとは生粋のブラッカーでは無く、どちらかと言えばゴシック出身なのだがメランコリックな旋律を詰め込んだ見事なブラック・メタルを展開。限定的だが仄かに重なるシンセやフルート(っぽい音/?)がアトモスフェリックさも感じられる。僅か15分程度の短いEPとはいえ、その体験は濃厚で全く侮れない傑作である。

まず冒頭を飾る#1”Thou, Whose Face Hath Felt the Winter’s Wind”だが、本作中、最もトレモロに主軸に置いたブラック・メタルらしい楽曲を演っており、メロウなブラックが好きな体質なら反射的に細胞が喜びそうな楽曲を演っている(なんのこっちゃ/笑)。「こういうの聴きたかったんでしょ?」的な理屈のいらない素晴らしい楽曲だ。

#2”Grimme Pain”はまるで【Dark Funeral】辺りが演りそうなコールドなリフにザクザクザクっと高速に刻むアクセントを織り交ぜたカッコイイ楽曲で、今思えばこういうアクセントの入れ方をするのはブラック・メタルでは意外と珍しいかも?と思わせる楽曲だ。勿論、この楽曲も特徴があってGreatである。

そして、極めつけは#3”Nebelmond”である。絶品メロディで昇天間違い無し。その哀愁たるや筆舌に尽くし難い。一歩間違えるとメロデスになりそうなクサ音源なのだが、絶妙な塩梅で踏み止まっており胸に染みわたる哀しくも美しい音の調べを堪能できるのである。フルートっぽい音が重なってくると…嗚呼もうタマラナイ。個人的に聴き入ってしまう程の黄昏の極地を味わった次第である。う~ん実に味わい深く良い曲だ。

この様に3曲とも素晴らしい楽曲が詰め込まれており、メロウな音源を好むのであれば、是非とも試して欲しい所である。傑作!

※2017/11/18リライトしました。

 

To The Elements

1STフル(2017)/From:ドイツ/Style:アトモスフェリック

【Track】
1.The Burden
2.Motions
3.The Owl
4.Where in My Childhood Lived a Witch
5.Forest Crown
6.In the Realm of the Bark
7.Phoenix Rise

【Review】
Markus StockことUlf Theodor Schwadorfが演っている独りブラック・メタルプロジェクト。

2000年にリリースされたEP”Tausend kalte Winter”(Splitでも未収録曲をプラスしてカップリングされていた→Review)から実に17年の歳月を経てリリースされたフルレングス。長らく音沙汰がなく活動停止をしていたが2014年にしれっと復活していた模様。

因みに過去にリリースされた2枚のEPが丸ごと収まっているコンピレーション”Shadows of the Past”(単品もある)と本作がワンパッケージになった2枚組バージョンもLupus Loungeから同時期にリリースされている。特に”Poems to the Wretches Hearts”はメランコリックなブラック・メタルを好むのであれば傑作レベルの作品なので気になる方はそちらをチェックしてみては如何だろう。

さて本作だが自然の寂しげな情景を描き出すサウンドスケープ的な要素に磨きがかかっており、いよいよ自然崇拝系ブラック・メタルとしてカテゴライズされる様なサウンドに変化している。よりダークになった気がするが今作も大変素晴らしい!

曲によってはメタリックでスリリングな刻みリフをアクセントとして使用しているものの、基本的にはやはりトレモロが主体となっており、素朴かつ叙情的なメロディをじっくりと紡いでいく従来通りの路線なので安心して身を委ねることが出来る。また、#6”In the Realm of the Bark”では【Darkthrone】を彷彿とさせるネクロなリフなんかも飛び込んできて、切ないだけじゃないドス黒い部分も健在だ。前回のEP”Tausend kalte Winter”では曲によってはエレクトロなアレンジが施されていたが、今作ではそれらがなく、最後までしっかりとブラック・メタルしている。

そして何と言っても今作のポイントとなるのは朗々としたコーラスを導入することによって醸し出される”郷愁感”だろう。これが自然の情景描写としてしっかりと機能しており、深々と降り積もる田舎の雪景色なんかを連想できて、とても寂しげで味わい深い(個人的な感覚)。やはり初期【Ulver】のGarmが歌っている郷愁に満ち溢れたアノ感覚が蘇る。これがまた荒々しくも寒々しいサウンドと組み合わさる事によって際立っておりノスタルジーな世界観を構築しているのだ。

筆者のオススメ及びお気に入りは、じっくりと叙情を紡いでいき、傑作EPを踏襲したSotSの王道というべき#2”Motions”、フォークロアな小曲だが素朴ながらもダークな雰囲気にヤラれる#5”Forest Crown”、今作屈指のブラック・メタル曲に郷愁感をプラスした#6”In the Realm of the Bark”、そしてスリリングな刻みリフからドラマティックに展開する実にメタルらしい力作で、郷愁感溢れるコーラスが重なり哀愁に満ちたラストスパートが美しい#7”Phoenix Rise”を推したい。

全体的に派手さはなく、どちらかと言えばダークなトーンのアルバムだが、地味だからこそ飽きがこない、そんな味わい深い復活作であった。独りブラックということで緻密な作りに作家性を感じられるし以前にも増して質が高いのにも注目。

見事な復活作!Great!